コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.11.28

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コンテナハウス|防水・シーリングの実務ガイド

鉄の箱を「雨に強い建築」にするための設計・施工ポイント

1. コンテナハウス防水の基本概念

1-1 コンテナハウスにおける「防水・シーリング」とは
コンテナハウスの防水は、
「鉄の箱をそのまま置くだけ」では成立しません。
屋根(天板)はほぼフラット
外周はコルゲート鋼板が連続
溶接・カット・開口・連結などで、本来の耐水システムが崩れている
このため、コンテナハウスの防水設計では必ず
一次防水:雨水を“受けない・流す”仕組み
二次防水:入り込んだ水を“室内側に出さない”仕組み
という二重構造で考える必要があります。
シーリング(コーキング)は、
あくまで**一次・二次防水を補助する「最後の一手」**であり、
「シーリングだけで止水」はNGと考えた方が安全です。


1-2 雨漏りリスクが高い代表的な部位
コンテナハウスで雨漏りリスクが高いのは、主に以下のポイントです。
コンテナ天板(屋根)と後付け屋根の取り合い
コンテナ同士のジョイント部
窓・ドアなどの開口部まわり
給排水・電気・換気ダクトなどの貫通部
デッキ・庇・バルコニーの取り合い部
この記事では、それぞれの部位について
**「設計の考え方」+「シーリングの使い方」**をセットで整理します。

2. 屋根防水|コンテナ天板と後付け屋根の考え方

2-1 屋根形状と排水計画
コンテナ天板はもともと「貨物輸送用」であり、
建築物の屋根としての排水性能は想定されていません。
そのため、コンテナハウスの屋根防水では原則として、
コンテナ天端に勾配をつけた軽量屋根をかぶせる
あるいは、天板全体を防水層+排水計画つきの屋根として再設計する
どちらかのアプローチが必要です。
推奨イメージ
勾配:1/50程度の片流れ
構成:
金属屋根(ガルバリウム鋼板等)
その下にルーフィング(下葺き防水シート)(折板の場合はなしでOK)
必要に応じて通気層+断熱材
「水は必ず勾配方向に流れる」「たまらない」を前提に設計します。


2-2 コンテナ天板を使う場合の防水とシーリング
天板を防水面として活かす場合は、
下地処理
既存塗膜・錆・汚れをケレン・洗浄
必要に応じて防錆プライマー塗布
防水層の施工
ウレタン・FRPなどの塗膜防水
またはシート防水+抑え
溶接部・段差部には補強クロス+シーリングを併用
端部・立ち上がりの納まり
パラペット・水切り板金を組み合わせて「水が返る」ディテールに
立ち上がりと防水層の取り合いに、
防水テープ+外装用シーリング材で二重に止水
シーリングは、
天板と板金の継ぎ目
ドレン周り
防水層の末端
など、「防水層の切れ目」を補強する用途で使います。

3. 外壁・コンテナ連結部の防水・シーリング

3-1 コンテナ同士のジョイント部
コンテナを複数連結する場合、
箱と箱の間の『線状のすき間』が雨漏りリスクになります。
設計の基本
一次防水:
ジョイント上に**板金カバー(ガルバ等)**をかぶせる
二次防水:
オーバールーフで元々コンテナの継ぎ目にはすでに雨は落ちない仕様で
施工時のポイント
目地幅は8〜15mm程度確保し、バッカー材(バックアップ材)を入れる
シーリングは2面接着(左右の面のみ)にする
→ 実は3面接着だと動きに追従できず、早期に割れやすい


3-2 コンテナ+在来部分の取り合い(増築・庇・デッキなど)
在来木造・鉄骨とコンテナを接続する場合も考え方は同じです。
上からの雨が当たらないよう、見切り板金+水切りを先に設計
そのうえで、
取り合いラインの裏側に防水シート・防水テープ
外側ラインにシーリング材を充填して二重防水にする
なので基本は1時側で雨を「切る」。それでも侵入してきたものをシーリングで防ぐ。

4. 開口部(窓・ドア)の防水・シーリング

4-1 サッシまわりの基本構成
雨漏りの最多トラブルは窓まわりです。
推奨構成
サッシ上部:
ヘッドフラッシング(頭に水切り板金)を設け、
「上から流れた水をサッシ外側へはね出す」
サッシ下部:
室内側に水が入り込まないよう、
「前勾配の水切り部材(サッシ下端)」を設計(一般的にはサッシ部材に付属)
周囲:
透湿防水シートを上→左右→下の順で重ね貼り
シートの重ね部とサッシまわりを防水テープ+シーリングで処理
4-2 よくあるNGパターン
サッシ周囲を見えるところだけコーキングして終わり
防水シートが「逆ラップ(下→上)」になっている
サッシ下枠の両側に水の逃げ場がない
開口部は必ず
「防水シート+板金+シーリング」で三重構成を意識します。

5. 貫通部(配管・換気ダクト・電気配線)の防水・気密 


5-1 外側(防水)の処理
給排水配管や換気ダクト、電気のメイン配線など、
コンテナ鋼板を貫通する部分は、雨漏りと気密性能の両面で弱点になりがちです。
基本手順
鋼板を所定径+クリアランスで開口
スリーブ管または防水ブーツを設置
鋼板とスリーブ周りを外装用シーリング材で360度充填
必要に応じて、スリーブの外周を板金カバー+シーリングで保護
5-2 内側(気密・防湿)の処理
室内側では、
断熱材の欠損部(孔周り)を丁寧に充填
気密シート+気密テープで貫通部を包む
必要に応じて、配線ボックス用の気密カバーを使用
外側は防水優先、
内側は気密・防湿優先で考えるのがポイントです。

