コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.08.01

コンテナのおしゃれなオフィス

おしゃれなコンテナオフィスが語りかけるもの

これは空間の話ではなく、“態度”の話だ。

この黒い鉄の箱を、あなたはただの建築資材と思うだろうか?
いや、それは違う。
コンテナという“制約”のなかで、自らの働く環境を組み立てるという選択。
それは、まぎれもなく「思想」である。
写真のこのオフィスを見てほしい。
建築用の新造コンテナを用いながら、どこかブルックリン的な再構築感覚をまとった、洒脱で軽やかな場。
でもそれは、単なる“なんちゃってブルックリン”ではない。
むしろ、「あえてそれっぽくやる」ことの中に、軽やかなる抵抗の意思が込められているのだ。

“おしゃれ”という名の反骨精神

「おしゃれなコンテナオフィス」という表現は、軽く聞こえるかもしれない。
だがその実態は、「既存の働き方を疑う」ための美意識という名の武装である。
ビルの一室に収まるのではなく、都市の空き地に自分の基地を築く。
冷房効率よりも、質感を選ぶ。
機能性よりも、“空間の声”を信じる。
これは装飾ではなく、宣言だ。
「わたしたちは、自分の手で働く世界をデザインしているのだ」と。

“なんちゃってブルックリン”のどこが悪い?

レンガ風の壁、アイアン照明、ウッドデッキ。
インダストリアルな意匠が絶妙な距離感で配されている。
だが、ここには本場の倉庫街の埃はない。
あるのは、日本の都市住宅地の一角に、そっと芽吹いた文化の苗木だ。
だからこそ、これは「なんちゃって」でいい。
それを恥じる必要はない。むしろ堂々と言いたい。
「私たちは、“本物ごっこ”をしているんじゃない。
“本物を憧れながら、今ここで自分たちの文化をつくっている”んだ」と。
このコンテナオフィスに宿っているのは、模倣ではなく翻訳であり、
コピペではなくリミックスである。

実用性と想像力が両立する小宇宙 

このサイズ感、この閉じられた空間、
だからこそ、空間の一つひとつが“編集”されているように感じられる。
空調の効率も良く
狭小敷地でも機能し
移設や増設も可能
それでいて、**「働くことにワクワクを取り戻す」**という思想が隅々にまで宿っている。
砂利と多肉植物のランドスケープ、乾いた風が吹き抜けるようなパティオ。
見る者に「これはオフィスか?カフェか?はたまた住処か?」と問いかける空間。
答えはこうだろう。
「それは、あなたが何をしたいかによって変わる場所です」

“箱の中”に、ブランディングのすべてが詰まっている

企業ブランディングは、ロゴでも名刺でもない。
一歩足を踏み入れた時に感じる“気配”こそが、その正体だ。
このコンテナオフィスに入った瞬間、
来訪者がふと「いいな」と思ったとしたら、それは成功だ。
外壁の深い黒が、レンガの温かみと拮抗し、
デッキの木肌が「ようこそ」と語りかけてくる。
そこには、わざとらしさのない、日常の演出がある。
それがまさに、ブランドの本質なのだ。

【6】“おしゃれ”という名のビジネス戦略

最後にもうひとつ、言葉を添えておこう。
この“おしゃれなコンテナオフィス”は、決して自己満足の箱庭ではない。
それは、時代の空気を感じ取るセンサーであり、
顧客やパートナーに対する無言のプレゼンテーションでもある。
コンテナオフィスを選ぶということは、
限られたリソースを、最大限に意味あるかたちへ変換するという選択だ。
それは、小さな経済で大きな世界を語る勇気である。

■結び:都市の余白に灯る、ちいさな誇り

「なんちゃってブルックリン」
それは揶揄ではない。
むしろ、“今ここ”から始まる未来の都市文化の萌芽である。
このコンテナの黒い壁の内側で、
誰かがコーヒーを飲みながら新しいプロジェクトを語り合っている。
“働く”ということが、
どこかで“遊ぶ”ということとつながる、そんな時代の予感がする。
それを静かに支えているのが、
この、ちいさなコンテナのオフィスなのだ。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。