コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
Fujiyama Villa 20FEET×3/20ft Laydown Salon/MIKAN HOUSE Baseなどの名作を工業生産化したモデル
現代コンテナ建築研究所(IMCA)
■ はじめに
コンテナ建築は、「自由なワンオフ」か「効率的な工業化」か、常にその二項の間を揺れ続けてきた。
ワンオフは美しい。しかし、万人に当てはまる万能解ではない。一方、工業化は合理的だ。だが、平均化しすぎると“記憶に残らない箱”になってしまう。そんなジレンマを静かに突破していくのが、
IMCAの ONE DESIGN(ワンデザイン) シリーズである。
これは、単なる「規格化(プロトタイプ)モデル」ではない。長年の経験から導き出された“最大公約数の美しさ”を、工業的に磨き上げた“ベストセラー”として定着させた建築体系だ。
合理の中にロマンがあり、工業の中にデザインがあり、機能の中に静かな詩がある。
ONE DESIGN は、その三つ巴の空間から誕生した、IMCAの独自ジャンルと言ってよい。

もくじ
■ 01|ONE DESIGN の本質
● “みんなが気に入る箱”という幻想を、技術で現実にした形
建築で最も難しいのは、とにかく「ちょうどいい」デザインをつくることだ。
奇抜すぎてはいけない
退屈でもいけない
高価すぎてもいけない
安っぽくてもいけない
荒い建築でもいけない
綺麗すぎても寒々しい
この “中庸の頂点” を極めるのは、ある意味ワンオフよりも難易度が高い。
ONE DESIGN とは、膨大な数の建築実績と失敗の蓄積から、“結局これが最も愛される”と証明された形を抽出したシリーズ。
それは、工業製品でいうところのベストセラー商品と同じ原理である。ベースは無個性ではない。
むしろ、個性を削ぎ落とした結果“芯の強さ”だけが残る建築特有のミニマリズムが宿っている。

■ 02|ONE DESIGN が工業化と相性がいい理由
● 「ゆらぎ」をそぎ落とした“構造最適解”
コンテナ建築は
物流サイズ
溶接ライン
塗装工程
現場吊り上げ
電気・給排水の配管ルート
雨仕舞と屋根構造
断熱層の厚み
これらの要素が絡み合い、ちょっとした設計ミスが全体性能に影響する。
ONE DESIGN の場合、これらすべての設計値が最適解としてロックされている。だから、製作が早い。精度が高い。無駄がない。事故が少ない。コストが安定する。そして、デザイン品質が均一に保たれる。
工業化された秀逸モデル──まさにONE DESIGN の本質である。

■ 03|代表モデル①
🟦 Fujiyama Villa 20FEET × 3(トリプルユニット)
コンテナ建築の“長編小説”としての完成形
Fujiyama Villaは IMCA の中でも極めて評価の高い ONE DESIGN モデル。
20FT のモジュールを 3 本を眼光させながらに並べ、中央軸に「風の通り道」デッキをつくり、
片流れ屋根で包み込んだ構成。
● 特徴
レイダウンコンテナ × 3 の水平ライン
大屋根の存在感
富士山背景を想定した開放ファサード
滑らかなデッキライン
ワイドサッシュの透明感
強い“別荘建築”としての品格
● ONE DESIGNとしての価値
広さ・明るさ・構造バランスがすでに最適
40FTでは出ない“軽快な別荘感”
コンテナのリブが最も美しく見える寸法
モジュール拡張がしやすい
「失敗がない」設計という意味で最もONE DESIGN に近い作品である。

