コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.12.02

コンテナハウスと防音

コンテナハウスの遮音・防音|コンテナならではの遮音施工方法と、必要性能の考え方

コンテナハウスの遮音は「重さ」と「密閉」がキーワード

コンテナハウス=鉄の箱、と聞くと「音もガンガン響きそう」「雨音がうるさそう」というイメージを持たれがちです。遮音の世界では、
* 重さ(質量)
* 密閉性(すき間の少なさ)この2つが、とても大きな要素です。

鉄板そのものは軽くはありませんが、単体だと“よく鳴く楽器”にもなりやすい素材。
一方、建築用新造コンテナは気密性能を取りやすいので、「密閉性」をうまく活かせる箱でもあります。

ただし、
重さばかり増やせばコストも増えるし、開口部(窓)を小さくしすぎると居住性が落ちる。だからこそ、「その場所に、本当にどれくらいの遮音性能が必要なのか?」
ここを決めてから、“ちょうどいい遮音”を設計することが一番大事です。

まずは「必要な遮音性能」を決める 

いきなり「どんな施工をするか」ではなく、先にゴールの音量レベルを決めます。

2-1. どんなケースがあるか

ざっくり例を挙げると:
1. 普通の居室レベル

* 隣地が静かな住宅地

* 外の車の音がなんとなく聞こえる程度でOK

2.道路沿い・工場近接など、外部騒音が強いケース 

* 外のトラックやバイクの音をグッと減らしたい

3. 室内からの音漏れを抑えたいケース

* TV・音楽・カラオケ・子どもの楽器など

4. 本気の音楽練習室レベル

* ドラム・ベースなど大音量

* 夜間も使う前提

4まで行くと、
コンテナであろうとなかろうと、「防音スタジオ」の世界です。コンテナだから特別に難しいというより、
要求性能がハードだから大掛かりになる、という理解が正しいです。

コンテナならではの遮音の考え方

3-1. 鉄の箱は「響きやすく、密閉しやすい」

* 鉄板は音を通しにくい帯域もあれば、共鳴して増幅しやすい帯域もある

* そのままだと「ドラム缶」のように鳴る

* 一方で 溶接されている。気密を取りやすい。
→ 空気のすき間は作らない設計にしやすい

→ なので、
「外皮は“気密のスキン”として使い、その内側に“重さ+吸音”を組み合わせる」というのがコンテナ遮音の基本戦略になります。

3-2. 遮音の基本は「重さ+多層+スキマゼロ」

建築全般にいえることですが、コンテナでも同じです。

* 壁・床・天井を多層構造にする

* 鉄板(外皮)

* 空気層+断熱材(吸音・熱)

* ボード(石膏ボードなど)

* 重い材料(石膏ボード2枚貼りなど)を組み合わせて質量アップ

* 気密シート・シーリングでスキマゼロを目指す

* サッシ・換気口などの弱点部(開口部)を強化する

ここまでやって初めて、
コンテナは「うるさい鉄箱」から**“しっかりした遮音性能をもつ小さな躯体”**になります。

場所別:コンテナハウスの遮音施工方法

4-1. 壁の遮音施工

基本構成(例)

1. 外側:建築用コンテナの鉄板

2. 内側の軽量鉄骨下地 or 木下地

3. 充填断熱材(高密度グラスウール etc.)

4. 気密シート

5. 石膏ボード二重貼り(12.5mm×2枚など)

ポイント:

* 下地をコンテナ本体から少し浮かせる(振動を伝えにくくする)
* 断熱材は「ギュウギュウ詰めにしない」
→ 適度な密度で吸音させる
* ボードは継ぎ目に気密テープ+シーリング
* コンセントボックスなど開口部は気密ボックスを使う
これで、一般的な木造住宅より1ランク高い遮音性能を狙うイメージです。

4-2. 床の遮音施工

床は、
「外から聞こえる音」より「こちらの足音が下に伝わる音」が課題になりやすいところ。

一般居室レベル

* コンテナ床鋼板の上に

* 防振ゴム or 遮音シート

* 下地合板

* 仕上げ材(フローリング・塩ビタイルなど)