6. シーリング材の選定と施工手順

6-1 シーリング材の種類と使い分け(外部)
コンテナハウス外装の代表的なシーリング材は次のとおりです。
変成シリコン系(MS系)シーリング材
特徴:塗装可・金属下地との相性が良い
用途:外壁・板金・サッシまわりなどの外装全般に適する
ポリウレタン系シーリング材
特徴:伸び・強度が高いが、紫外線に弱いものが多い
用途:上から塗装する前提の目地・床まわりなど
シリコーン系シーリング材
特徴:耐候性は高いが、塗装がのらない製品が多い
用途:ガラス周り・一部設備など用途を限定して使用
コンテナハウスの外装では、基本的に
「外装用変成シリコン系+適切なプライマー」
を標準とし、仕様書に従って使い分けるのが安全です。


6-2 シーリング施工手順の基本
下地処理
目地内の汚れ・錆・旧シールを除去
乾燥状態を確認
マスキング
仕上がりラインに沿ってマスキングテープを貼る
プライマー塗布
メーカー指定のプライマーを均一に塗布
乾燥時間を守る
シーリング材の充填
連続して空気が入らないよう充填
バッカー材に押し付けるように打つ
ヘラ仕上げ
2面接着を意識しながら、均一な厚み・形状に整える
マスキング除去
まだ硬化する前にテープを引き抜く

7. 点検・メンテナンスの基本

1年目・2年目:
新築時の動き(温度変化・収縮)によるクラックが出ていないかチェック
3〜5年ごと:
屋根・板金端部・サッシまわりのシーリング劣化(亀裂・剥離)を点検
必要に応じて部分打ち替え
10〜15年ごと:
外壁・屋根の塗装更新
大規模なシーリング全面打ち替えを検討
防水・シーリングは、
「一度やれば終わり」ではなく、「定期的に更新する消耗部材」
という前提で計画することが重要です。

コンテナハウス|防水・シーリング Q&A 厳選10

Q1. コンテナをそのまま置いて、継ぎ目だけコーキングすれば防水は足りますか?
A. 足りません。コンテナ天板は排水計画が弱く、フラットに近いため、
「勾配屋根+板金+防水シート」などの一次防水を別途設計する必要があります。
シーリングはあくまで補助的な止水手段です。


Q2. コンテナハウスの屋根は、どの防水工法が向いていますか?
A. 一般的には、
金属屋根(ガルバ)+下葺き防水シート
塗膜防水(ウレタン・FRP)+適切な立ち上がり
などが多く採用されています。コンテナ天板を直接屋根とする場合も、塗膜防水+板金による縁部処理が必要です。


Q3. シーリング材は何を使えばいいですか?
A. コンテナハウス外装では、
「変成シリコン系(MS系)の外装用シーリング材」+プライマー
が基本です。金属・塗装面に適合し、上からの塗装も可能な製品を選びます。
シリコーン系は塗装との相性に注意が必要です。


Q4. 窓まわりは、コーキングさえしておけば安心ですか?
A. いいえ。
窓まわりは
防水シートのラップ
ヘッドフラッシング(水切り板金)、水切り小庇
シーリング
の三重構成で考える必要があります。コーキング単独では、経年劣化で高確率で雨漏りします。


Q5. コンテナ同士の連結部は、どのように止水すべきですか?
A. まずジョイントを板金カバーで覆って一次防水。
そのうえで、板金端部・下地との隙間を防水テープ+外装用シーリング材で処理する二重構造が推奨されます。
目地内部はバッカー材+2面接着で施工します。


Q6. 貫通部(配管・ダクト)の防水は、発泡ウレタンだけで埋めても大丈夫ですか?
A. NGです。発泡ウレタンは断熱・気密の補助であり、防水材ではありません。
外部側はスリーブ+シーリング材、または防水ブーツ+シーリングで止水し、
内部側で断熱・気密処理を別途行う必要があります。


Q7. シーリングの寿命はどれくらい見ておけば良いですか?
A. 製品・環境によりますが、
5〜10年程度で劣化(亀裂・剥離)が目立ち始めるケースが多いです。
3〜5年ごとに点検し、必要に応じて部分補修、10〜15年で全面打ち替えを前提に計画するのが現実的です。


Q8. 散水試験はやった方がいいですか?
A. 雨漏りリスクが高いディテール(屋根端部・サッシまわり・連結部など)を多用している場合は、
竣工前の散水試験を推奨します。
特に初めてのディテールを採用したケースでは、設計通りの水の流れになっているかを確認する意味で有効です。


Q9. 海沿いのコンテナハウスでは、防水・シーリングで何か追加配慮が必要ですか?
A. はい。塩害環境では、
鋼板の防錆性能
塩分付着によるシーリング劣化
のスピードが速くなります。
耐候性の高い外装用シーリング材の採用+点検頻度アップ(年1回程度)を前提に計画するべきです。


Q10. DIYでシーリング打ち替えをしても大丈夫でしょうか?
A. 見える部分だけの簡易補修であればDIYも可能ですが、
下地処理不足
目地形状不良(3面接着)
プライマー未使用
などがあると、短期間で再劣化し、かえってリスクになります。
主要部位(屋根端部・サッシまわり・連結部)の本格的な打ち替えは、専門業者への依頼を推奨します。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。