コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.12.04

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2拠点生活

スモールハウス/タイニーハウス/コンテナハウス/建築費1.5倍時代に「小さめの家」が選ばれる理由


建築費1.5倍の時代に、「小さめの家」が主役になりつつある
ここ5年ほどで、建築費は体感で約1.5倍になりました。以前なら2,000万円で建てられていた家が、今は3,000万円。3,000万円ゾーンだったものが、あっさり4,500万円クラスに跳ね上がる。
一方で、私たちの所得はそこまで伸びていない。
30年ローンを組んで「一生かけてひとつの家を守り続ける」モデルに、うっすら違和感を覚えている人も多いはずです。そこへ追い打ちをかけるように、リモートワークの普及がやってきました。毎日オフィスに通わなくてよくなった。週に数日だけ都心に行けばいい仕事が増えた。都会の真ん中で暮らさなくても成立する働き方が出てきた。
その結果として、
都会離れ
地方移住
2拠点生活・多拠点生活
といったキーワードが、現実的な選択肢としてテーブルに乗るようになりました。そんな中で静かに存在感を増しているのが、スモールハウス/タイニーハウス/コンテナハウス/小屋といった、「小さめの家」のカテゴリーです。

スモールハウス・タイニーハウス・コンテナハウス・小屋をざっくり整理する

まずは用語の整理からいきましょう。
実務的にはかなりオーバーラップしますが、イメージとしてはこんな感じです。
1-1. スモールハウス
ざっくり 延床 50〜70㎡ 前後
一般的な戸建てよりひとまわり小さい「小さめの家」
きちんとした住宅性能を持ちながら、コンパクトにまとめた家
「家族3人が無理なく暮らせるミニマムサイズの家」
といったイメージが近いです。
1-2. タイニーハウス(Tiny House)
もっと攻めたコンパクトさ
10〜30㎡クラスが多い
トレーラータイプ・車輪付きのものも含まれる
「思い切ったミニマルライフ」や
「週末用の小さな基地」として語られることが多いジャンルです。
1-3. コンテナハウス
20FT/40FTコンテナなど、モジュール化された箱を組み合わせる家
延床の大小にかかわらず、「コンテナを使っているかどうか」で定義される
スモールハウス/タイニーハウスの“構造形式のひとつ”という捉え方もできる
特に20FT〜40FTクラス×1〜3台+デッキのような構成は、
タイニーハウス的な思想と非常に相性が良いサイズ帯です。
1-4. 小屋(小屋的な建築)
いわゆる「小屋」は、用途やサイズがかなり幅広い
DIYでつくる趣味の小屋から、本気のセカンドハウスまで
延床面積というより、「気配」としての“小屋感”で語られることが多い
「常に住む“家”」というより、「必要なときに行きたくなる場所」
としての性格が強いのが、小屋の面白さです。

2|なぜ今、「小さめの家」が喜ばれているのか

2-1. 建築費1.5倍で、「フルサイズの家」が重たくなった
建築費が1.5倍になると、ローンも、固定資産税も、維持費も、すべて“ひと回り重く”なります。
「本当にそこまでのサイズが必要?」
「子どもが独立したあと、その家はどう使う?」
「そもそも30年以上、同じ場所に縛られ続けたい?」
こういった問いが、だんだん現実味を帯びてきました。
結果として、「最初から身の丈に合ったサイズで、でも構造と性能はしっかりした“スモールハウス”でいいのでは?」という選択肢が、かなり合理的になってきたわけです。


2-2. リモートワークが「住まいの重心」をゆるめた
毎日オフィスに通う前提だと、住まいの候補は「通勤時間○分圏内」でほとんど決まってしまいます。
リモートワークが普及すると、この制約が一気に緩みます。
「平日は郊外〜地方のスモールハウス」
「必要なときだけ都心へ」
「月に数日は別拠点のタイニーハウスや小屋で仕事をする」
といった、『“住む場所と働く場所をずらす生活”』が成立し始めているのです。


2-3. 2拠点生活・多拠点生活の“ハブ”としての小さな家
2拠点・多拠点生活の現実的な課題は、やはりコストです。
2軒も3軒もフルサイズの家を持つのは現実的ではない、しかし「小さな拠点」を散りばめるなら話は変わるそこで登場するのが、
スモールハウス(メイン拠点)
タイニーハウス/コンテナハウス/小屋(サブ拠点)
という組み合わせです。
『「しっかりした家+いくつかの小さな基地」』という構成は、これからの時代の住まい方として、とてもバランスが取れています。