音楽練習室など、振動を抑えたい場合

* 「浮き床構造」

* 防振ゴムや防振パッキンの上に

* 独立した床下地を組み

* その上に合板+仕上げ

コンテナの床構造にもよりますが、
躯体に直接ゴンゴンと振動が入らないように“ワンクッション”挟むイメージです。
鉄骨造は「直接の打撃音」は伝わりやすいので、「ワンクッション置く」が大事な方法です。

4-3. 天井の遮音施工

天井も基本は壁と同じく、

* 鉄板と天井下地をダイレクトに固定しすぎない
→ 防振ハンガーやスペーサーで少し浮かせる

* 断熱材+吸音を兼ねた充填材

* 二重貼りの石膏ボード などで質量を確保

屋根の雨音対策も兼ねて、
断熱と遮音をパッケージで考えるのがポイントです。

4-4. 開口部(窓・ドア)の遮音

ここが一番“弱点”になりやすいところ。
いくら壁を頑張っても、ガラスとサッシがスカスカでは意味なしです。

* サッシは断熱サッシ+できれば複層ガラス以上

* 交通騒音などが気になる場合は防音合わせガラスを検討

* 開口部のサイズは

* 遮音を優先するなら「小さめ」

* 居住性・採光を重視するなら
→ 窓は絞りつつ、ハイサイドライト+壁面の質量確保でバランスを取る

* 玄関ドア・勝手口ドアも気密性能の高い製品を選ぶ

「窓をやたら増やしておしゃれに」という方向は、
遮音だけ見れば完全に不利です。
**“必要な窓だけしっかり良いものを”**がコンテナ遮音の基本です。

4-5. 換気・エアコンまわり

見落としがちですが、
「換気口とエアコンの穴は“音のトンネル」になります。

* 防音ダクト・消音ボックスの採用

* 室外機の設置位置(寝室の壁を避けるなど)

* 機械換気の給気・排気位置の工夫

ここまで配慮して初めて、
「遮音しているのに換気で台無し」という事故が減ります。

5|音楽練習室レベルの“本気防音”もコンテナで可能か? 

結論から言うと、可能です。ただし「やり方」と「コスト感」が普通のコンテナハウスとは別世界になります。

5-1. 基本は「箱の中に、もう一つ箱をつくる」

* コンテナ躯体(外箱)

* その内側に、**床・壁・天井が躯体から振動的に分離した“内箱”**をつくる

* 防振ゴムや防振ハンガーで浮かせる

* 内箱の壁・天井は石膏ボード多層貼り+吸音材

結果として:

* 有効寸法はかなり小さくなる

* 工事費は一般の居室の数倍レベル

* それでも、

* ドラム

* ベース
の連続使用なら、完全な無音にはならない(夜間は特に)

5-2. おすすめの現実ライン

* 「ピアノ・アコースティック楽器・ボーカル」レベルなら
→ コンテナ+内装遮音で十分現実的

* 「フルバンド・ドラム常用」は
→ コンテナでも在来でも、
“専門の防音スタジオ”の世界観になると考えた方がいい

コンテナのメリットは、
**「スタジオごとどこかに移設できる可能性」**があること。
将来の移設まで見据えた音楽室をつくるなら、コンテナは相性が良いです。

コストと性能のバランスをどう取るか 

遮音は、やろうと思えばいくらでもお金がかかります。

だからこそ、

1. 必要性能のレベルを決める

* 普通の居室

* 外部騒音が気になる立地

* 音楽・映像コンテンツを大音量で楽しみたい

* 本気の練習室

2. 部分ごとにメリハリをつける

* 寝室やスタジオだけしっかり

* その他の部屋は“標準+α”程度に

3. 窓と換気の設計を早い段階で決める

* 後から窓を増やすと、一気に遮音性能が崩れる

この3ステップで考えると、
「必要以上にやりすぎない、ちょうどいい遮音」に落ち着きます。

コンテナハウスの遮音・防音 Q&A 10選

Q1. コンテナハウスは、一般の木造住宅よりうるさいですか?

