コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.08.19
コンテナで2LDKを極める
コンテナハウスと2LDK | 2LDKを極める(思想編2/3)
第2回思想編
デュアルコアの夢──二心が描く未来型2LDK

もくじ
序章|なぜ“一心”では足りないのか
人はしばしば「シンプルに生きたい」と願う。
けれども現実には、私たちは常に二つ以上の心を抱えている。
庭を持ちながら仕事に打ち込む。
孤独を望みながら人とのつながりを求める。
都市に暮らしつつ自然に惹かれる。
つまり、一心で完結する人生など存在しない。
だからこそ、住まいもまた“一心”では不十分なのだ。
2LDKという間取りは、古くから「二心の器」として存在してきた。
そしてその思想を極限まで磨き上げた姿が──デュアルコア・ハイブリッドである。

第一章|二心の構造──並立する核、調停するLDK
デュアルコア・ハイブリッドは、2つの核(個室)を対等に置き、その間にLDKを据える構造をもつ。
左の核:プライベートな自分
右の核:もう一つの自分、または他者
中央のLDK:二心を調停する場
この構造は「二人のための家」にもなり、「一人と仕事」のための家にもなる。
コンテナ建築で描けば、20フィート×2の核を、40フィートLDKで繋ぐような構図。
二心+媒介=未来の住居装置。
このシンプルな数式こそが、デュアルコアの思想である。


第二章|ダイナミズム──対立と調和の空間哲学
二心は、常に揺れる。
近づきすぎれば摩擦し、離れすぎれば孤独を生む。
その間を行き来するリズムを、家という空間が調律する。
扉を閉めれば、個の時間。
扉を開けば、共の時間。
ダイニングテーブルは対話の場、ソファは沈黙の場。
こうした「揺らぎ」を受け止められるのがデュアルコアだ。
建築は、単なる壁や屋根ではない。
人間の関係性の呼吸をデザインする装置なのだ。

第三章|二心のバリエーション──家族を超えて
かつて二心は「夫婦」や「親子」だった。
だが現代において、二心はもっと多様である。
仕事と生活──テレワーク時代の必然。
都市と自然──二拠点居住のかたち。
私と他者──シェア型ライフスタイル。
二心は固定的なものではない。
むしろ時代やライフステージによって柔軟に組み替え可能な関係性だ。
ここでコンテナ建築のモジュール性が光る。
ユニットを付け足し、切り離し、入れ替えられるからこそ、二心は常にアップデート可能なのだ。
第四章|コンテナ建築が可能にする自在性
コンテナは、そもそも「輸送と連結」のために作られた箱である。
その規格性と強靭さは、二心建築を描くのに最適だ。
並列に置けば「二心+LDK」の基礎形態。
ズラせば「二心+回廊」の変奏。
重ねれば「二心+中庭」という立体的関係。
つまりコンテナは、二心を自在にモデリングできるレゴブロックなのだ。
そして「箱」という制約が逆に、思想を鮮やかに可視化する。
鉄の壁が境界を明確にし、開口や連結が調和を演出する。
この“強さと自由さの両立”こそ、コンテナ建築の真骨頂である。

第五章|未来像のプロトタイプ
思想を形にするには、いくつかのプロトタイプが考えられる。
デュアルコア+直線回廊:二心を一直線に結ぶシンプルな型。
デュアルコア+中庭:二心の間に自然を介在させ、調停役とする型。
デュアルコア+ズレ配置:視線をずらすことで“緊張と余白”を生む型。
これらはすべて、思想を異なるアングルで翻訳したものだ。
いずれも「二心が対等であること」を共通の原理としている。

第六章|海外事例と未来都市構想
海外でも、デュアルコア的思想を持った建築が芽吹いている。
北欧のデュアルハウス:二つの核を透明なガラスLDKで結ぶ。
カリフォルニアのモジュラーハウス:ワークユニットとリビングユニットを並置。
アジアのシェアユニット:個の核と共の核をバランスする集合住宅。
これらはすべて、「二心で暮らす」という新しい生活哲学の表現だ。
将来的には、都市そのものが「デュアルコア」化するかもしれない。
都市核と自然核、デジタル核とアナログ核──それらを媒介する“LDK=公共空間”。
都市もまた、巨大な2LDKになるのだ。

結章|“分断”ではなく“双心”という生き方へ
デュアルコアは、分断の思想ではない。
それは二つの核を対等に並べ、揺らぎながら調和させる哲学だ。
二心を否定せず、むしろ抱え込む。
その上で媒介を設け、共に進む。
これが、これからの住まいの思想であり、未来のライフスタイルの根本原理である。
──デュアルコアの夢。
それは、分断ではなく双心という生き方の宣言である。
(→ 次回予告:第3回「水平の思想──LAYDOWNが開くプロポーション転換の倫理」へ)

🔧 実践編への思想スケッチ(抽象図解イメージ)
デュアルコア直線型
- 二つのコンテナ(個室)を左右に置き、中央にLDKユニットを橋渡し。
- シンプルかつ象徴的。
デュアルコア+中庭型
- 二つの核の間に“空”を設け、庭やテラスをLDK的媒介にする。
- 「自然が第三の核」として機能する。
デュアルコアずらし型
- 二つの核を前後にズラし、中央LDKを斜めの回廊にする。
- 視線や動線に“遊び”をつくり、緊張と余白を生む。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。