コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.11.07

01_はじめてのコンテナ

03構造と耐久性_耐火性能_雪

09_実例メンテナンス運用保守

【保存版】コンテナハウス防錆メンテナンス完全ガイド

──錆びにくい家をつくり、長持ちさせるために


はじめに:鉄の家は錆びるのか?
「コンテナハウスって、錆びやすいんじゃないですか?」
相談会や問い合わせで、必ずと言っていいほど出てくる質問です。確かに、鉄でできた建物である以上、「錆」は避けて通れない宿命のように思えます。特に海沿いに建てたい方、リゾートで利用したい方は、潮風による塩害を心配しますし、台風や豪雨での劣化スピードも気になるところでしょう。
しかし実際には─正しい防錆処理を施したコンテナハウスは、木造住宅に劣らないどころか、むしろ耐久性で勝る場合もあります。錆対策と定期メンテナンスを怠らなければ、30年、40年と十分に暮らしを支える存在になるのです。
本コラムでは、「なぜ錆びるのか」→「どう防ぐのか」→「どう維持するのか」 を順番に解き明かしながら、長持ちするコンテナハウスの実例とポイントをお伝えしていきます。

コンテナハウスが錆びるメカニズム

コンテナの素材は鋼(スチール)。鉄は水と酸素に触れると化学反応を起こし、酸化鉄、すなわち「錆」となります。これは物理的な必然です。というか「鉄」の元々の姿に戻っていっているのです。酸化鉄が自然の中での「鉄」の姿なのです。還元作用で「鉄」を作っていました。それが参加すると酸化鉄(さび)になるのです。なので「鉄」は完全にリサイクル可能な優秀な素材なのです。

錆びやすさに影響する要因は、大きく分けて次の3つです。
環境要因
海沿い(塩害)、湿気の多い山間部、雨が多い地域。
構造要因
屋根の排水が悪い、デッキや接合部に水が溜まる、切断や溶接の未処理。
経年要因
塗装が劣化して剥がれると、防御力が一気に落ちる。
つまり「錆」は避けられない宿命ではなく、環境と設計とメンテ次第で抑制できる現象なのです。

建築用コンテナは「錆びにくい」

ここで強調しておきたいのは、中古の輸送コンテナと建築用新造コンテナは別物ということ。
中古輸送コンテナ
船で何度も世界を回り、塩害を受け、表面に傷や凹みが多い。
そのまま住宅に使うと錆びやすく、構造強度も保証できない。
建築用新造コンテナ
建築基準法で定められているJIS規格の鋼材を用い、製造時に防錆プライマー+耐候性塗料で仕上げ。
開口部(窓・ドア)も設計段階で処理され、補強部もきちんと防錆施工。
つまり、「コンテナハウス=すぐ錆びる」というイメージは、中古海上コンテナをイメージしていることが多いのです。建築用の新造コンテナは、防錆性能が標準で備わっており、さらに施工時の工夫で耐久性を高められます。

施工時にできる防錆対策

3-1. 塗装の基本
亜鉛リッチプライマー:錆の発生を防ぐ下地塗料。船舶や橋梁でも使われる。
トップコート(ウレタン・フッ素塗装):紫外線や雨水に強く、10年以上耐候性を保つ。
さらに耐候性能の強い「ポリウレア塗装」というものも出てきた。数十年間のメンテナンスフリーを謳う。
3-2. 溶接・切断部分の処理
加工した部分は防錆塗料を二重三重に塗布。
溶接部は特に錆びやすいため、上塗り後にシーリングを追加するのも有効。
上記はチェックを頻繁にし(1年など)小さなサビの段階で補修をすると、寿命は大きく伸びる。」
3-3. 設計の工夫
屋根に勾配をつけ、雨水を滞留させない。
デッキやバルコニーは排水スリットを設ける。
地面と接する部分は基礎を高めに設定し、直接水を浴びないようにする。
これらを初期段階で盛り込めば、メンテナンスコストを大幅に抑えられます。
3-4.最も強い「防錆」処理は「溶融亜鉛メッキ」
コンテナ全体を「メッキ層に浸すほど大きなメッキ層」はないので、構造部材を全て「溶融亜鉛メッキ仕様」にする方法がありますが、その加工をできるところが少ないのは事実です。当社は海側物件では必ずその方法をお勧めしています。圧倒的に耐候性が変わります(5倍から10倍の感じです「)
3-5.新たな超強力防錆塗料(部材強度も上がります)が登場
ポリウレア塗装という塗装です。数十年の防錆力を誇ります。高価ですがそれなりの効果はあり、数十年の寿命をメンテナンスフリーでもらうことができます。今後この仕様を当社は増やしていく予定です。

