コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.05.06

コンテナハウスの活用術

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八丈島で、コンテナのカフェをひらくという生き方

島と、鉄と、珈琲と。

八丈島で、コンテナのカフェをひらくという生き方

東京から南へ、およそ290キロ。黒潮に抱かれた火山島、八丈島。そこに一つ、錆びた鉄の箱を置いて、珈琲を淹れる。それは、小さなカフェのはじまりであり、一人の人間の「暮らしを変える」決意のしるし。

「海のそばの、小さな場所があればいい」

たくさんのものはいらなかった。高いビルも、満員電車も、目まぐるしい日々も。ただ、潮の匂いのする風と、朝一番の光と、挽きたての珈琲の香り。それさえあれば、自分はちゃんと、生きていける気がした。コンテナは、そんな思いを受け止めてくれる器だった。20フィートコンテナを手に入れて、八丈島へと運び入れる。台風にも耐えるしっかりとした構造、断熱と開口部の工夫、手をかければ、暮らしと仕事を支える空間になる。

なぜ、カフェなのか?

一杯の珈琲には、不思議な力がある。知らない人と人を、静かに近づける力。都会の喧騒を、ふっと忘れさせてくれる力。そして、島という時間の中に、ちょうどいい間(ま)をつくる力。八丈島の朝に、夜に、雨に、光に。珈琲はよく似合う。それを知っているから、ここにカフェを開こうと思った。

「特別な観光地」ではなく、「ふつうの居場所」として

派手な内装も、凝ったメニューも、いらない。海から帰ってきた地元の人が、ふらりと寄れる。たまたま旅に来た人が、ちょっと立ち止まれる。そんな“静かな第三の場所”を、目指している。店の名前は、たとえば「Shima no Tetsu(島の鉄)」とか。無骨でいて、温かい。

そんな佇まいが、この島にも、自分にも、ちょうどいい。

コンテナのカフェから、世界は見えるか?

狭い場所に腰を落ち着け、島の空と風を感じながら、お湯を沸かし、豆を挽く。その一つひとつが、かけがえのないz間になる。何もかもを所有しなくていい。小さな建物、小さなメニュー、小さな稼ぎ。それでも、この八丈島の風景とともに、暮らしを自分で選び続ける。それがきっと、何より自由な生き方だと思う。

海の向こうに背中を預けて。鉄の箱の中で、今日も一杯、珈琲を淹れる。

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記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。