コンテナハウスコラム

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更新日:2026.09.04

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ワンちゃんのコンテナトリミングサロンをつくる時、何を考えるべきか?小さな店舗設計の12ポイント

コンテナハウスでトリミングサロンを作る

かわいいだけでは、良いトリミングサロンにはなりません。犬の安全、トリマーの動線、給排水、換気、電気、防音まで、小さな店舗だからこそ考えたい設計のポイントをコンテナ建築の視点から解説します。


ワンちゃんのトリミングサロンをつくる時、何を考えるべきか?小さな店舗設計の12ポイント

ワンちゃんのトリミングサロンをつくる。そう聞くと、最初に考えるのは「かわいい外観」「おしゃれな内装」「犬の足跡のサイン」だったりします。

もちろん、それも大切です。

でも、トリミングサロンは、ただ「かわいい店」をつくればいい建築ではありません。

実際に設計していくと重要なのは、水、排水、毛、湿気、臭い、熱、音、電気、犬の安全、そして働くトリマーさんの身体です。

つまり、トリミングサロンという建築は、小さいけれど、なかなか設備密度の高い建築なのです。

結論から言えば、良いトリミングサロンとは、「預かる → 洗う → 乾かす → カットする → お返しする」という一連の仕事が、できるだけ短い動線で流れる店です。

特にシャンプー台1台、1日5〜6頭程度を扱う小規模なサロンなら、大きな店舗をつくる必要はありません。PLANをきちんと整理すれば、20FTクラスのコンテナ建築でも成立する可能性があります。