3|小さな家のメリット
ざっくり挙げると、こんなメリットがあります。
建築費を抑えやすい
総面積が小さいので、構造や仕上げに良いものを選びやすい
ランニングコストが軽い
光熱費・メンテナンス費・税金など、すべて“小さく”できる
掃除・片付け・維持管理が楽
放っておいて荒れ果てる…というリスクが減る
「どこに何を置くか」が自然に厳選される
持ち物の整理・ライフスタイルの見直しが進む
2拠点・多拠点との相性が良い
小さな拠点を増やす方が、心理的にも経済的にも現実的
土地の選択肢が広がる
変形地・小さな土地・斜面など、「普通の家が建てづらい土地」を活かしやすい
「基地」や「店」としての濃度を上げられる
小さなカフェ、サロン、アトリエ、スタートハウスなどにぴったり

小さな家の注意点・落とし穴 

もちろん、小さければ何でもハッピー、というわけではありません。
収納不足で結局外部倉庫を借りるハメになる
将来の家族構成の変化を見越していないと手狭になる
ミニマルに振り切りすぎて、ゲストや親族を招けない
建築コストを削りすぎて「安かろう悪かろう」になる
などなど、「小さいがゆえの失敗」も存在します。
“本当に必要な広さはどのくらいか?”
ここを最初にじっくり考えることが、小さな家づくりの一番のポイントです。

5|コンテナハウスは、この群像のどこに立っているのか 

スモールハウス/タイニーハウス/小屋の中で、
コンテナハウスは少し特別な立ち位置にいます。
モジュール寸法がはっきりしている(20FT/40FTなど)
構造が明快(鉄骨フレーム+鋼板)
工場制作→現場組み立てに向いている
「建築用新造コンテナ」を使えば、建築基準法対応の構造体になる
つまりコンテナハウスは、
「小さな家」ブームの中で、
『“モジュール化された、小さな鉄骨建築”』として位置付けられる存在と言えます。
特に、海辺の2拠点目
ゴルフ場やキャンプ場のコテージ/カフェ
都会から少し離れたアトリエ/書斎小屋
のような場面では、コンテナハウスの“小さくて濃い基地”感が非常に強い武器になります。

これからの住まいは「一生に一度の大きな家」から「フェーズに合わせた小さな器」へ

「人生で一度、35坪の家を建てて、あとはローンとともに一生を過ごす」。
昭和〜平成の“標準コース”は、建築費1.5倍の今、だんだん現実味を失いつつあります。
代わりに立ち上がってきているのが、今の自分の暮らし方に合ったスモールハウス
趣味や仕事に振り切ったタイニーハウスや小屋、インダストリアルな構造美を持つコンテナハウス
を柔軟に組み合わせて、フェーズごとに住まいの形を選んでいく生き方です。
「家」は、
一度きりの巨大プロジェクトから、
もっと*『軽やかにアップデートしていける「器」』へ。
スモールハウス/タイニーハウス/コンテナハウス/小屋は、その時代の変化にぴったり重なっているカテゴリーだと感じています。

スモールハウス/タイニーハウス/コンテナハウス/小屋に関するQ&A10選


Q1. スモールハウスとタイニーハウスの違いは何ですか?
A.
厳密な定義はありませんが、実務上はざっくりと、
スモールハウス:延床約50〜70㎡クラスの「小さめの家」
タイニーハウス:延床約10〜30㎡クラスの、かなり攻めた小ささの家
とイメージするとわかりやすいです。
どちらも「コンパクトな家」ですが、タイニーハウスの方がよりミニマルで、“第二の拠点”や“趣味の基地”寄りの意味合いが強くなります。


Q2. 小さな家にすると、建築費はどれくらい安くなりますか?
A.
延床面積が小さくなれば、構造・仕上げ・設備の総量が減るので、総額は下がりやすくなります。
ただし、キッチン・バス・トイレ・設備などの「最低限必要なもの」は面積に関係なく必要なので、
「35坪を25坪にしたから、コストも3割カット」とは限らない点には注意が必要です。
むしろ、小さくして浮いた分の予算を性能やデザインに回す考え方が現実的です。


