コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
高床式コンテナハウスとシロアリ・ゴキブリ対策「防虫」は時には「建物の寿命」に関わる重大項目
もくじ
コンテナハウスと虫の関係
「鉄の箱だから、虫の心配は少なそう」
これは半分正解で、半分まちがいです。
構造体は鋼材+鋼板なので、シロアリに食べられる心配はほとんどない
一方で、
床・内装の木部
デッキ・階段
ゴミ置き場まわり
には、普通の家と同じように虫が寄ってくる
特に気にしたいのはこの2つ。
シロアリ(主に床まわり・デッキ・基礎)
アリ・ゴキブリなど、屋内に入り込む虫
コンテナハウスの強みは、
写真のような**「高床式コンテナハウス」にしやすいこと**です。
地面から箱を持ち上げることで、
シロアリが上がってくるルートを絞れる
床下がよく乾き、カビ・腐朽が起きにくい
点検・メンテナンスがしやすい
という、防虫+防湿の両面でメリットが出ます。
シロアリ対策|コンテナハウスならではの考え方
2-1 「どこを守ればいいか」を整理する
コンテナハウスでシロアリ対策が必要な部位はだいたい決まっています。
基礎まわり(コンクリート・土間・独立基礎)
デッキや外部階段などの木部
床下地・フローリング
壁の下地木材(一部)
鋼材そのものは食われませんが、「木部への入口」は必ず押さえる必要がある、というイメージです。
2-2 高床式コンテナハウスのシロアリメリット
写真のような高床式コンテナハウスでは、
コンテナをコンクリートの独立基礎やフーチングの上に載せる
床レベルが地盤より高く、床下がフルオープンのピロティになる
地面とコンテナの間に、明確な物理的バリアができる
結果として、
シロアリが「どこから上がってくるか」をコントロールしやすい
床下の風通しがよく、湿気がこもらない
床下が見えるので、異常があればすぐ気づく
在来木造の床下と比べると、
シロアリのリスクを“設計段階で減らせる”のが高床式コンテナハウスの強みです。
2-3 実務的なシロアリ対策
基礎まわりの土壌処理(防蟻薬剤)
コンクリート基礎立ち上がり部への物理バリア+必要に応じて薬剤処理
デッキや階段には
耐久性の高い木材(ハードウッドなど)
束石や金物で直接土に触れない納まり
定期点検(年1回程度)、高床なら目視でOK
コンテナハウスだからこそ、
「木部をなるべく地面から離す」「点検しやすくする」という発想で
シロアリ対策を設計に組み込むのがポイントです。
高床式コンテナハウスと防虫・防湿の関係(当社独自の画期的対策)
写真の事例のように、
コンテナ本体を1m前後持ち上げてデッキと一体化させると、
防虫・防湿の両面でメリットがはっきり見えてきます。
3-1 防虫面のメリット
地面からの直接侵入が減り、
虫が入ってくるルートを「階段+配管+配線」に絞り込める
床下が暗くジメジメした空間ではなく、
「風の通る屋外」として扱える
害獣・害虫の巣になりにくい(目視されやすい・掃除しやすい)
3-2 防湿・耐久性のメリット
床下に雨水がたまらないよう、地盤の勾配と排水を設計しやすい
風通しが良いので、床下の木部が乾燥しやすい
エアコンの室外機や配管を床下にうまく納めやすく、
メンテも外側からアクセスしやすい
「高床式=南の島の民家」というイメージがありますが、
高温多湿な日本全体で相性が良い構造です。
ゴキブリ・アリなど「室内侵入系」への対策
シロアリより心理ダメージが大きいのが、
南の島系の巨大ゴキブリ+アリ行列問題。
これらは構造よりも、
気密性・すき間の処理
生活習慣と衛生管理
の影響が大きくなります。
4-1 設計・施工でできる対策
開口部(窓・玄関・勝手口)
網戸を標準装備
玄関ドア下にドアスイープ(隙間を塞ぐパッキン)
配管・配線の貫通部
外壁・床貫通部はコーキング+発泡ウレタン+気密テープでしっかり充填
換気口
吸排気口には防虫網・ルーバーを設置
床下換気口もメッシュ付きにする
キッチン・洗面まわり
配管まわりにすき間を残さないディテール
排水トラップできちんと封水を確保
コンテナハウスはもともと高気密化しやすい構造なので、
「気密=防虫」も兼ねるつもりでディテールを詰めておくと効果的です。

4-2 生活・運用でできる対策
食べ物・生ゴミを夜中に出しっぱなしにしない
段ボールを長期間置かない(ゴキブリの大好物)
シンク・排水口まわりをできるだけ乾燥させる
室外ゴミ置場は建物から少し離し、フタ付きコンテナを使用
床下や建物まわりに、
不要な植栽や放置物を置かない
水たまりを作らない(蚊・ヤスデ・ムカデ対策)
南国・離島のコンテナ住宅で気をつけたいこと
沖縄や南の島のコンテナハウス/コンテナ宿泊施設では、
大型のゴキブリ(クロゴキブリ系)
アリの大群
ヤモリや小動物
など、「生き物密度」が本土より高めです。
そこで現代コンテナ建築研究所では、
写真のような高床式コンテナハウスをベースにする
床下に常時風が通る構造にする
建物まわりの砂利敷き・コンクリートで
雑草と水たまりを減らす外構計画をセットにする
といった「環境ごとデザインする防虫対策」を採用しやすくしています。
「完全にシャットアウト」は不可能でも、
“出会う頻度を減らす”+“出ても対処しやすい環境にする”
という発想で、コンテナ住宅の暮らしやすさをデザインしていきます。
コンテナハウス防虫 Q&A 厳選10
Q1. コンテナハウスは、普通の木造住宅よりシロアリに強いですか?
