コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.12.05
08_用途別・住宅宿泊店舗等
コンテナでガレージハウスを作る|レイダウンコンテナとハイブリッド工法で“ちょうどいい”寸法を手に入れる
もくじ
「コンテナ=ガレージに良さそう」の落とし穴
コンテナとガレージ。イメージだけで言えば、相性はかなりいい組み合わせです。
無骨なスチールの質感、シンプルな箱形のプロポーション、耐久性の高い外皮
車やバイクが好きな人なら一度は「コンテナでガレージ作れないかな?」と妄想したことがあるはずです。
ところが、ここに『大きな「寸法の落とし穴」』があります。
一般的なコンテナ(20FEET)の内寸幅はおおよそ2,300mm台。断熱を入れると2100mm台になります。
入口は「柱」があるので2070mm程度。
「数字だけ見ればクルマ1台なら入るでしょ?」と思うのですが、
車幅:1,800〜1,900mmクラス
ドアを開けるスペース:片側で最低300〜400mmは欲しい
となると、「クルマは入るけれど、人間がまともに乗り降りできない」**という、ガレージとしては致命的に窮屈な空間になってしまいます。
ガレージは「入ればいい箱」ではなく、
「人が気持ちよく付き合える余白のある箱」であるべきです。
そこをきちんと解決するために登場するのが、
レイダウンコンテナとハイブリッド工法という考え方です。

レイダウンコンテナとは?「幅」を生み出す横倒しプロポーション
レイダウンコンテナとは、簡単に言えば
ハイキューブコンテナを横倒しにしたプロポーションでつくる建築用コンテナです。
IMCA_現代コンテナ建築研究所が考え出した究極のワザなのです。運ぶ時は普通のプロポーションで、設置するときに「横倒し」にします。構造的には横倒しした時に「正しい構造体」になるよう設計してある「建築用コンテナ」なのです。
通常のコンテナは
幅:約2,400mm前後
高さ:約2,900mm(ハイキューブ)
という寸法ですが、レイダウンにするとこの「高さ」が「幅」側に回ってきます。
外寸幅:約2,896mm
内寸幅:約2,700mm前後
この2,700mmという内寸幅がガレージとして非常においしい。一般車1台(〜1,900mmクラス)を入れても片側または両側にしっかりドアを開ける余裕が生まれちょっとした棚やタイヤラックをつくるスペースまで確保できる「コンテナだけど、普通の“車好きのガレージ”としてちゃんと機能する」。
そのための最低限の幅が、レイダウンコンテナで手に入ります。
もちろんここで使うのは、
海上輸送コンテナの中古改造ではなく、建築用に設計された新造コンテナ。
構造・防錆・断熱・開口まわりのディテールまで、最初から「建築」として考えられている前提で計画します

もっとワイドに、2台用に──ハイブリッド工法の出番
「コンパクトでもいいから1台ちゃんと入ればいい」というニーズならレイダウンコンテナ1台で十分成立します。一方で、2台並列で止めたい。1台+作業スペースをゆったり取りたい。将来的にもう1台増車する可能性がある。といった場合には、ハイブリッド工法というこれまたIMCA_現代コンテナ建築研究所オリジナルの工法が効いてきます。
ここでのハイブリッド工法とは、コンテナを2本使い、そのあいだの空間を構造的にブリッジして「大きなガレージ空間」をつくる方法です。
レイダウンコンテナも含め、
2本のコンテナの間にスパンを飛ばすことで、
間の有効幅:最大で約5,900mm程度まで確保可能。
車2台並列、もしくは1台+広めのワークベイが現実的に取れるという、「普通の木造ガレージでは少し大掛かりになるスパン」を、コンテナ+鉄骨ハイブリッドでスマートに作ることができます。
この構成にすることで、片側はガレージ、もう片側は収納や小さな趣味室、ガレージ上部をデッキやテラスにするといったもう一段上のクラスの「ガレージハウス」的な展開にもつなげやすくなります。

