コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
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リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.06.30
コンテナハウスの活用術
コンテナハウスの知識(中級)
コンテナハウスの豆知識
コンテナハウスは暑いですか?寒いですか?

もくじ
Q. コンテナハウスって暑いの?寒いの?
A. ご安心ください。当社のコンテナハウスは、一般的な木造住宅や軽量鉄骨建築と同等、あるいはそれ以上の高い断熱性能を持っています。
その理由は、「魔法瓶構造」とも言える徹底した断熱施工にあります。
専門的解説|なぜ「暑い・寒い」と思われがちなのか?
そもそも海上輸送用のコンテナは、鉄(コルテン鋼)製のため、熱を伝えやすいという性質があります。『熱伝導率が高い(λ=約50W/mK)』という金属ならではの特徴によるもの。
そのため、断熱施工のない外壁が鉄板のコンテナは、
夏:直射日光により内部温度が60℃以上に達する
冬:外気温と同等まで室温が下がる(ほぼ冷蔵庫状態)
…といった、まさに「鉄の箱」そのものの状況になります。
しかし、人が中に住むのならそのままという訳にはいきませんよね。

当社の対応|断熱の三大ポイント
① 吹き付け発泡ウレタン 50mm(内壁・天井)
断熱材として最も高性能とされる『硬質ウレタンフォーム(熱伝導率 λ=0.024~0.026W/mK)』を、50mm厚で隙間なく吹き付けています。これにより熱橋(ヒートブリッジ)をなくし、建物全体を断熱層で包むことができます。部分的に断熱材のない空間が出来る事は発砲ウレタンの場合少ないですから、結露による錆の発生も防ぐことができます。
通常の木造住宅における断熱材(グラスウール100mm相当)の性能を、この50mmのウレタン層がしっかりとカバーしています。

② 屋根は二重構造+遮熱+断熱
当社のコンテナハウスの屋根部分は、『躯体の上にもう一層構造体を設けたオーバーフライルーフがかかる、「二重屋根構造」』になっており、そこにもウレタン断熱を施しています。
この空気層が屋根への輻射熱を遮断し、通気と排熱にも貢献。夏の直射日光を効果的にカットします。

③ 床下断熱|足元からの冷気対策も万全
鉄製の床面にも、しっかりウレタン断熱層を設けており、底冷えを防ぎます。冬の足元からの冷気の侵入を防ぐことで、全体の温熱環境がさらに安定します。

全体構造として「魔法瓶」のように
このように、外部からの熱の侵入や放出を防ぐため、コンテナ全体が断熱材に包まれた「魔法瓶構造」になっており、空調効率も高いことが特徴です。
・ 断熱等性能等級で言えば、UA値(外皮平均熱貫流率)で0.6~0.87W/㎡K前後の性能を実現(地域・仕様により調整)

高気密・高断熱住宅に匹敵する温熱性能
よくある誤解への回答として、「鉄の箱なんだから、どうせ暑いでしょ?」
→ 建築用新造コンテナは、鉄の箱を「断熱施工された建築物」に進化させたものです。建物として断熱計画されていれば、素材にかかわらず快適性は十分確保できます。
「夏場はエアコンが効かないんじゃないの?」
→ むしろ断熱性が高いため、エアコンの効きは早く、省エネ性能も高いという声をいただいています。
まとめ:見えないところにこそ、性能は宿る
コンテナハウスの「暑さ・寒さ」問題は、素材そのものの特性ではなく、建築としての断熱設計の有無によるものです。当社では、住宅・宿泊施設・店舗など、あらゆる使用環境に応じて、最適な断熱仕様を標準化。住む人・使う人の快適性を最優先に設計を行っております。では、Q値・UA値計算書を作ってみましょう。20FEETコンテナの場合です。以下に「20フィートコンテナを使った建築用断熱施工済みモデル(居住用)の想定」で、『Q値(熱損失係数)とUA値(外皮平均熱貫流率)』を「概算・モデル値」としてご提示。

