コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.06.30

コンテナハウスが紡ぐ、新しいグランピングのかたち

1. プロローグ:自然と「遊ぶ」ということ
木々の間を吹き抜ける風の音。夕暮れとともに立ちのぼる焚き火の煙。満天の星空の下、静かに揺れるランタンの光
。グランピングとは、ただの“高級キャンプ”ではない。
日常をしばし離れ、自分と自然の境界がほどけていくような、深く濃い時間を味わう体験である。
そんな体験の舞台装置に、私たちは「コンテナ」を選んできた。しかも、それはただのコンテナではない。
建築用に新造された、“住まうために生まれた箱”だ。
この鉄の器は、無機質なようでいて、実はとても人間的だ。そして、自然のなかにこそ、もっともよく馴染む。

グランピング×コンテナ

この組み合わせが、なぜこれほどまでに親和性が高いのか。その秘密と魅力を、当社の実績を交えて、じっくりお伝えしよう。

なぜコンテナでグランピングなのか?

最初に声を大にして伝えたいのは、私たちが扱っているのは建築用の新造コンテナであるということだ。
よくある海上輸送用の中古コンテナではない。用途も構造も、まるで別物である。
この新造コンテナが、なぜグランピングに最適なのか。

理由は4つある

A.設置性 × 耐候性

コンテナは工場で完成されたユニットとして製造され、トラックで運び、クレーンでポンと設置できる。
しかも、耐風・耐震・耐雪などの構造性能は抜群。
どんな環境でも、安定した空間を提供する。
たとえば当社が手がけた房総半島の某崖地グランピング施設では、鋼製架台の上に4棟のコンテナを雁行配置。
不整形で起伏のある地形を逆手にとり、全室が絶景ビューの「天空の箱」となった。


B.構造の自由度

建築用コンテナは、現代コンテナ建築研究所オリジナルの、柱と壁が別構造の「ラーメン構造」。
つまり、大胆な開口や連結が可能なのだ。
ウッドデッキとの一体設計や、L字配置、2階建てすらも実現できる。
これにより、コンテナでありながらも、「自然と一体になる開放感」を演出できる。
コンテナでグランピング施設がマッチングよく作れるのも構造体の自由度に由来している部分もある。


C.デザイン性の高さ

外装には木や塗装の取り合わせでスタイリッシュに構成できる、内装には布や間接照明。
スチールの無骨さを活かしながら、温かみある空間へと昇華する。
夜になれば、外壁を照らすライティングが、鉄の箱に詩情を与える。


D.工期の短さ・環境負荷の軽さ

工場生産ゆえに現場施工期間は最小限。
資材や職人の搬入も減り、自然環境への負荷も少ない。
“自然と共にある宿泊空間”にとって、この利点は大きい。

自然と調和するデザインとは

コンテナという言葉から、あなたはどんな姿を思い浮かべるだろうか。
四角い、無機質な、鉄の箱?
だが、コンテナはそのままでも、じつは『非常に「詩的な構造体」』だ。
それは、四角いからこそ、どんな風景とも対話ができる。
当社では、自然環境に溶け込むよう、つねに「景観との調和」を重視している。
海に向かってせり出すデッキ、林の中に浮かぶような配置、木々の間を縫うような棟の連なり…。
コンテナ本体の外壁にはウッドパネルや塗装を施し、植栽や灯りで柔らかく輪郭をにじませる。
内装では、アースカラーを基調とし、土と空と光を室内に取り込む。
鉄という硬質な素材を、「森の静けさに溶け込ませる」こと。それが私たちのデザイン哲学だ。

耐候性と安全性──自然のなかだからこそ

グランピング施設は、屋外であるがゆえに、厳しい自然条件のなかで運営される。
風、雨、雪、日射、湿気…。そして時には地震や台風すらも。
その点、建築用新造コンテナは群を抜いて**「守れる空間」**である。
構造計算済みの鋼製躯体は、地震や暴風に強く、しかも腐食にも強い。
壁・床・天井にはしっかりと断熱材が充填され、エアコンや薪ストーブなどで四季を通じて快適に過ごせる。
もちろん、建築基準法に則った設計だから、建築確認や防火対応も万全。
仮設利用も可能で、恒久的な施設としての登録もできる。
「自然の中に置かれる空間」だからこそ、安全であることは、なによりの価値なのだ。