プラン例のイメージ
レイダウンコンテナ1台のシングルガレージプラン
内寸幅:約2,700mm
奥行き:20FEET相当なら5.6m前後
手前側:電動シャッター
奥側:勝手口+工具・タイヤ棚
ハイブリッド工法による2台用ワイドガレージ
コンテナ2本+中間スパン約5,900mm
中央部:2台並列ガレージ
片側コンテナ:収納+ワークスペース
もう片側コンテナ:将来の小部屋や書斎にも転用可能
ガレージハウス型プラン
1階:ハイブリッド2台ガレージ+土間ラウンジ
2階:住居ボリューム(コンテナ+鉄骨)
ガレージとリビングが視覚的につながる「見せるガレージ」構成

ガレージハウスとして押さえるべきポイント
コンテナでガレージハウスを作るとき、
デザインの前にきちんと押さえておきたいのが、次のあたりです。
建築確認・用途地域
「ただの箱」ではなく建築物扱いになるため、原則として建築確認が必要
用途地域によってはガレージや自動車車庫の取り扱いに制限あり
防火・耐火・隣地境界との離れ
防火地域・準防火地域では仕様が厳しくなる
隣地境界との距離や開口部の扱いにも注意
断熱・結露・換気
鉄の箱ゆえ、断熱・気密・換気を整理しないと夏も冬も厳しいですが、もちろんそんなことは解決手段あり
ガレージハウスにする場合は、居室側との温熱計画をセットで検討、排気ガスが出る車なら換気計画もね
動線計画(車の出入り+人の出入り)
前面道路の幅・勾配
車の回転半径
玄関とガレージのつながり
メンテナンス(錆対策・塗装・シャッター)
塩害エリアでは特に仕様選定が重要ですがこれも解決策は十分準備しています
シャッターのサイズ・電動化も早めに決めておく
このあたりを最初のプラン段階から折り込み済みにしておくと、
「かっこいいけど使いにくい」ガレージハウスにならずに済みます。
鉄とクルマと暮らしが混ざる場所としての“ガレージハウス”
最後に、少しだけ情緒の話を。
レイダウンコンテナで幅を確保し、ハイブリッド工法でスパンを飛ばすと、ガレージはただの「駐車場」から、少しずつ表情を変えはじめます。
雨の日にエンジン音を聞きながらコーヒーを飲む場所、休日に工具と向き合う集中スペース
子どもが自転車をいじりはじめる原体験の場所
鉄の箱なのに、
そこに集まる時間はやわらかく、人間くさい。
「コンテナでガレージハウスを作る」とは、単に箱の中にクルマをしまう話ではなく、
“クルマやバイクと一緒に暮らす”ための、ちょうどいい器をつくることなのだと思います。
レイダウンコンテナとハイブリッド工法。
この2つの技術をうまく使えば、
その器をかなり自由にデザインできるようになります。
あとは、そこにどんな時間を流したいか。
それを一緒にプランに落としていくのが、コンテナガレージハウスづくりのいちばん楽しいところです。


