コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.11.30

木造コンテナハウス

木造コンテナハウスの今後の展開|MIKAN(未完)HOUSEがひらく新しいセルフビルド

木造コンテナハウスの誕生と、木造コンテナハウスの今後の展開。
MIKAN(未完)HOUSEとセルフビルドのその先へ、コンテナハウスと聞くと、多くの人が思い浮かべるのは「鉄の箱」です。
建築用新造コンテナを使った鋼製コンテナハウスは、強くて、運べて、精度が高い。
プロが扱う“建築の道具”としては、これ以上ない素材です。
一方で、「自分の手でも家をつくってみたい」という庶民の夢を、現実レベルに引き寄せてくれるのが
MIKAN(未完)HOUSEが掲げてきた「セルフビルドの精神」です。
そこへ新しく加わろうとしているのが、「木造コンテナハウス」=木造コンテナというライン。
これは、コンテナ建築の思想をそのままに、構造と仕組みを「木」という素材に置き換えた、
セルフビルドに本気で寄り添うための新しい箱です。

なぜ「木造コンテナハウス」なのか

まず言っておきたいのは、木造コンテナは『“なんちゃってコンテナ風の小屋”』ではない、ということです。
寸法やモジュールはコンテナ的、使い方はコンテナ建築的、しかし構造材は木(在来・枠組・パネルなど)
この組み合わせが生むのは、「プロのコンテナ建築」と「庶民のセルフビルド」のあいだに架かる、ちょうどいいスロープです。
鋼製コンテナ vs 木造コンテナ(ざっくりと役割整理)
1.鋼製コンテナハウス
構造体としての剛性・耐久性が高い。大きなスパンや長いユニットでも安心。建築確認・構造計算も踏まえた“プロ仕様”
2.木造コンテナハウス
加工・改造のハードルが低い(DIYに向く)、工具と少しの経験で「自分も参加できる」、内装・外装の表情を木の質感で楽しめる。どちらが上とか下ではなく、『「役割が違うふたつのコンテナ建築」』だと捉えた方がしっくりきます。

MIKAN(未完)HOUSEの精神と木造コンテナ

MIKAN(未完)HOUSEが最初から掲げてきたのは、「プロに丸投げする家づくり」ではなく、「素人がちゃんと関われる家づくり」という考え方です。
自分で塗る
自分で組む
自分で選ぶ
そうやって、未完の部分をあえて残しておく。
そこに「暮らしの余白」と「参加する楽しさ」を詰め込むのがMIKAN(未完)HOUSEの世界観。
木造コンテナがラインナップに加わると、この精神が一段深いところまで降りていきます。
壁を足す・抜く、収納や棚を後から組み込む、将来、もう1ユニットを自分たちで増築する
といった「構造寄りのセルフビルド」にも、庶民が手を伸ばせるようになるからです。

3. 木造コンテナが広げるセルフビルドの3つのスタイル

スタイル1:DIYフレンドリーな「ライトセルフビルド」
あらかじめ構造体と外皮が整った木造コンテナに対し、
内装仕上げ
造作家具
ペイント
などを施していくライトなセルフビルドスタイル。
**「プロが骨格をつくり、住まい手が仕上げる」**という分業は、
はじめて家づくりに関わる人にとって、最高の入門編です。

スタイル2:ハーフビルド型の「共同プロジェクト」
構造フレームと主要ディテールは設計事務所&工務店チーム。
それ以外の部分はオーナーと友人たちが協力して進める。
MIKAN(未完)HOUSE流・セルフビルド講座
現場ワークショップ
DIYサポートマニュアル
こんな仕組みと木造コンテナが組み合わさると、
『「コミュニティで一棟建てる」』という新しい遊び方・学び方が見えてきます。

スタイル3:コーポラティブ・セルフビルドへの足がかり
複数人が互いの家づくりを助け合う
「コーポラティブセルフビルドシステム」的な構想とも、木造コンテナは相性抜群です。
1人ではハードルが高い作業も、数人ならこなせる
繰り返し同じモジュールを組むので、経験値が貯まる
その経験が、次の人の家づくりに生かされる
「セルフビルドの文化を循環させるための“部品”としての木造コンテナ」
そんな未来像も見えてきます。

鋼製コンテナ × 木造コンテナのハイブリッド展開

もうひとつ大きいのが、鋼製コンテナと木造コンテナのハイブリッド展開です。
中心に構造コアとして鋼製コンテナ。その周りに木造コンテナユニットを“増築”していく
デッキやテラスも木造モジュールで一体化
こんな発想を採れば、構造的な安心感、セルフビルドの自由度、将来の増改築のしやすさ
を「全部のせ」に近い形で組み合わせることができます。
プロと素人が同じ「コンテナ的モジュール」を共通言語にして、
ひとつの場を一緒につくり上げていく。
木造コンテナは、その「翻訳者」の役割を担える素材です。

