コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.12.03

12_MIKAN(未完)HOUSE

コンテナハウスでセルフビルドを楽しむ|MIKAN(未完)HOUSEが目指す未完の暮らし

― セルフビルドで家を「持つ」のではなく、「育てる」ために ―
MIKAN(未完)HOUSEは、
「完成品の家を買う」のではなく、自分の手で“未完の家”を育てていくための器です。
建築用新造コンテナという、構造的に安心なフレームを土台にしながら、仕上げ・使い方・時間のかけ方は、それぞれの暮らし手に委ねる。ローンに縛られた「一生に一度の家」ではなく、手を動かしながら、少しずつ・何度でも更新できる“自分サイズの基地”。それが、MIKAN(未完)HOUSEのセルフビルド思想です。

1|なぜ「未完」なのか

家づくりは本来、つくる人、住む人、集まる人、がまざり合って進んでいく、長い時間のプロジェクトです。
ところが現実の住宅は、プランも仕上げも完成した状態で「商品」として売られる。引き渡しの瞬間に「はい、ここで完成です」と区切られることがほとんどです。
MIKAN(未完)HOUSEは、
その前提をひっくり返したくて生まれました。
「完成していないこと」そのものを肯定する。
住み手が手をかける余白を、最初から意図的に残しておく。
だから名前に「未完」と書いています。
『“完成させたがりの建築”ではなく、“育てる余地のある建築”』をつくる。
それがこのマニフェストの出発点です。

2|建築用コンテナ × セルフビルド、という選択

MIKAN(未完)HOUSEは、
『海上コンテナの流用ではなく「建築用新造コンテナ」』を使います。
日本の建築基準法に対応した構造体であること、耐久性・耐震性がきちんと計算できること、建築確認をとって、正々堂々と“家”と名乗れること。
この土台がないセルフビルドは、カッコよく見えてもただの危ない小屋になりかねません。
MIKAN(未完)HOUSEでは、
構造・防錆・断熱の「根っこ」の部分はプロが責任を持ってつくる
内装・家具・外構・デッキなど、「暮らしの表情」をつくる部分にセルフビルドの余地を残す
という、『プロとセルフビルドの“役割分担”』を前提にしています。
建築物の施工には「責任と安全安心」を担保するために「建材」にも、施工技術にも「免許制度」があり、施工に種類によっては資格者が施工をしなければならない部分があります。そのようなところはプロが責任を持って施工をし、建主がどなたであっても楽しめる部分もあるのです。その余白を自分自身の感性で作り上げることの喜びをての戻そうという試みなのです。

3|MIKAN(未完)HOUSE セルフビルドの5つの原則

① 安全と法規はあらかじめクリアする
自分で手を動かすとはいえ、
構造
防水
電気・設備
建築確認
を「なんとかDIYで…」とやるのは、さすがに無茶です。
MIKAN(未完)HOUSEは、建築用新造コンテナ+プロの設計・施工で“建物としての骨格”を完成させた状態からスタートします。
そのうえで、棚をつくる、ベンチをつくる、デッキを張る。外構を整える。
といった『「暮らしを彩る部分」にセルフビルドの楽しみを集中させる』。
これが安全と自由のバランスを取る、一番現実的なラインだと考えています。


② 小さく始めて、大きく育てる
MIKAN(未完)HOUSEは、
20FTコンテナ1台・レイダウン1台など、小さなボリュームから始められるのが前提です。
いきなり30〜40坪の家を目指さなくていい
まずは「寝られる・くつろげる小さな基地」をつくる
必要になったら、コンテナをもう1台足す
デッキを広げる、屋根を伸ばす
**“増築前提の家づくり”**を最初から設計に組み込みます。
完成一発勝負ではなく、
暮らしの変化にあわせて少しずつ増築していける仕組みとしての家。
それがセルフビルドとコンテナの相性のよさです。


③ 素材とディテールは「触って育てられる」ものを選ぶ
よくある「建売住宅」の内装は、
傷がついたら即アウトなフローリング
貼り替え前提ではないビニールクロス
など、“さわるほどビビる”仕上げが多くなりがちです。
MIKAN(未完)HOUSEでは、
自分で塗り直せる木の壁
ヤスリとオイルで表情を変えられる床
外部は経年変化が味になる板張り・鉄・デッキ材
など、『「少し雑に扱っても味になる素材」』を積極的に採用していきます。
セルフビルド前提の家づくりでは、
『「きれいに保つために触れない家」よりも、「触るほど馴染んでいく家」』の方が
ずっと相性がいいからです。