4. 日常メンテナンスの具体例

年1回の点検(とても大事です。ぜひ習慣化いたしましょう。あなたの財産を少ない経費で大切にします)
外壁をぐるっと一周。塗装の剥がれや赤錆をチェック。
雨水が溜まっていないか、デッキ下や基礎回りを確認。
小さな錆の補修
サンドペーパーで削り、防錆塗料を塗布。
その上にトップコートを重ねて仕上げる。
定期塗装(3〜5年ごと)
プロによる外壁塗装を実施。
高耐候性のフッ素塗料なら耐用年数10〜15年。
部分補修と組み合わせることで費用を最小化できる。

5. 長持ちさせるための工夫 

庇や屋根延長:雨を直接当てないデザイン。
外壁カバー材:木材やサイディングで二重に覆う。
コンテナには屋根があるからと思ってはいけません。必ずもう一枚のオーバールーフをつけるのが「建築物になるコンテナには必要な
換気計画:内部結露を防ぎ、錆の原因となる湿気を逃す。
アクセスしやすい構造:メンテナンスのしやすさを考えておく。

6. 実例紹介

宮古島・MIKAN HOUSE
海から徒歩数分の別荘。強い潮風にさらされる環境だが、定期塗装+屋根の庇で5年経過後も錆ゼロ。
千葉・内陸部プロジェクト
林間の湿度が高い敷地に建築。基礎を高めに設計し、デッキ下の水はけを工夫。築7年目でも外壁は健全。

7. まとめ

コンテナハウスは鉄でできた建物。確かに錆びる可能性はある。
しかし、「正しい防錆施工」+「計画的メンテナンス」= 一般住宅に匹敵する耐久性を確保できます。
むしろセルフビルドやDIY補修の余地があるぶん、『「住まいを育てる楽しみ」』が味わえるのもコンテナハウスの魅力です。
「錆びるから不安」と思うか、「手をかけて長持ちさせる楽しみ」と思うか。
その視点の違いが、コンテナ暮らしの満足度を大きく左右します。

Q&A(よくある質問)

代表的な防錆メンテナンスに関するQ&Aをお書きいたしましょう

Q1. 海沿いでは何年ごとに塗装すべき?
A.
海沿いは潮風と紫外線が強いので、どうしても塗装の傷みが早くなります。
目安としては 3〜5年ごとの再塗装 をおすすめします。
グレードの高い フッ素塗料や、ポリウレア塗装を使えば、環境が良ければ 10年近くもつケース もありますが、
それでも 毎年一度は「目視チェック」 をして、艶の低下・色あせ・チョーキング(手につく白い粉)などが出てきたら、早めにメンテナンス(錆部分をサンドペーパーやワイヤーブラシでしっかり落とし、その上で錆止め塗料(ジンク塗料)を塗り、オーバーコート塗料を塗ること)を検討してください。

Q2. DIYでの補修は難しい?
A.
小さな錆やキズ程度であれば、DIYでも十分対応可能です。
錆部分をサンドペーパーやワイヤーブラシでしっかり落とし、
粉や油分を拭き取ったうえで、市販の防錆塗料(下塗り)+仕上げ塗料 を重ねればOKです。
ただし、
穴があいてしまっている。広範囲が膨れている。溶接部や構造に関わる部分が腐食している。
といった場合は、構造安全性にも関わるのでプロに相談した方が安心です。

Q3. 雨漏りと錆は関係ある?
A.
はい、とても密接に関係しています。
雨漏りを放置すると、内部に水分が溜まり、見えない部分で錆が一気に進行します。
屋根・窓まわり・開口部・ボルト周辺は、コーキングの切れ、目地の割れ、シミや膨らみ
などがないか、定期的な点検が重要です。
「雨が入る=錆の温床をつくる」と思って、早めに手を打つことが長寿命化のポイントです。

Q4. 基礎周りの防錆対策は?
A.
いちばん大事なのは、コンテナを水たまりや湿気から遠ざけることです。
具体的には、
基礎をやや高めに設定して、地面から離す
デッキや下部に水が溜まらないよう、勾配や排水経路をきちんと設計する
土や落ち葉がコンテナの裾まわりに溜まらないよう、定期的に掃除する
といった対策が有効です。
必要に応じて、基礎まわりの鉄部に防錆塗装や防水塗膜を追加すると、より安心です。

Q5. 一般住宅よりも錆びやすい?
A.
「鉄だからすぐ錆びる」と思われがちですが、
適切な設計・施工・メンテナンスを行えば、一般的な住宅よりも長くもつケースもあります。
最初の段階で、防錆仕様の塗装・ディテール をきちんと設計しておく
雨の当たり方・風の抜け方・基礎まわりの湿気などを考慮する
数年おきに点検と部分補修を重ねていく
こうした手入れを続けることで、
コンテナは 「錆びやすい素材」ではなく、「きちんと手をかければ、とても粘り強い躯体」 になってくれます。

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記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。