小さいことは弱点ではありません。

無駄がないことは、むしろ強い。

ここでは、コンテナ建築を含めた「小さなトリミングサロン」を考える時に、私たちが特に重要だと考えているポイントを整理してみます。

1.まず考えるべきは「犬の動線」

トリミングサロンのPLANで最初に考えたいのは、人間の動線だけではありません。

主役はワンちゃんです。

入口から入り、飼い主さんから預かり、待機し、シャンプーをして、乾かし、トリミングをして、再び飼い主さんへお返しする。

この流れをなるべく交差させない。

たとえば、トリミングが終わった犬と、これからシャンプーする犬が同じ狭い場所で何頭も一緒になるPLANは避けたいものです。

「犬の動線」と「トリマーさんの作業動線」を重ねながら考える。

ここがPLANの出発点です。

2.ワンちゃんの逃走防止は最重要事項

トリミングサロンで絶対に起こしてはいけないことのひとつが、犬の飛び出しです。

入口のドアを開けたら、そのまま道路まで一直線。

これは怖い。

できれば入口には二重扉、前室、ゲートなどを設け、一枚の扉が開いても直接外へ飛び出せない構成にします。

デッキを設ける場合にも、単なる「おしゃれなウッドデッキ」ではなく、フェンスやゲートまで含めて犬の安全を考える。

デザインより先に、安全。

これは譲れません。

3.シャンプー台は「犬」だけでなく「人間の腰」で決める

ドッグバスを選ぶ時、多くの人は「大型犬が入れるか」という寸法を気にします。

もちろん重要です。

しかし、もうひとつ非常に重要なのが「トリマーさんの腰」です。

一日に何頭もの犬をシャンプーする仕事では、中腰の姿勢が積み重なります。

シャンプー台の高さ、奥行き、犬を持ち上げる高さ、シャワーの位置、シャンプー類の収納位置。

数センチの違いが、毎日の仕事では大きな違いになります。

良い店舗設計は、建物を格好よくするだけではありません。

そこで働く人の身体を守ることも、建築の仕事です。

4.給水・給湯・排水は住宅感覚で考えない

トリミングサロンでは、水をかなり使います。

シャンプー台、掃除、タオルの洗濯など、水仕事が連続します。

そのため、給水管の径、水圧、給湯器の能力、排水管径、勾配などを、単純な住宅設備の感覚だけで決めないことが重要です。

特に寒い季節に連続して何頭もシャンプーする場合、途中でお湯の能力が足りなくなるようでは仕事になりません。

「一日に何頭洗うのか」「大型犬を扱うのか」「洗濯乾燥機を何回使うのか」。

店舗の営業方法から逆算して設備を決めます。

5.犬の毛を排水管へ流さない

これはトリミングサロン設計では非常に重要です。

犬を洗えば、当然かなりの毛が出ます。

その毛をそのまま排水管へ流してはいけません。

シャンプー台の排水には、毛をできるだけ手前で捕まえるヘアキャッチャーやストレーナーを設け、清掃しやすい構造にしておく必要があります。

大事なのは「詰まらない設備」だけではありません。

「毎日簡単に掃除できる設備」であることです。

下水道ではなく浄化槽を利用する計画なら、なおさら排水の取り扱いについて事前に設備業者や行政と確認しておくべきです。

犬の毛は、建築図面には細い線一本でしか描かれません。

でも、営業が始まるとものすごく現実的な問題になります。

6.床は「かわいい」より「滑らない・染み込まない・掃除できる」

トリミングサロンの床には、水が落ちます。

毛が落ちます。

犬がおしっこをしてしまうこともあります。

だから床材には、耐水性、防滑性、清掃性が必要です。

濡れた状態で犬も人も滑りにくいこと。

汚れや臭いが染み込みにくいこと。

毎日モップや消毒清掃ができること。

住宅用のフローリングをそのまま使うよりも、店舗用途に合った長尺シート、防滑性のある床材、タイル等を選定した方が管理しやすくなります。

そして床と壁の取り合いも重要です。

毛や汚れが溜まる細かい段差や隙間をできるだけ減らす。

トリミングサロンでは、「掃除しやすい」ということ自体が立派なデザインです。

7.換気はかなり重要

小さなトリミングサロンほど、換気計画は重要です。

シャンプーによる湿気。

濡れた犬。

ドライヤーの熱。

犬特有の臭い。

濡れたタオル。

これらが小さな空間の中に一気に発生します。

家庭用の小さな換気扇を一台付けただけでは、十分とは限りません。

給気と排気を考え、湿気と熱気が効率よく抜ける位置に換気設備を配置します。

冷暖房についても、単純に床面積だけで能力を決めるのではなく、ドライヤーなどから発生する熱を考える必要があります。

犬は人間と同じ条件で快適とは限りません。

空気を設計する。

これもトリミングサロンでは重要な建築設計です。

8.電気容量を甘く見ない

トリミングサロンは、小さいから電気も少なくて済む。

これは間違いです。

ドライヤー、スタンドドライヤー、エアコン、給湯設備、洗濯機、乾燥機、照明、クリッパーなどを同時に使用します。

特にドライヤーと乾燥機、エアコンなどが重なる時間帯には、かなりの電気を使用する場合があります。

必要な回路を分け、専用回路を設ける設備についても計画段階で検討する。

コンセントについても、単に数を増やせばいいわけではありません。

水がかかりにくい場所。

犬がコードに触れにくい場所。

トリマーさんがコードを引き回さずに使える場所。

図面上の小さなコンセントマークひとつにも、理由が必要です。

9.鳴き声とドライヤー音を考える

犬は鳴きます。

ドライヤーもかなり大きな音が出ます。

店舗が住宅地にある場合、音の問題は営業時間や近隣関係にも影響します。

外壁、間仕切り壁、天井、窓、入口ドア。

どこから音が外へ抜けるのかを考える必要があります。

特に開口部は音が漏れやすい部分です。

全面ガラスのおしゃれな店も魅力的ですが、防音とのバランスを考えなければなりません。

「見せる店」と「音を閉じ込める店」。

両方を成立させることが設計です。

10.収納は想像しているより必要

トリミングサロンには細かな道具がたくさんあります。

シャンプー、トリートメント、タオル、替刃、ブラシ、消毒用品、清掃用品、リード、ドライヤー用品。

さらに、使用前の清潔なものと、使用済みのものを分けたい。

床面積が小さいからといって収納を削ってしまうと、営業が始まった途端、店中に物があふれます。

そこで重要なのが「壁を使う」ことです。

吊戸棚、壁面収納、シャンプー台下収納、トリミングテーブル周辺収納など、立体的に考える。

小さな建築は、床面積だけで考えない。

高さ方向まで含めて設計します。

11.飼い主さんの待合スペースは本当に店内に必要か?

小さな店舗を設計すると、必ず出てくるのが「待合室をどこにつくるか」という話です。

でも、本当に大きな待合室が必要でしょうか。

一日に5〜6頭程度の予約制サロンなら、巨大な受付も待合室も必要ない場合があります。

たとえば建物の外側にデッキをつくり、椅子と小さなテーブルを置く。

季節のいい日は、飼い主さんがそこでコーヒーを飲みながら愛犬を待つ。

そんな場所の方が、小さな室内に無理やり待合スペースを押し込むより魅力的かもしれません。

建築面積を増やす前に、「この部屋、本当に必要?」と一度考えてみる。

小さな建築では、とても大切な発想です。

12.廊下をつくらない。無駄な面積をつくらない

私たちは小さな建築を設計する時、できるだけ「移動するためだけの空間」を減らします。

その代表が廊下です。

トリミングサロンも同じです。

「預かる → 洗う → 乾かす → カットする → お返しする」

この仕事の流れそのものをPLANにする。

移動距離が短くなれば、店舗面積を小さくできるだけでなく、毎日の作業時間も減ります。

一日に何十回、何百回と繰り返す動作だからこそ、50cm、1mの違いが効いてきます。

私は、こういうPLANが好きです。

建築の形から考えるのではなく、そこで起こる「行為」から建築をつくっていく。

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20FTコンテナでトリミングサロンはつくれるのか?