ガレージ・ガレージハウス_Q&A 10選
Q1. 普通の20FEETコンテナをそのままガレージにしても大丈夫ですか?
A. 物理的には「車1台は入る」寸法ですが、乗り降りの余裕がほとんどありません。
内寸幅が2,300mm台のため、車幅1,800〜1,900mmクラスだと、ドアを開けるスペースがほとんどなくなります。ガレージとして快適に使うなら、レイダウンコンテナなどで内寸2,700mm前後を確保することをおすすめします。
Q2. レイダウンコンテナって、強度的に問題ありませんか?
A. レイダウンコンテナは、建築用に新造したコンテナを前提に、構造計算とディテール設計を行っているので問題ありません。
単に海上コンテナを横倒しにするのではなく、
ラーメンフレーム
補強梁
基礎との取り合い
などをきちんと横倒し用に設計することで、ガレージ+小規模建築として十分な安全性を確保できます。
Q3. 2台用のコンテナガレージを作る場合、どれくらいの幅が必要ですか?
A. 車種にもよりますが、
コンパクトカー2台並列:5,000〜5,500mm程度が最低ライン
余裕を持った2台分+動線:5,900mm前後あると安心です。
ハイブリッド工法でコンテナ2本のあいだを約5,900mm程度確保すれば、
「2台+人の動線」が現実的に成立するプランを取りやすくなります。
Q4. コンテナガレージにも建築確認申請は必要ですか?
A. はい。都市計画区域内なら必要と考えてください。
コンテナの固定設置&利用は、法律上普通に「建築物」とみなされます。
ガレージハウスとして人が出入りする計画であれば確実です
用途地域・防火規制・構造区分などを踏まえたうえで、建築確認申請を行う必要があります。
Q5. ガレージ部分にも断熱は必要でしょうか?
A. 「車庫だけ」と割り切るなら最低限でも運用は可能ですが、
工具作業をする
趣味部屋としても使う
ガレージ上部や隣接部分が居室になる
といった場合は、断熱・気密・換気まで含めた温熱計画をおすすめします。
特にコンテナは鉄の箱なので、夏の温度上昇・冬の結露への対策を無視するのは危険です。
Q6. コンテナガレージの結露対策はどうすればいいですか?
A. 主なポイントは以下の3つです。
断熱材の選定と施工(吹付ウレタンなど)
気密ラインの整理(スキマ風と冷気の入り方をコントロール)
換気計画(自然換気+必要に応じて機械換気)
「ガレージだから適当でいい」ではなく、
鉄×湿気×車両という条件を前提に、計画段階からセットで考えることが大切です。
Q7. 塩害エリア(海沿い)でもコンテナガレージは大丈夫ですか?
A. 可能ですが、仕様とメンテナンス前提が変わります。
防錆仕様の塗装や、構造材の「溶融亜鉛メッキ」、画期的な強靭な塗装もあります
細部のディテール(雨仕舞・水切り)
定期的な点検・再塗装
を前提に計画する必要があります。
海沿いのガレージは最高のロケーションですが、そのぶん錆との付き合い方を最初から織り込んでおくのがプロの設計です。
Q8. コンテナガレージハウスのコストは、普通の木造より安いですか?
A. 「必ず安くなる」とは言えません。
構造や仕様によっては、むしろ同等〜やや高くなるケースもあります。
しかし、工場制作による品質の安定、増設や転用のしやすさ、意匠性(“箱らしさ”を活かしたデザイン)
といったメリットがあり、コストだけでは語れない価値があるのがコンテナガレージハウスの特徴です。
Q9. 住居とガレージを一体化した「ガレージハウス」はコンテナでも可能ですか?
A. 可能です。
レイダウンコンテナやハイブリッド工法をベースに、
1階:ガレージ+土間ラウンジ
2階:コンテナ住居ボリューム
といった構成を取ることで、車と暮らしが視覚的にも心理的にもつながるガレージハウスを実現できます。
タイニーハウス系であれば平屋での計画も十分成り立ちます。
クルマと過ごすリビングなども常識を外れた楽しい計画も可能です。
ただし、構造・防火・音・振動など検討項目は増えるため、早めの段階で設計者と相談するのが得策です。
Q10. プラン相談や見積もりは、どのタイミングでお願いすればいいですか?
A. 「クルマ何台で、だいたいこのくらいの敷地」というイメージが固まった時点で、
かなり早めに相談いただくのがベストです。
車種・台数
敷地の形・前面道路の状況
住居との関係(将来計画も含めて)
を聞かせていただければ、
レイダウンコンテナ・ハイブリッド工法を含めた現実的なプラン案をいくつか提示できます。

記事の監修者
大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。