A. 構造体が鋼材なので、構造そのものはシロアリに強いと言えます。ただし、床・デッキ・内装の木部は普通の家と同じくリスクがあるため、基礎まわりの防蟻処理や高床式構造で「入口」を減らす設計が重要です。
Q2. 高床式コンテナハウスにすると、防虫対策としてはどれくらい効果がありますか?
A. 地面と床の間に空間ができ、虫の侵入ルートが限定される+床下が乾燥しやすいので、シロアリ・湿気・小動物対策にはかなり有効です。ただし階段や配管まわりなど、残った経路の処理は必要です。
Q3. コンテナハウスでもシロアリの薬剤処理は必要ですか?
A. 木造住宅ほど大規模でなくても、基礎まわり・デッキ支持部などの土壌処理や防蟻対策は行っておくことをおすすめします。特に南の島や温暖地域では、予防コストに対して安心度が大きく変わります。
Q4. 南国のコンテナハウスで、巨大ゴキブリを完全に防ぐのは無理ですか?
A. 「完全に0匹」は現実的ではありませんが、
高床式+砂利敷き外構
すき間の少ない高気密ディテール
生活ゴミの管理
を組み合わせることで、室内で出会う頻度をかなり下げることは可能です。
Q5. コンテナの床下は閉じてしまった方が虫は入りにくくなりますか?
A. 完全に塞ぐと、今度は湿気と点検性の問題が出ます。
コンテナハウスでは、
高床式で床下はオープン
必要なところだけメッシュやフェンスで制御
という「見える・風が通る床下」の方が、防虫+防湿のバランスが良いケースが多いです。
Q6. アリがキッチンに行列で入ってくるのを防ぐには?
A. 設計面では、
配管まわりのすき間をきちんとシールする
外壁のクラックや目地を放置しない
運用面では、
食べ物カス・甘い飲料を残さない
室外のアリの通り道(壁・配管)に気づいたら早期に対処
が有効です。構造+生活習慣の両方からアプローチするのがポイントです。
Q7. 室内で使う殺虫スプレーは、コンテナハウスの断熱・換気に影響しますか?
A. 建物性能にはほとんど影響しませんが、高気密なコンテナ住宅では換気を十分に行うことが重要です。使用後は窓を開けて一時的に自然換気し、その後は24時間換気システムを通常運転に戻してください。
Q8. 網戸をつければ、虫対策としては十分ですか?
A. 網戸は必須ですが、
ドアの下端すき間
換気口・配管まわり
床下からのすき間
など、他の侵入ルートも必ず存在します。
網戸+すき間処理+生活ルールの3点セットで考えると安心です。
Q9. コンテナハウスの外構は、芝生より砂利の方が防虫には有利ですか?
A. 一般論として、
雑草が生えやすい土+芝生 → 虫や小動物のすみかになりやすい
砂利敷き+適切な排水 → 見通しがよく乾燥しやすい
ので、防虫という観点では砂利敷き+最低限の植栽の方が管理しやすいことが多いです。
Q10. 既に建っているコンテナハウスでも、防虫性能を後から改善できますか?
A. 可能です。
床下の点検・清掃
配管・配線貫通部の再シール
網戸・ドアスイープの追加
外構の整理(不要物・雑草の撤去、砂利敷き追加)
など、後施工で改善できるポイントは多くあります。高床式で床下に入りやすいコンテナハウスほど、改善の自由度は高いです。
記事の監修者
大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。
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