断熱性能計算モデル|20フィート建築用新造コンテナ。 モデル概要(試算条件)
この表の内容が条件です
項目 | 内容 |
タイプ | 20フィート建築用新造コンテナ(居住仕様) |
サイズ | 外寸:約6.0m×2.4m×2.8m(L×W×H) 内寸:約5.8m×2.2m×2.6m |
延床面積 | 約13.0㎡(約7.9畳) |
断熱仕様 | 吹付硬質ウレタンフォーム:50mm(壁・天井・床) |
屋根構造 | 二重構造+ウレタン断熱50mm |
開口部 | ペアガラスアルミサッシ(Low-E) ※1m²の窓×2カ所で想定 |
使用地域 | 6地域(千葉・東京等温暖地)を想定 |
1. UA値(外皮平均熱貫流率)
UA値とは:
建物外皮(外壁・屋根・床・開口部など)からの熱の損失を、面積あたりで示した値(単位:W/㎡K)。
値が低いほど断熱性能が高いことになります。
計算の概略(参考値):
部位 | 面積(㎡) | 熱貫流率U(W/㎡K) | 熱損失量 |
外壁(4面) | 約32㎡ | 0.42 | 約13.44 |
屋根 | 約13㎡ | 0.35 | 約4.55 |
床 | 約13㎡ | 0.38 | 約4.94 |
窓(ペアガラス) | 約2㎡ | 2.33 | 約4.66 |
合計外皮面積 | 約60㎡ | — | — |
合計熱損失量 | — | — | 約27.59W/K |
UA値 = 27.59 ÷ 60 = 約0.46W/㎡K※基準として、6地域(東京・千葉)における断熱等性能等級5(2022年基準)の目標値は「0.87W/㎡K以下」ですので、本モデルは等級6相当の性能になります。

2. Q値(熱損失係数)
Q値とは:建物の内外温度差1℃あたりに、建物全体からどれだけ熱が逃げるかを表す指標(単位:W/㎡K)。
※現在はUA値のほうが主流ですが、Q値も依然目安になります。
概算式:
Q値 = 熱損失量 ÷ 延床面積
Q値 ≒ 27.59 ÷ 13.0 ≒ 2.12W/㎡K
※参考までに:
木造住宅(旧省エネ基準):2.7~3.2W/㎡K
高断熱仕様住宅:1.6~2.0W/㎡K
→ 本モデルは高気密・高断熱住宅の基準に近い断熱性能を示しています。
総合コメント
当社の断熱仕様では、20フィートコンテナというコンパクトな構造を魔法瓶のように包み込み、外皮性能を非常に高い水準で確保しています。
住宅用途はもちろん、店舗・宿泊・福祉施設等にも安心して展開可能です。
断熱等級6というのはどんなかんじ?
断熱等性能等級6(=【新しい断熱基準での高性能ゾーン】)は、2022年に国が制定した「新しい省エネ住宅の基準群」の中でも、上位ランクに位置する断熱グレードです。
わかりやすく言うと:断熱等級6とは?一言でいえば:「ZEH(ゼロエネルギーハウス)」相当の断熱性能
→ 夏涼しく、冬あたたかく、省エネで快適に暮らせる家。
等級ごとの比較(UA値)
等級 | 地域区分6(東京・千葉など)の基準 UA値(W/㎡K) | 特徴 |
等級4(旧基準) | 0.87 | 2022年以前の最低基準。これがないと建築許可が下りないレベル。 |
等級5(新基準) | 0.6~0.87 | ZEH基準の入口。省エネ住宅として評価され始める。 |
等級6 | 0.46~0.6 | 高断熱住宅。エアコン1台でも空間を快適に保てる。 |
等級7 | 0.26~0.46 | パッシブハウス級。北海道でも暖房がほぼ不要なレベル。 |
断熱等級6の暮らし心地(イメージ)
冬でも素足で歩ける床のぬくもり
夏は外の猛暑を遮り、冷房の効きが抜群
エアコン1台で家全体が快適に
冷暖房費が月数千円安くなるケースも
二酸化炭素排出量の大幅削減(カーボンニュートラルに貢献)
コンテナハウスで実現するには?
「コンテナ=鉄の箱」というイメージからは想像しにくいかもしれませんが、
構造体としてのコンテナを、“魔法瓶”にすることができれば、この等級6も十分に狙えます。
当社のように:
吹き付け発泡ウレタン50mm
屋根・床の二重断熱
窓もLow-Eペアガラス
…と外皮の熱の出入りを抑える設計をすれば、小さな面積の分だけエネルギー効率はむしろ高くなるという利点も。
補足:等級6にすると何がいいの?
補助金対象になる(自治体によっては最大100万円以上)
BELS(建築物省エネルギー性能表示)評価で高評価
賃貸・宿泊・福祉用途で「安心」「快適」の訴求ポイントになる
建物資産価値の維持向上に直結
まとめ
断熱等級6とは、ただの“性能値”ではなく、「暮らしの質」と「建築の信頼性」を両立させる基準ラインです。
当社の建築用コンテナハウスは、サイズこそコンパクトですが、性能は本物。
「コンテナを、魔法瓶に変える技術力」が、等級6の世界を可能にしています。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。