コンテナハウスコラム
日本における建築基準法上の制約により、「中古の貨物用コンテナ」は建築物として使用できないのが原則です。そのため、今後はすべての記事・構成・文脈において、建築確認が取得可能な“建築用新造コンテナ”のみを前提として内容を整えていきます。
もくじ
はじめに
なぜ“建築用新造コンテナ”しか使えないのか
「コンテナハウス」と聞いて、「貨物コンテナを再利用する安価な建物」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。それは「中古の輸送用コンテナをコンバートしたコンテナハウス」の存在からくるもののようです。ものを大事にする思想、リユースすること自体は素晴らしい事ですが、「安心安全」を基本とする「住まい」などの「建築物」に、どこでどう使われていたのかわからないものを」利用するには少し慎重になったほうがいいのではないでしょうか。また、日本では中古の貨物コンテナをそのまま住宅や事務所に転用することはできません。その理由は、建築基準法に基づく材料規定(JIS材)を満たせないからです。そのため、本稿では「建築確認が取得できる建築用JIS材の新造コンテナ」のみを前提に、コスト面を詳しく解説していきます。
建築用新造コンテナとは、住居や事業所として利用するために設計・製造された専用のコンテナです。以下のような特徴を持っています:
• 建築基準法に準拠した材料と構造方式で設計施工されている(柱・梁・床下地など)
• 高断熱仕様(住宅性能表示対応断熱材等)省エネ基準をもたすための施工基準を持っています。
• 窓・扉・給排水・電気配線などの住宅設備も細かなJIS規定などがあり、その対応が必要になります
• 錆止め+防火・防腐処理などには規定まではありませんが、持つべき性能としての基準を建築用コンテナは持っているのが普通です。
• 建築確認取得可能な基本構造を持っていますので、それを損なわないような全体の設計をして建築確認の取得を行います。
つまり、見た目はコンテナですが、実際には小型モジュール建築の一形態とも言えます。ただ、コンテナ船で運ぶ以上、輸送用コンテナの寸法体系ですし、輸送用コンテナのレギュレーションも守って作られており、間違いなく、「コンテナでもあり」ます。
コンテナハウスの主なコスト構成
建築用新造コンテナによるハウスのコストは、大まかに以下のように分類できます:
区分 | 内容 |
コンテナ本体費用 | 新造ユニットの購入費用(20FEET_150万から250万円) |
内装下地費用・内装仕上げ費用 | 開口部加工・断熱材・内装仕上・設備設置など |
基礎工事費・設置工事費・接続工事費用・設備工事 | 地盤調査・基礎工事・クレーン搬入・電気・給排水設備取付費・インフラへの接続費 |
建築確認申請・実施設計費 | 意匠設計・構造設計・建築確認サポート |
その他(外構・諸費用等) | フェンス、デッキ、申請費用、輸送費など |

ユースケース別・参考コスト例
📍 事務所用(20ftユニット ×1本)
• 新造コンテナ本体:200万円
• 加工+内装下地+内装仕上:120万円
• 設置・基礎・接続:150万円
・電気設備・給排水設備・空調設備:200万円
• 建築確認+設計費:100万円
👉 合計:約770万円(税別)

📍 住宅用(20ft ×2連結/L字型)
• 新造コンテナ本体:400万円(200万円×2)
• 加工+内装下地+内装仕上:200万円
• 設置・基礎・接続:150万円
・電気設備・給排水設備・空調設備:300万円
• 設計・申請費:120万円
👉 合計:約1170万円(税別)

コストを左右する要因
コンテナハウスのコストは、以下のような要素によって大きく変動します:
• 敷地の状況(傾斜地・整地の有無)
• 設置方法(地上据置/基礎埋設)基礎は必ず必要ですが、その方式や必要性によって変化します
• 断熱・防音性能のグレード
• 電気・給排水のインフラ状況
• 外装・内装の仕上げレベル&グレード
• 運搬距離・重機の可搬性
コストダウンのための考え方
「コンテナハウス=安い」と考えがちですが、現実はコンテナは構造体、断熱工事、電気工事、設備工事、住設工事、仕上げ工事など一般件chギクと同じように全ての工事が必要ですから、夢のように安いなどの理由がありません、一般建築と同じようなコストですが、工場生産で躯体ができていることから、躯体価格で多少のアドヴァンテージはある様です。
🔸 事前設計でコストの9割が決まる
→ 設計段階で「仕様の引き算」が最も重要です。「安い」が目標であれば、何もかも徹底的に安いものを選び、省けるものは省く覚悟がなければローコストな建物など出来ません。
🔸 内装に“建築っぽさ”を出しすぎない
→ コンテナらしい素材感を活かせば、コストは抑えられます。コンテナの外壁はそのまま、その部分だけはコンテナが安い部分かもしれません。
🔸 水回りをシンプルにまとめる
→ 複数のユニット間をまたぐ配管はコストがかかります。水回りは1箇所にまとめるは原則です。
🔸 土地選びもコストを決める
→ 整地済の場所なら基礎工事が最小限で済みます。地盤の良し悪しも基礎に響きます。上下「水道の引き込みも給排水設備のコストに大きく響きます。
終わりに:安さだけを追わず、長く安心できる住まいを
ランニングコスト、ライフサイクルコストという視点も忘れてはいけません。
コンテナハウスは、規格性・スピード施工・デザイン自由度などに大きな魅力があります。
しかし、それを最大限に活かすには、「法令に適合した新造コンテナ」を前提とし、設計段階から現実的なコストバランスを考えることが重要です。
“建てて終わり”ではなく、“住んでからの安心”まで見据えたコンテナハウスづくり。
ぜひ本記事を参考に、計画の一助としていただければ幸いです。