これはよく聞かれる質問です。

結論から言えば、条件が整理できれば十分検討できます。

たとえば、

・トリマー1人を中心に営業
・シャンプー台1台
・トリミングテーブル1台
・予約制
・1日5〜6頭程度
・大きな店内待合室を設けない

といった小規模サロンなら、20FTクラスのコンテナを使ったPLANはかなり面白い選択肢になります。

もちろん、必要な設備、犬の待機場所、扱う犬種や頭数、地域の行政基準、建築条件などによって必要面積は変わります。

ですから「20FTなら必ずできます」という意味ではありません。

ただ、小さな店だからこそ、コンテナというモジュール建築との相性がいい。

構造体を明確にし、その中に設備と作業動線を凝縮する。

これはコンテナ建築が得意とする考え方です。

小さなことは、弱点じゃない

大きな店舗をつくれば、設計は簡単になることがあります。

スペースが余っているからです。

でも、小さな建築ではそうはいきません。

シャンプー台を100mm動かしたら、トリミングテーブルとの距離が変わる。

ドアの開き方向を変えたら、犬の動線が変わる。

収納を300mm増やしたら、通路が狭くなる。

一つひとつの寸法に意味が出てきます。

だから、小さな建築ほど設計者の腕が出る。

ワンちゃんのための小さな店。

その小さな箱の中には、水、空気、光、音、温度、安全、動線、働きやすさ、そして飼い主さんの安心まで詰め込まれています。

コンテナでつくるトリミングサロン。

これ、なかなか面白い建築です。

小さいことは弱点じゃない。

無駄がないことは、むしろ強い。

そして、小さな箱の中に大きな思想を入れる。

それこそ、コンテナ建築の得意技なのです。

トリミングサロン設計のQ&A

Q1.20FTコンテナ1台でもトリミングサロンはできますか?

シャンプー台1台、トリミングテーブル1台、少人数・予約制の小規模営業であれば十分検討可能です。ただし、犬の待機スペース、設備、収納、扱う頭数、地域の建築・営業上の条件などを確認してPLANする必要があります。

Q2.トリミングサロンで一番重要な設備は何ですか?

給排水、給湯、換気、電気設備が特に重要です。中でもシャンプー排水に流れる犬の毛への対策は、営業開始後の維持管理に大きく影響します。

Q3.犬の毛はそのまま排水へ流していいですか?

できるだけ排水管へ流さない設計にします。シャンプー台付近で毛を捕集できるヘアキャッチャーやストレーナーを設置し、日常的に清掃できる構造にすることが重要です。

Q4.トリミングサロンの床材は何がいいですか?

耐水性、防滑性、耐久性、清掃性を重視します。水に濡れた状態でも犬と人が滑りにくく、毛や汚れを簡単に清掃できる床材が適しています。

Q5.待合室は必ず必要ですか?

営業形態によります。完全予約制の小規模サロンなら、大きな待合室を設けず、受付スペースをコンパクトにしたり、屋外デッキを飼い主さんの待機スペースとして活用したりする方法も考えられます。

Q6.トリミングサロンでは換気が重要ですか?

非常に重要です。シャンプーによる湿気、ドライヤーの熱、犬や濡れたタオルなどの臭いが発生するため、給気と排気のバランスを考えた換気計画が必要です。

Q7.トリミングサロンの電気容量で注意することは?

ドライヤー、エアコン、洗濯乾燥機、給湯設備などを同時に使用する可能性があります。店舗面積が小さくても電気使用量は小さいとは限らないため、使用機器をリストアップして設備設計を行います。

Q8.大型犬にも対応できますか?

対応できますが、入口や通路の幅、ドッグバスのサイズ、犬を持ち上げる方法、待機スペースなどを大型犬前提で計画する必要があります。

Q9.浄化槽のある建物でもトリミングサロンはできますか?

計画自体は検討できますが、既存浄化槽の能力、店舗で発生する排水量、シャンプー排水の処理方法などの確認が重要です。出店前に設備業者や所管行政と協議することをおすすめします。

Q10.トリミングサロンを計画する時、最初に何を決めればいいですか?

「一日に何頭扱うか」「スタッフは何人か」「大型犬を扱うか」「シャンプー台は何台か」「飼い主さんは店内で待つのか」を最初に決めます。この5項目が決まると、必要な面積と設備がおおよそ見えてきます。

トリミングサロンをつくる前のチェックリスト

□ 1日の想定トリミング頭数
□ スタッフ人数
□ シャンプー台の台数
□ 大型犬対応の有無
□ 犬の待機場所
□ 逃走防止用の二重扉・ゲート
□ 給水・給湯能力
□ 排水管・ヘアキャッチャー
□ 換気設備
□ エアコン能力
□ ドライヤー等を含む電気容量
□ 洗濯・乾燥設備
□ 防滑・防水性のある床
□ 防音対策
□ タオル・シャンプー等の収納
□ 飼い主さんの待機場所
□ 駐車スペース
□ 動物取扱業等の営業要件の確認
□ 建築・用途上の条件確認
□ 下水道または浄化槽の確認

この20項目を最初に整理しておけば、トリミングサロンのPLANはかなり具体的になります。

建物を先につくるのではありません。

「どう働くか」を決めて、その仕事にぴったりの建築をつくる。

それが、小さなトリミングサロンを成功させる一番のポイントだと考えています。

執筆:株式会社IMCA/現代コンテナ建築研究所

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。