コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.08.01
コンテナのおしゃれなオフィス
コンテナハウスのおしゃれなオフィスという選択
「コンテナでオフィスを作るという選択」──それは単なる建築手法の選択ではなく、ある種の思想表明でもあります。コンテナ建築という“異形の選択”には、機能面・コスト面の現実的なメリットとともに、「未来のはたらき方」を示唆する先進性、さらには建築に対するイメージや哲学の刷新すら伴っているのです。コンテナによる「オフィス」の先進性についてお伝えいたしましょう。

もくじ
コンテナオフィスの“現実的”メリット
◎スピード感:早く、確実に、オフィスが立ち上がる
建築用新造コンテナをベースにすれば、構造体そのものが工場生産されており、現地では「据える・繋ぐ・整える」という短期間の工事で済みます。特に以下のようなケースで威力を発揮します:
スタートアップや新規プロジェクトの拠点立ち上げ
既存施設の仮設・増築
自社倉庫やヤードに併設する“現場型”オフィス
◎移設・再利用:フットワークの軽い不動産
土地を所有せずにレンタルしている場合や、事業拠点を移転する可能性がある場合、コンテナの“モバイル性”は非常に大きな利点になります。構造自体が移動を前提にした強度を持つため、建てて終わりではなく、次の場所に持って行って「続き」ができる。
◎拡張性:成長にあわせて積み増せる
スタートは20フィート1本、でも事業が育ったらもう1本。さらに会議室モジュールを増設して2階にラウンジも…という具合に、まるでレゴブロックのように“拡張可能なオフィス”が設計できるのも、コンテナ建築の面白さ。

デメリットとその処方箋
△断熱・空調の難しさ(でも、それは「昔の話」)
中古の海上コンテナを使った事例でよく語られるのが、「暑い・寒い・うるさい」といった声です。だが、建築用新造コンテナをベースにした場合、これは構造の設計段階で一般建築と同じようにしっかり解決できる問題です。高性能断熱材、2重窓、専用空調、吸音構造などを盛り込めば、快適なワークスペースが実現します。
△用途地域や建築基準法との調整
特に都市部では、「コンテナ=仮設」のイメージが先行して、行政や近隣の理解を得るのに苦労するケースもありました。それは海洋輸送用コンテナを使っている「グレーな時代」の事。今では「建築用コンテナ」を使うので、一般建築と同じように用途地域に合ったプランニングをすれば、法的にも正規の建築物として問題ありません。建築確認しっかり通せます。

思想と先進性:なぜ“オフィス”にコンテナなのか?
◎“可変性”の思想──オフィスは「箱」ではなく「変化する生き物」
これからのオフィスに求められるのは、固定されたハコではなく、変化に対応できる“有機体”のような柔軟さです。人数が増減する、用途が変わる、働き方が変化する。そんなとき、建築自体がその変化を受け止め、形を変えられるなら──それこそが真の機能美でしょう。
コンテナは、その意味で「変化に強い」構造です。モジュール単位で変更・移設・増築ができる。まるで、会社の細胞が分裂していくようなイメージです。
◎“サステナビリティ”の意思──建てて壊す時代は終わった
解体できるけど、破壊しない。移設できるけど、使い捨てない。コンテナオフィスの思想には、持続可能性の哲学が宿っています。都市がスクラップ&ビルドを繰り返す中で、「移設・転用・拡張」が可能な建築は、新しい都市像にも貢献できます。

イメージの逆転──“かっこいい”オフィスとは何か?
「え? コンテナ?ちょっと無骨すぎない?」と眉をひそめる人もいるでしょう。けれど、それはまだ旧来の「事務所ビル神話」の中にいる人の発想。
むしろ、こんなオフィスが今、新しい働き手に支持されています:
複合施設の中に“ぽつん”とある、グッドデザインの小型拠点
ガレージの横にポンと置かれたスタジオ型SOHOオフィス
眺望の良い屋上に置かれた“空中の会議室”
地方のデザイン会社の“秘密基地”的な仕事場
「コンテナ=先進的」というイメージは、Z世代やフリーランス、リモートワーカーなど、従来型オフィスに馴染まない世代に強く刺さります。これはすでに新しい文化現象です。

まとめ:コンテナオフィスは、単なる器ではない
コンテナでオフィスを作るという選択。それは単に「小さな事務所を安く作れる」という話ではありません。
それは、
フレキシブルに生き残るための選択肢
建築における可変性の表明
事業と建物が共進化するという思想
働き方の“思想的ステートメント”
といった、非常に現代的で、先進的な意思表明なのです。
そしてなによりも──かっこいい。
この言葉を、建築の文脈で使ってみたかったのです。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。