■ 04|代表モデル②
🟩 20ft Laydown Salon(レイダウン美容室)
―― 面積13㎡問題を突破する“発明型デザイン”
美容室は作業室13㎡以上の保健所規定という絶対条件がある。
一般20FTでは13.8㎡でトイレやバックヤードを入れると届かない。
IMCAはそこで、ハイキューブを横倒しにし、床幅を約3mに広げることで16㎡クリア
という “逆転の発想” を生んだ。まさに発明の ONE DESIGN の象徴だ。
● 特徴
入口+大開口ガラス
ナチュラルで清潔感のある白×木
美容室特化の最適寸法
1台完結のミニマルサロン
工事が早く、初期投資が小さい
● ONE DESIGN としての価値
法規・構造・美容導線のフル最適化
小規模サロンの成功率を上げる“設計上の回答”
長年の店づくりの真髄が詰まっている
最も実務的な ONE DESIGN のひとつである。

■ 05|代表モデル③
🟧 MIKAN HOUSE(未完ハウス)Base Series
「完成していない」という自由のデザインにも生かされる普遍性
MIKAN HOUSE の最大の魅力は
“余白”があることだ。
すべて完成しているのではなく、
最後の10%を“住む人の自由”に委ねていることであるが、
それはこれらが普遍的なモデルであることからスタートしている
ONE DESIGN はそれらの建築を終わらせたモデル
● 特徴
ベースフレームの性能が非常に高い
施工費を抑えながらデザイン性が担保される
平屋・2台構成・デッキ拡張など自由度が高い
● ONE DESIGNとしての価値
住む人の人生と共に“進化するモデル”
市場需要が高く、再販価値が高い
自由 × 工業化の奇跡の中間点

■ 06|ONE DESIGN と ONE OFF の違い
| 項目 | ONE DESIGN | ONE OFF |
| コンセプト | ベストセラー型 | 完全唯一型 |
| 価格 | 予測しやすい | 案件ごとに変動 |
| 工期 | 早い | 長い |
| 設計自由度 | 中 | 最大 |
| 失敗リスク | 小 | 条件により変動 |
| 美しさ | 練磨された普遍性 | 独創的な尖り |
| 工業化適性 | 非常に高い | 低~中 |
要するに、
ONE DESIGNは実用性+デザイン
ONE OFFは個性+感性という住み分けになる。
■ 07|ONE DESIGN を支持する理由(ユーザー視点)
✔ すぐ建つ
✔ コストが読める
✔ デザインが安定して良い
✔ 转用(民泊・別荘・店舗)に強い
✔ 売却価値が高い
✔ 工場製作の品質が均一
これはまさに“ベストセラーの設計思想”。

■ 08|ONE DESIGN に関するQ&A(12問)
Q1. ONE DESIGNとは何ですか?
A. IMCAが長年の実績から抽出した“支持されやすいベストセラーデザイン”のコンテナ建築モデル群です。
Q2. ONE OFFと何が違うの?
A. ONE DESIGNは工業化された標準モデル、ONE OFFは完全自由設計です。
Q3. コストは抑えられますか?
A. はい。設計が確立しているため無駄がありません。
Q4. カスタマイズできますか?
A. 色・窓位置・屋根形状など軽いカスタムは可能です。
Q5. Fujiyama Villaの特徴は?
A. 20FT×3の水平ラインと大屋根が象徴の別荘モデルです。
Q6. レイダウンで美容室はできますか?
A. はい。作業室15㎡以上を確保できるため可能です。
Q7. MIKAN HOUSEのベースはどんなモデル?
A. DIYで完成していく未完仕様のコンテナ住宅です。
Q8. 工期はどのくらい?
A. ONE DESIGNは約2〜4ヶ月と早いです。
Q9. 断熱・雨仕舞は問題ない?
A. 二重屋根・遮熱・結露対策を標準装備しています。
Q10. 事業用途にも使えますか?
A. 宿泊、カフェ、美容院、アトリエなど幅広く適合します。
Q11. 耐久性は?
A. JIS鋼材と建築仕様の防錆・防水により長期間使用できます。
Q12. 再販価値は?
A. ONE DESIGNは中古市場でも人気が高く下落が少ないです。
記事の監修者
大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。
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