コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.11.18

03構造と耐久性_耐火性能_雪

04断熱_換気_結露_防水_防虫

05_施工と現場_納まり_工程

コンテナハウスの防水・シーリング方法|2重屋根構造


雨漏りは基本的にあってはならないものですね。コンテナハウスの防水や、窓周りのシーリングのことをお話しします。IMCA_現代コンテナ建築研究所のコンテナハウスは基本的に二重屋根構造になっています。 オーバールーフをかけ、雨音も静か、遮熱対策にもなっています。 2重の屋根は躯体の保護にもなり、 メンテナンス上大きな守りになっています。防水のことを考えてみましょう。

はじめに|“鉄の箱”に必要な「雨を切る思想」

コンテナハウスの防水を語るとき、単なる「雨漏り対策」として語るのは表層的です。本来、防水=構造を守るためのデザインの哲学です。

IMCAの建築用新造コンテナは、JIS鋼材を使った堅牢な構造体をベースにしていますが、「鉄である」ということは、同時に「水に弱い」という宿命も背負っています。錆びるというのは「鉄」の本来持っている「安定状態」に戻ろうとする「酸化状態」なので鉄の宿命とも言えるものなのです。だからこそ、雨水の動線をどうデザインするかが、建築の寿命を決定づけるのです。

IMCAの基本思想:「2重屋根=オーバールーフ構造」

IMCAのコンテナ建築では、防水の核心を「2重屋根構造」に置いています。これは、コンテナの上に“もう一枚の屋根”を重ねる手法です。

二重屋根が果たす3つの役割

雨漏り対策
コンテナのリブ天板に直接雨が当たらないため、
雨水が溜まる・浸入する・溶接部から劣化する、というリスクを根本から減らします。

雨音対策
鉄板直撃の「ドラム音」を遮る緩衝層を作り、
室内の音環境を劇的に改善します。

遮熱・断熱対策
オーバールーフ下に空気層が生まれることで、
夏場の放射熱をカットし、冷房効率も向上します。

さらに、屋根上で雨水を一旦“切る”ことにより、コンテナの躯体に回り込む水分が減少。溶接部や鋼板端部の腐食を防ぎ、長期耐久性を確保します。このオーバールーフがないと、雨は躯体に回り込み、予想以上のスピードで躯体を痛けることになります。「オーーバールーフで一度水を切る」がとても大事なのです。

シーリングの基本方針:「止める」より「逃がす」

コンテナ建築で最も誤解されやすいのが、「すべての隙間を埋めれば防水になる」という発想。実際には逆で、適切な“止水ライン”と“逃水ライン”を設計することが肝心です。

施工ポイント

⚫️一次防水(外部):屋根と外壁のジョイント、サッシ廻りなどを高耐候シーリングで防ぐ。ここで「雨を弾く」。
⚫️二次防水(内部):下地面に雨が入り込んだ場合でも、躯体内で滞留せず“抜ける”よう水の流れを設ける。
⚫️材料選定:建築用の高耐候シリコン系/変成シリコン系を使用し、金属系塗膜や塩ビ防水との相性を考慮。
⚫️温度伸縮対策:鉄の伸縮に追従できる弾性をもつ材料を選び、プライマーを必ず併用する。

現場でのチェックリスト

チェック項目内容推奨タイミング
コーキング割れ紫外線・熱劣化の確認年1回点検
溶接部のサビ下塗り・上塗りの剥離確認2年ごと塗り替え目安
屋根勾配排水方向とドレンの詰まり確認雨季前
オーバールーフ通気層通風口・虫除けメッシュの点検半年ごと
雨樋・落ち葉水の滞留・逆流防止雨季後

Q1. コンテナハウスの屋根にそのまま塗布防水すれば十分ですか?
A1. 一時的な保護にはなり、最低でもその仕様は必要ですが、構造的な防水には不十分です。IMCAではオーバールーフを標準採用しています。「一度雨を切る」ことによって「躯体への回り込み」を阻止しましょう。

Q2. シーリングはどんな種類が適していますか?
A2. 金属下地との相性を考慮し、変成シリコーン系が推奨。外装塗装と併用する場合は塗料適合型を。

Q3. 雨漏りはどこから起こりやすいですか?
A3. 屋根リブの溶接端部、サッシ廻り、配線・配管貫通部などの「結節部」はどうしても起こりやすい代表的部分です。

Q4. 二重屋根のメンテナンス周期は?
A4. 外装塗膜の点検を2年ごと、シーリング補修は5〜7年を目安に行うといいでしょう。海側などではメンテの間隔は一般の半分くらいで考えていきましょう。

Q5. 雨音対策にも効果がありますか?
A5. あります。オーバールーフと空気層が共鳴音を吸収します。

Q6. 夏の暑さにも関係しますか?
A6. 屋根に日射を直接受けないため、屋内温度上昇を20〜30%軽減できます。

Q7. 雨漏りが起きたとき、まずどこを点検すべき?
A7. 屋根リブ上のシーリング・貫通部のコーキング劣化を優先して確認。

Q8. DIYでの防水補修は可能ですか?
A8. 小規模なら可能ですが、建築確認物件では設計・施工業者に相談をしていただくのがいいでしょう。

Q9. 屋根勾配はどれくらい必要?
A9. コンテナ長手方向で1/50〜1/100程度の勾配を確保するのが理想です。

Q10. 防水層の上に太陽光パネルを設置できますか?
A10. 可能ですが、荷重とメンテ性を考慮し、オーバールーフ面に独立架台を設ける構造を推奨。

結び|鉄の箱に“流れる”デザインを

防水とは、雨を拒むことではなく、雨をデザインすることです。水の道筋を制御し、時間と共に呼吸する。
それが、コンテナという鉄の建築が長く生きるための知恵と言えるでしょう。

二重屋根と正しいシーリングは、ただの技術ではなく、建築の哲学そのものなのです。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。