コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.10.04

🌪️ コンテナハウスと台風と塩の物語

― 南の島で生きるための耐風建築エッセイ ―

プロローグ 

嵐の夜。窓の外で風が吠え、雨が横殴りに叩きつける。南の島に暮らす者なら誰もが知っている、「家が試される夜」の感覚。
けれど、もしその時、あなたの住まいが鉄の箱だったらどうだろう。コンテナハウスは、海を越え世界を旅してきた歴史が鍛えた鋼鉄のモジュール。
その静かな存在感は、暴風の中でさえ「無言の盾」となってくれる。「コンテナは台風に強い」と言われるのは、単なる宣伝文句ではなく、
その構造と歴史が証明してきた事実なのです。

台風の国・日本

年間20以上の台風が生まれ、そのうちいくつかは必ず日本を襲う。特に沖縄や南西諸島は、台風銀座とも呼ばれる「試練の大地」。
風速50m/sを超える暴風、飛び交う瓦や看板、そして海から吹き上げる塩の霧。この環境に適応できる家でなければ、安心して暮らすことはできません。

コンテナハウスが台風に強い理由

鋼鉄フレームの剛性
 四隅のコーナーポストと梁で作られたラーメン構造(剛構造)、そして、壁の鋼板で一体化したモノコック構造がさらに剛性を上げる。
コンパクトな形状
 風の影響を受けにくい直方体。
輸送を前提とした強度
 もともと24t以上の荷重に耐える仕様だが、建築用コンテナはさらに強い構造だ。
つまり「揺さぶられても壊れにくい箱」なのです。

それでも課題はある

基礎に固定しなければ、強風で動いてしまう。基礎に固定するのは「建築基準法上必須」だが、小規模建築の時は「検査」がないのだが十分な強度を確保しよう。
窓やドアなど開口部は台風の弱点。窓は「ものが飛んできて破損」する例が多く、「台風用雨戸」などの装備が必要。
外壁鋼板は飛来物にも強いが「傷」は入る。二重外壁や「飛来物よけネット」、シャッターなども有効な手段必要。
強さの裏には、必ず「工夫と補強」が求められます。

塩害という見えない敵

台風一過の朝、壁に浮かぶ白い粉。それが塩。海の塩が運ばれてくるのです。
南の島で暮らす家の大敵は、暴風雨だけでなく「塩害」なのです。
鉄は錆び、アルミは白化し、機械は数年で朽ちる。
だからこそ、重防食塗装・ポリウレア塗装・ステンレス部材・台風後の真水洗浄が欠かせません。

実例の物語

宮古島 MIKAN HOUSE
 40ft+デッキ、デッキが風の緩衝エリア。基礎固定。台風後は真水で外壁洗浄。
古宇利島 Spartan 30ft
 断崖に建ち、二重外壁(外構の壁)と防錆塗装(ポリウレア)で「海風と共存」。
君津の森 コンテナアカデミア
 内陸でも風洞実験を応用した設計を導入。風を「逃す」工夫。
どの家も「鉄の哲学」と「地域の知恵」を宿しながら、自然と向き合っている。

◆ 結び

コンテナハウスは、南の島の住まいとして「頼れる盾」になり得ます。
ただし、それは「建てれば安心」ではなく、
備えと暮らしの工夫を重ねたときに完成する強さなのです。
鉄の箱に住むという選択は、
自然の力を受け止め、乗り越えるための「哲学」を生きることでもあります。

Q&A:台風・塩害とコンテナハウス(10問)

Q: コンテナハウスは台風に本当に強いの?
A: はい。鋼鉄モノコック構造のため、木造より耐風性能は高いです。ただし基礎固定と窓対策は必須です。
Q: 台風常襲地帯ではどんな基礎がいい?
A: ベタ基礎+アンカーボルト固定が最適です。独立基礎だけでは不安があります。
Q: 窓ガラスは割れやすい?
A: 通常ガラスは危険ですが、強化ガラスや防風シャッターで大幅に安全性が向上します。
Q: 屋根は飛ばされないの?
A: コンテナは屋根も一体構造のため、木造のように吹き飛ぶことはありません。
Q: 台風後の「塩害」はどれくらい深刻?
A: 非常に深刻です。防錆処理がないと、外壁や設備は数年で劣化します。
Q: 塩害対策には何が有効?
A: 重防食塗装、ステンレス部材の使用、台風後の真水洗浄が基本です。
Q: メンテナンスはどれくらい必要?
A: 台風後ごとに洗浄し、5〜10年に一度の再塗装を推奨します。
Q: 飛来物に当たるとどうなる?
A: 外壁鋼板はへこむ可能性があります。二重外壁や外装材でカバーできます。
Q: 離島でも建築確認は取れる?
A: はい。建築用新造コンテナなら建築基準法に適合し、確認申請が可能です。
Q: 将来、公共施設や避難所にも使える?
A: 可能です。モジュール構造なので、災害時の仮設施設にも転用できます。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。