体験価値を高める「空間の個性」

コンテナを単なる「宿泊棟」として捉えるのはもったいない。
それはむしろ、『体験を包む器』である。
私たちは、設計時から「この空間で、どんな時間が流れるか」を想像してプランを練る。
たとえば──
星を眺めるための天窓付きベッドスペース
薪ストーブの炎を囲むラウンジ
2人だけのライブラリールーム
専用ジャグジー付きのバスルーム
外には、コンテナと同じ構法でつくったサウナ棟や共用の焚き火ラウンジ。
敷地全体が「ひとつの物語」となるように配置する。
夜が訪れれば、間接照明が空間に陰影をつくり、
その場でしか味わえない空気感が立ち上がる。
この「体験価値」こそが、コンテナ×グランピングの真骨頂なのだ。



6. ケーススタディ:風景を抱く箱たち
房総エリアで私たちが手がけたある施設では、山あいの段差地に3棟の宿泊棟と1棟の共用棟を配置した。
設計時に重視したのは、すべての棟から朝日が差し込むようにすること。
そのために建物の角度を微調整し、デッキからの眺望も最大化。
共用棟にはミニキッチンやダイニング、そして雨天時のファイヤースペースも確保。
焚き火、読書、語らい、音楽…
「なにもしない」を、思い切り楽しめる空間が完成した。
オープン後の稼働率は高く、リピーターも急増。
運営者からは「手離れも良く、トラブルも少ない」「スタッフ数を最小にできた」と評価をいただいている。

可能性はまだまだ広がる 

コンテナを使ったグランピングは、宿泊だけにとどまらない。
サウナ施設との連動
カフェ&バー棟との複合化
リモートワークブースとしての活用
移動式アート展示室やミニステージも
また、立地も都市近郊・海沿い・山間部・廃校・空き地…と選ばない。
むしろ「開発が難しい場所」こそ、コンテナの真価が発揮される。
さらに、地域創生や遊休地の利活用、企業の福利厚生施設など、活用のフィールドは日々広がっている。

エピローグ:コンテナという「器」が拓く未来

コンテナハウス。
それは一見、閉じ込めるための道具のように見える。
けれど私たちは、こう考えている。
「コンテナとは、解き放つための“器”である」と。
自然の中に置かれたこの箱は、人を包み、人を遊ばせ、
そして人を「ひらいて」くれる。
あなたの敷地に、森のなかに、崖の上に、浜辺に──
小さくて強くて美しい、“新しい風景”を置いてみませんか?



非日常的な「グランピング」と、非日常的ビジュアルのコンテナが、自然の空間にある時
そこに立ち上がるのは、ただの宿泊体験ではない。
それは「記憶の箱庭」とも言うべき、特別な時空の再編成だ。
グランピングがもたらすのは、
日常のルールから一歩外れた、解放された時間の流れ。
そこに、建築用新造コンテナが加わる。
鉄の質感、直線の輪郭、都市的な構造美。
それは本来「自然」と対極にあるはずの造形だ。
だが、だからこそ美しい。
無機と有機が出会ったとき、風景は逆に深みを増す。
それは静かな衝突であり、優しい調和でもある。
木々のざわめきと、コンテナの無言の存在感。
鳥のさえずりと、鋼の壁が反射する朝の光。
焚き火の匂いと、室内に灯るアンバーな照明。
“異質”が混ざることで、空間は詩になる。

私たちは、あえてその異物感を大切にしたい。
自然に溶け込ませるのではなく、自然と「対話」させる。
コンテナがが語りかける
「ここにいていいんだよ」と。
だからこそ、人は安心する。
だからこそ、人はその場所を忘れない。
非日常×非日常×自然=とても人間的な場所。
それが、私たちがつくる「コンテナグランピング」の本質です。




記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。