④ 一人で抱え込まず、「仲間とつくる」ことを前提にする
MIKAN(未完)HOUSEは、
一人で全部DIYすることをゴールにしていません。
家族
友人
地元の職人
同じMIKANオーナー
が手を貸し合いながら、
「誰かの現場で手伝ったぶん、自分の現場でも手伝ってもらう」ような、
ゆるいコーポラティブ・セルフビルドが理想です。
一人で全部やる → 消耗する
みんなで少しずつやる → 思い出になる・技術が回る
MIKAN(未完)HOUSEは、
セルフビルドを“個人の苦行”ではなく、“共同作業の遊び”に変える器でありたいと思っています。
その取り組みも2026年の春から取り組む予定です。


⑤ 失敗とやり直しを前提にしておく
セルフビルドでは、
塗りムラ
寸法違い
少し曲がった棚
みたいな“プチ失敗”は必ず起こります。
MIKAN(未完)HOUSEの発想は、
「だからこそ、やり直せる余白を最初から組み込んでおく」ことです。
仕上げ材は貼り替え・塗り替えしやすいものを選ぶ
設備や家具は固定しすぎない
つくりながら、「次の一手」を考えられる構造にする
失敗しても“終わらない”のが未完の家のいいところです。
「一回の正解」を目指すより、
手を動かし続けられる仕組みをつくる。それがマニフェストの核にあります。

4|IMCA_現代コンテナ建築研究所が担う役割と、住み手が担う役割 

MIKAN(未完)HOUSEは、
建築用新造コンテナメーカーであるIMCAと、暮らし手であるオーナーとの共同作品です。
IMCAが担うこと
建築用新造コンテナの設計・製造
構造・法規面の設計(建築確認を含む)
基礎・躯体・断熱・外皮など「建物の骨格」の施工
セルフビルドしやすいディテールの標準化
住み手が担うこ
内装の仕上げ(壁・床・家具・照明の一部など)
デッキや外構・植栽の整備
時間とともに変化させていく「暮らしのデザイン」
他のMIKANオーナーへのノウハウ共有・手伝い、どちらか一方では完結しません。
「建築」と「暮らし」の境界で、一緒に遊ぶプロジェクトがMIKAN(未完)HOUSEです。

5|これからMIKAN(未完)HOUSEを考える人へ

家を買う、ではなく。家づくりの物語に、自分で参加する。
ローンに追いかけられる人生ではなく、手を動かすことで、少しずつ“自分の場所”を増やしていく人生へ
MIKAN(未完)HOUSEは、
そんな選び方をしたい人のための建築用コンテナ+セルフビルドの仕組みです。
まずは小さく一台から、手を動かしながら、自分の暮らし方を見つける
必要になったら増築する・場所を変える。
それを可能にするために、
IMCAは『「建築用新造コンテナ」と「セルフビルドしやすい設計」』を磨き続けます。

Q&A 10選(MIKAN(未完)HOUSE × セルフビルド)


Q1. MIKAN(未完)HOUSEって、普通のコンテナハウスとどこが違うんですか?
A.
MIKAN(未完)HOUSEは、海上コンテナの流用ではなく建築用新造コンテナを前提にした家づくりの仕組みです。「完成品の家を買う」のではなく、プロが骨格をつくり、住み手がセルフビルドで仕上げていくことを前提にしたコンテナハウスである点が大きな違いです。構造・法規・建築確認はプロが担い、その上に「未完の余白」を残しているのがMIKAN HOUSEの思想です。


Q2. なぜあえて「未完」なんですか?ちゃんと完成させてくれた方が楽では?
A.
はい、楽なのは「完成した家を買う」方です(笑)。
ただ、MIKAN(未完)HOUSEが大事にしているのは、暮らし手が家づくりに参加することです。
最初からすべて決め切るのではなく、自分の手で塗る、棚をつくる、デッキを広げる。
といった余地を残すことで、時間とともに家と暮らしが一緒に育っていくのを楽しめます。
「未完」は中途半端ではなく、“これから手を入れる余白”というポジティブなコンセプトです。


Q3. セルフビルドといっても、素人がやって大丈夫なんですか?
A.
構造・防水・電気・建築確認など、命と法規に関わる部分はプロが担当します。
セルフビルドで手を出していいのは、基本的に、内装の仕上げ(塗装・一部の壁材・棚など)
デッキ・外構の一部、家具・造作的な部分
といった「手を入れてもすぐやり直せるゾーン」です。
MIKAN(未完)HOUSEは、“素人DIY”と“プロの仕事”の線引きを最初から設計に組み込んでいるので、危険なところを無理に自分でやる必要はありません。