木造コンテナハウスの今後の展開イメージ

今後、木造コンテナまわりで起こりうる展開を、少しだけ先取りしてみます。
標準モジュールの整備
8畳ユニット、ワークスペースユニット、ベッドルームユニットなど
「好きなユニットを選んでつなげる」設計パターンの公開
DIYマニュアル&動画コンテンツ。具体的な組み立て手順
メンテナンスや改造アイデア集
オンライン+現場のハイブリッド講座
MIKAN(未完)HOUSEアカデミー的な学びの場
実際の木造コンテナ現場を教材にしたワークショップ
セルフビルドコミュニティの形成
OB施主/DIY経験者が、次の人を手伝う
「手伝った時間」をポイント化し、自分の建設時に使える仕組み
タイニーハウス・2拠点生活との連携
30〜50㎡クラスの木造コンテナ・タイニーハウス
2拠点目・アトリエ・スタートアップ拠点としての用途展開
木造コンテナハウスは、
単に「もうひとつ商品が増える」という話ではなく、
「セルフビルドに本気で挑みたい人」と
「コンテナ建築の技術と経験を持った側」を
あらためて結び直すための新しい接点になっていきます。

木造コンテナハウスのQ&A 10選

Q1. 木造コンテナハウスとは何ですか?普通の木造住宅と何が違いますか?
A. 木造コンテナハウスは、コンテナのようなモジュール寸法・ユニット構成を持ちながら、構造材に木を使った小型建築です。普通の木造住宅より「箱の単位」がはっきりしており、増設・移設・セルフビルドとの相性が良いのが特徴です。

Q2. 木造コンテナハウスと鋼製コンテナハウスの違いは?
A. 鋼製コンテナハウスは建築用新造コンテナなどの鋼構造を使い、大きなスパンや高い耐久性を持つプロ仕様の箱です。一方、木造コンテナハウスは、DIY・セルフビルドで扱いやすい木構造ながら「ラーメン構造」の鋼製コンテナと同じ構造方式でコンテナ的モジュールを再構成したもの。役割と得意分野が違います。

Q3. MIKAN(未完)HOUSEと木造コンテナの関係は?
A. MIKAN(未完)HOUSEは「セルフビルドを庶民にも開く」コンセプトのシリーズです。そのラインナップに木造コンテナが加わることで、構造寄りの作業にもオーナーが関わりやすくなり、セルフビルドの自由度がさらに広がります。

Q4. 木造コンテナハウスは本当に素人でもセルフビルドできますか?
A. すべてを一人でこなすのは難しいですが、構造体や主要部分をプロが担い、内装・造作・デッキなどをオーナーがセルフビルドする「ハーフビルド」スタイルなら充分現実的です。標準化されたモジュールとマニュアルが整えば、DIY初心者でも参加しやすくなります。

Q5. 木造コンテナハウスのメリットは何ですか?
A.
木の質感と温かみを活かせる
加工・改造の自由度が高くセルフビルドに向く
コンテナ的モジュールで増築・連結がしやすい
コストを調整しながら「未完」を楽しめる
といった点が木造コンテナハウスの大きなメリットです。

Q6. 木造コンテナハウスは耐久性や耐震性に問題はありませんか?
A. 適切な構造設計と施工、建築基準法に沿った仕様にすれば、一般的な木造住宅と同等の耐震・耐久性能を目指すことができます。重要なのは「コンテナ風の小屋」で済ませず、構造計算や防腐・防蟻・防水などをきちんと押さえることです。

Q7. 木造コンテナハウスはどんな用途に向いていますか?
A. タイニーハウス、アトリエ、ワークスペース、離れ、2拠点生活のコンパクトハウスなどに向いています。将来の増築や用途変更も視野に入るため、「まずは小さく建てて育てる」使い方とも相性が良いです。

Q8. 木造コンテナハウスの今後の展開として何が期待できますか?
A. 標準モジュールの多様化、DIYマニュアルや動画の整備、MIKAN(未完)HOUSE的なセルフビルド講座との連携、コーポラティブセルフビルドの仕組み化などが期待されます。プロと住まい手が協働する新しい家づくりの形が広がっていくでしょう。

Q9. 木造コンテナハウスはコンテナハウス初心者にもおすすめですか?
A. はい、特に「自分で何か手を動かしたい」という人にはおすすめです。鋼製コンテナハウスでいきなりフルセルフビルドは難しくても、木造コンテナなら内装や造作からチャレンジしやすく、コンテナ建築の世界への入り口として機能します。

Q10. 木造コンテナハウスとMIKAN(未完)HOUSEの組み合わせで、どんな未来を目指していますか?
A. 目指すのは、「家づくりをプロだけのものにしない」未来です。MIKAN(未完)HOUSEのセルフビルド精神と木造コンテナのモジュール性を組み合わせることで、庶民でも参加できる新しい家づくり文化――協力し合いながら小さなコンテナハウスを増やしていくような世界をつくっていくことです。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。