コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.08.01
コンテナCAFE開業Coach50連載
CAFE_コンテナ開業のためのコーチからの50の手紙_5/50
A-005:マイペースのマラソンランナーであれ
独立開業という長い道のりにおいて、あなたはどんな走り方を選びますか?
もくじ
■ はじまりは、確かに「ダッシュ」かもしれない
独立開業という出来事。それは人生の中でも特にエネルギーを要するイベントです。新しい看板を掲げる瞬間、胸の高鳴りは抑えきれません。準備期間中からずっと走ってきたような気持ちになるでしょうし、オープン初日は、まさにスタートダッシュそのものです。
でも、大切なのはその先です。
「そのダッシュのまま、ずっと走り続けられるのか?」という問いを、自分に対して常に持ち続けてください。

■ 開業は“始まり”であり“終わり”ではない
オープンすること自体をゴールと勘違いしてしまう人は、意外と多いものです。しかしそれは、あくまでひとつの節目に過ぎません。そこからは、毎日が営業日。昨日の売上に一喜一憂し、仕込みに追われ、接客に全力を尽くし、また翌朝の開店準備がやってくる…。
その繰り返しの中で「持続可能な自分のペース」をどう確保するかが問われるようになるのです。
■ 120%を出し続けることはできない
「今しかない!」
「がんばらなきゃ!」
もちろん、その気持ちは素晴らしい。けれど、毎日120%の力を出し続けることは不可能です。
どんなに燃えていても、心も体も、ガソリン切れを起こしてしまいます。
大事なのは、自分にとっての“巡航速度”を知ること。少し余裕を持って、70%〜80%の力でコツコツと走り続ける。それが本当に遠くまで行ける秘訣なのです。

■ 軽自動車でも、ハマーでも、「巡航速度」がすべて
クルマの例えをしましょう。あなたが軽自動車だとします。エンジンは660cc。でもその代わりに、小回りがきいて、維持費が安く、狭い道もするりと抜けられる。
一方で、隣を走るのは6000ccオーバーの大型SUV「ハマー」。パワーも重量感も桁違いで、道を選ばず突き進める。
けれど、それぞれには最適なスピードがあるんです。軽自動車が時速80kmで山道をずっと走り続けるとエンジンは悲鳴を上げる。でもハマーにはハマーで、入り組んだ細道に弱いという短所もある。
この例えの要点はひとつ。
自分のエンジンを理解し、自分に合った巡航速度を知ること。それが持続可能性という名の最大戦略になるということです。


■ スターバックスはあなたの店とは“別のジャンル”です
リテールカフェを営むあなたに、ひとつ冷静な視点を持ってほしい。
たとえば、スターバックス。都心の大型店舗では1日300万円を超える売上を出すところもあります。
では、自分の店でもそのくらいを目指すべきか?
答えは「NO」です。なぜなら、スタバのような企業は資本力、人材、開発力、ブランド力、立地、すべてが揃っていて成り立っている別のビジネスカテゴリだから。
あなたの店の役割は、まったく別の価値を生み出すことにあるのです。むしろ10万円/日でも、しっかり利益が出て、長く愛される店になることのほうがずっと価値がある。

■ 「マラソン的思考」のすすめ
マラソンと短距離走の違いは、使うエネルギーの質そのものが違う点にあります。
短距離走は爆発的な筋力、瞬間的な集中力。
マラソンはペース配分、持久力、そして「自分との対話力」。あなたがこれから目指すのは、間違いなく「マラソン型」の生き方です。

■ 無理すると“センス”まで失われる
無理をしてまでアクセルを踏み続けてしまうと、心が乾いていきます。
疲弊し、余裕がなくなり、笑顔も減り、アイデアも浮かばなくなる。
それは、あなたが本来持っている「センス」をも削り取っていく行為です。
無理をしてまで走らない。センスを生かすには、心のスペースが必要なのです。

■ まとめ:走り続けるコツは「余白」
誰にでも、ほんの少しの“余白”が必要です。
それは「さぼり」ではありません。「戦略的余裕」と言ってもいい。
呼吸を整えながら、景色を楽しみながら走れるマラソンランナー。
それこそが、開業後にもっとも遠くまで走り続けることのできる人なのです。

🌟今日のコーチングA-005🌟
自分の巡航速度を知り、走り続けよう。無理な加速はあなたのセンスを損なう。走り続けられることこそ、最大の才能である。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。
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