Q4. 小さなコンテナ1台から本当に暮らせますか?どれくらいの広さから始めるのが現実的ですか?
A.
「完全に定住する家」と「週末拠点・別荘」とでは答えが変わりますが、MIKAN(未完)HOUSEとしては、
20FTレイダウン1台(約16〜17㎡)+DECK20㎡
→ ミニマルな週末小屋・秘密基地としては十分
20FTレイダウン2台+デッキ
→ 1〜2人暮らしの“かなり攻めたコンパクトハウス”が現実的
というイメージです。
重要なのは、最初から“増築できる設計”にしておくこと。
あとからコンテナやデッキを足していけるのがMIKAN HOUSEの強みです。


Q5. MIKAN(未完)HOUSEでも、ちゃんと建築確認は取れるのですか?
A.
はい。ここが海上コンテナDIYとの一番大きな違いです。
MIKAN(未完)HOUSEは建築用新造コンテナ+建築基準法対応の構造計画を前提にしています。
用途・規模・地域条件にもよりますが、新3号鉄骨平屋、小規模な2階建て。
など、これまでにも多数の建築確認取得済みコンテナ建築をベースにした計画が可能です。
「セルフビルドだから法的にはグレー」ということはありません。完了検査も受け、出所の正しいトレーサビリティーのある「血統書」のある建築ができます。


Q6. 自分で手を入れた部分が“違法建築”になったりしませんか?
A.
構造や用途に影響するような増築・改造を勝手にやれば、当然リスクはあります。
MIKAN(未完)HOUSEでは、セルフビルドOKな範囲と、変更時に相談が必要な範囲を最初からはっきり分けてお伝えします。
「壁紙を塗り替える」「棚をつくる」レベルは問題ありませんが、
部屋を広げる
コンテナを増やす
屋根の形を変える
といった変更は、必ず設計者・メーカー側と相談のうえで進めることを前提にしています。


Q7. コスト的には、普通の家を買うより安くなるんでしょうか?
A.
「ほぼ同じ性能の家を、同じくらいの広さで、セルフビルドで極端に安く」というのは正直ムリです。
MIKAN(未完)HOUSEが得意なのは、必要十分な性能を持った“小さな箱”からスタートする。ローンを抑えつつ、少しずつ手を入れながら広げていく。という“始め方”の部分です。
最初から30〜40坪の家を買う
のではなく、
まずは20〜25㎡のコンテナハウスから始める
ことで、初期投資とランニングコストをコントロールしやすくなる、というのが現実的なメリットです。


Q8. セルフビルドの時間が取れるか不安です。忙しい人には向いていませんか?
A.
「全部自分でやらないといけない」前提だと、忙しい人には厳しいです。
MIKAN(未完)HOUSEは、最初はプロ施工だけで“暮らせる最低限の状態”まで完成させる。
その後のDIYは、時間のあるときに少しずつ進める“趣味”のような位置づけ。という運用を想定しています。
また、お互いの現場を手伝い合うコーポラティブ・セルフビルドが実現できれば、
「自分一人の時間」だけに頼らずに、少しずつ家を育てていくことも可能です。


Q9. コンテナハウスでセルフビルドすると、断熱や結露などの性能が心配です。
A.
ここはまさに「プロの領域」です。
MIKAN(未完)HOUSEでは、断熱・気密・防露に関わる層構成、換気・窓まわりのディテール
はセルフビルドではなく、プロが責任を持ってつくる部分と位置づけています。
その上で、内側の仕上げ(色・素材・造作)をセルフで自由にいじれるようにするのが基本の考え方です。
コンテナハウスならではの「夏暑い/冬寒い」「結露が心配」といったポイントは、
建築用コンテナ+プロ施工の段階で潰しておきます。


Q10. MIKAN(未完)HOUSEに興味がありますが、何から相談すればいいですか?
A.
いきなり「プランをください」よりも、まずは
どのエリアに、どれくらいの大きさで、どんな暮らし方(用途)をしたいのか
セルフビルドにどれくらい時間と体力を割けそうか。
をざっくり言葉にしていただくのが一番の近道です。
MIKAN(未完)HOUSEは、建築用新造コンテナのメーカーであり、セルフビルドの“設計者”でもある存在なので、「まだ土地も決まっていない段階」「予算感だけ相談したい」というご相談からスタートしても大丈夫です。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。