Q3. 小さな家は、住みにくくなりませんか?
A.
間取りの整理をせずにただ狭くすると、住みにくくなります。
逆に、動線の重なりを減らす。「ここで何をするか」を明確にする。
動かない家具(造作ベンチ・収納など)を計画する
といった設計が入ると、小さくても驚くほど住みやすい家になります。
「何となく広い家」より、『“用途がはっきりした小さな家”』の方が快適なケースも少なくありません。


Q4. タイニーハウスや小屋で“完全に生活する”のは現実的ですか?
A.
もちろん不可能ではありませんが、ライフスタイルや家族構成によって向き不向きがあります。
ひとり暮らし・二人暮らし・子どもなし
物をあまり持たない暮らし
トイレ・風呂・ランドリーなどを外部サービスに頼れるエリア
などの条件が揃うと、フルタイムでもタイニーハウス暮らしは現実的です。
家族が増える・介護が必要になるなど、ライフステージの変化も見越して、
**「どのフェーズまでタイニーハウスで行けるか」**を考えるのがポイントです。


Q5. コンテナハウスは、タイニーハウスや小屋と比べて何が違いますか?
A.
コンテナハウスは、モジュール化された鉄骨の箱を構造体として使う点が特徴です。
「20FT=約13㎡」「40FT=約27㎡」など、単位面積がはっきりしている
工場制作→現場で設置・連結がしやすい
建築用新造コンテナを使えば、建築基準法対応の構造体になる
タイニーハウスや木造小屋に比べて構造が明快で、増設・連結もしやすいのが強みです。
逆に、鉄ゆえに断熱・結露・防錆などの対策をしっかりやる必要があるのが注意点です。


Q6. 2拠点生活には、どんなサイズ感の小さな家が向いていますか?
A.
2拠点目としてのサブ拠点であれば、
ひとり〜ふたりで使う前提なら、10〜25㎡クラスのタイニーハウス/コンテナ1台から2台のクラス
家族で泊まることも想定するなら、30〜50㎡クラスのスモールハウス/コンテナ2〜3台クラス
がひとつの目安になります。
ポイントは、
「何泊する場なのか」
「どこまで日常機能を持たせるか」
です。
フルの住宅機能が必要なら少し大きめに、
“濃い週末基地”ならコンパクトに攻める、というイメージです。


Q7. 小さな家のデメリット・注意点は何ですか?
A.
主な注意点は次のようなものです。
収納計画を間違えると、常に部屋が散らかりがちになる
将来の家族構成の変化に対応しづらくなる可能性がある
ミニマルに振り切りすぎると、来客や親族が泊まりづらい
面積を削りすぎて、結局外部倉庫やセカンドスペースのコストが増える
『「今」だけでなく、「10年後もこのサイズ感でいけるか?」』を一度立ち止まって考えることが大切です。


Q8. 小さな家の光熱費は、本当に安くなりますか?
A.
床面積が小さいぶん、冷暖房に必要なエネルギーは基本的に少なくなります。
ただし、
断熱性能が低い
大きな窓だらけ
日射遮蔽が不十分
といった条件が重なると、「小さいのに暑い/寒い家」になり、
結果的に光熱費がかさむこともあります。
小さな家ほど、断熱・気密・窓計画の設計密度が効いてくると考えてください。


Q9. 小さな家やコンテナハウスで、固定資産税は有利になりますか?
A.
固定資産税は、
建物の構造・床面積・仕様
評価額
土地の状況
などで決まるため、床面積が小さいほど総額は下がりやすい傾向にあります。
とはいえ、構造がコンテナかどうかよりも、
「建物として登記されるかどうか」「どんな構造種別か」の方が税額には影響します。
「税金だけを理由にコンテナを選ぶ」というより、
トータルのライフプランの中で“ちょうど良い規模の器”を選ぶ発想が大切です。


Q10. スモールハウス/タイニーハウス/コンテナハウス/小屋を検討するとき、最初に整理すべきことは?
A.
いきなり「何㎡欲しいですか?」ではなく、まずは次の4つです。
どこに置くつもりか
都市/郊外/地方/海辺/山/ゴルフ場…
何のための場所か
常住/週末用/仕事用/趣味用/お店…
どれくらいの頻度・期間で使うか、毎日? 週末だけ? 年に数回? 10年? 30年?
「大きな家」ではなく「小さな家」を選びたい理由は何か
この4つが整理できれば、
スモールハウスなのか
タイニーハウス/小屋なのか
コンテナハウスがベストなのか
がおのずと見えてきます。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。