A.
そのままの鉄箱なら「うるさい」です。
ただし、建築用コンテナにきちんと断熱・内装・遮音施工をすれば、
一般的な木造住宅と同等〜それ以上の遮音性能を目指すことは十分可能です。
外皮が気密を取りやすい分、設計次第では有利にもなります。

Q2. 一番効く遮音方法は何ですか?

A.
基本は「重さ(質量)+スキマを塞ぐ(気密)+多層構造」です。
壁・天井の石膏ボード二重貼り、断熱材の適切な充填、
コンセントボックスまわりの気密など、
地味な積み重ねが一番効きます。

Q3. 窓を大きくすると遮音性能はどれくらい落ちますか?

A.
壁をどれだけ頑張っても、窓が大きくて性能の低いサッシだと、
**“そこからほとんどの音が入ってくる”**状態になります。
数字は条件次第ですが、体感では
「窓が大きくなるほど、外の音が壁に関係なく聞こえる」
と思っておいた方がいいです。
遮音を重視する部屋は、窓面積を絞るのが鉄則です。

Q4. DIYで防音シートだけ貼るのは効果がありますか?

A.
ゼロよりはマシですが、
「防音シートだけ」では劇的な効果は期待できません。
遮音は質量と多層構造がポイントなので、
シート+ボード+気密、とセットで考える必要があります。
特にコンテナはもともと密閉されているので、
間違ったDIYで逆に結露・カビを招かないよう注意が必要です。

Q5. 雨音が気になるのですが、コンテナ屋根で静かにできますか?

A.
はい、できます。

* 屋根を二重構造にする(コンテナ+軽量屋根)

* 天井側に断熱材+石膏ボード
を組み合わせることで、
雨音はかなり抑えられます。
ただし、薄い金属屋根1枚のままでは
どうしても“ポタポタ音”が響きます。

Q6. 音楽練習室レベルの防音は、コンテナでやると高くつきますか?

A.
はい、「きちんとやれば」高くつきます。
コンテナだから安くなる、という魔法はなく、
在来建築でもコンテナでも、
防音スタジオレベルの性能にはそれなりのコストがかかります。
ただし、コンテナの場合は

* 工場である程度ユニット製作できる

* 将来の移設の可能性がある
というメリットがあります。

Q7. 遮音と断熱は一緒に考えた方がよいですか?

A.
はい。コンテナの場合は特に、
断熱・遮音・結露対策はセットで考えた方が良いです。
断熱材の入れ方や気密処理が、
そのまま遮音性能にも関わってきます。
「音だけ」「熱だけ」と分けて考えると、
どこかで無理が出やすいです。

Q8. コンテナハウス全体を防音仕様にする必要はありますか?

A.
ほとんどのケースで、全体をガチ防音にする必要はありません。

* 寝室

* 子ども部屋

* 音楽を楽しむ部屋
など、重要な部屋だけ性能を上げて、
その他の部屋は“標準+少し”くらいの仕様で十分なことが多いです。
必要性能を部屋ごとに分けると、コストも抑えやすくなります。

Q9. 工場の近くや道路沿いでも、コンテナハウスで静かな室内は可能ですか?

A.
外部騒音のレベルによりますが、
コンテナ+適切な遮音・開口設計を組み合わせれば、
「室内では普通に会話ができる」レベルの環境は十分狙えます。
ただし、

* 窓の位置とサイズ

* サッシ性能

* 換気口の計画
が鍵になりますので、
計画段階で「騒音環境+窓計画」を一緒に検討するのが重要です。

Q10. コンテナハウスの遮音について、誰に相談すればいいですか?

A.
コンテナ建築そのものを理解していて、
かつ建築基準法・構造・断熱・遮音をまとめて語れる会社・設計者に
相談するのがベストです。
建築用新造コンテナを使ったコンテナ建築を数多く手がけている
専門メーカーであれば、
「どの程度の遮音性能が現実的で、コストはいくらくらいか」
まで含めて具体的な提案が可能です。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。