コンテナハウス施工事例

更新日:2025.06.02

宿泊施設

商業施設

離島建築

限界集落建築

MIKAN(未完)HOUSE

BACKSHORE_99 (九十九里浜)コンテナハウスの素敵な宿

BACKSHORE_99|九十九の波が聞こえるところで

それは、房総半島の東端、九十九里浜。浜風が地平線から吹き寄せる、百に届かぬ波のリズム。「BACKSHORE_99」という名のスタイルは、この長い、長い浜辺から生まれた。九十九という数は、永遠に一歩手前。完成には至らず、どこか未完であることを許された数。この場所に似つかわしい名前だと思った。

「最後の波打ち際」──英語で言えば backshore。高潮線の、もう少し上。日常と海との境界。そこに、建築がそっと腰を下ろす。それが、BACKSHORE_99である。

このスタイルでは、コンテナは建築資材ではなく、むしろ旅する物体として現れる。それらはかつて海を越えてきたが、今は浜に打ち上げられたように、砂と風のリズムに身をゆだねる。誰かの店になるかもしれないし、誰かの工房や仮設ギャラリー、あるいは、小さな暮らしの箱舟かもしれない。

けれど、それらは常に仮の姿である。「いま、ここにある」という状態にこそ、意味がある。潮が満ちれば、またどこかへ移動していくかもしれない。この可動性こそが、BACKSHORE_99の中核だ。浜辺に固定されながら、どこかへ向かう意思を秘めている。

九十九里浜は、直線のような海岸線を持ちながら、不思議と単調ではない。砂の粒が微妙に変わり、浜の幅が移ろい、風の流れも時間によって違う。ここでは、同じ景色は二度と現れない。BACKSHORE_99は、その「変わりつづける風景」と共に生きる建築だ。

■ 固定せず、ただ置く。
(すみません。文学的に書いていますので「ただ置く」と書いていますが、実際には「アンカーボルト」で固定します。しかし「ボルト」です。ボルトはケミカルではありません。きちんと植え込んだボルトです(爆)。アンカーは大事ですが、ボルトですから取りたい時は取れます。

■ 完全に閉じず、すこし開く。
「少し開いている」感じがとても大事です。そこわかりますか?

■ モジュールでありながら、風景の一部になる。
(工業化システムでも、きちんと計画されたものは「風景に溶け込む」と仙人は考えています。)

建築というより、浜辺に置かれた詩のようなもの。きっちりと計画されすぎた都市の建築とは、まるで反対の位置に立っている。「意識」はまるで反対だという事をわかってもらいたいのです。

ある日、四台のトレーラーが九十九里を発つ。同じ仕様のコンテナだが、行き先はそれぞれ、異なる海辺、異なる都市。ある者はフェスティバルへ、ある者は市場へ、ある者はただ、旅へ出る。けれど数日後、彼らはまたこの浜辺に帰ってくる。この場所に戻ってこられるという前提。それが、BACKSHORE_99を「家」にしている。

このスタイルは、どこか俳句的でもある。余白があり、即興があり、季節とともにある。海と陸の境界で、九十九の波の音に耳を澄ませながら、「建てる」のではなく、「ある」という状態を認める。

それが、BACKSHORE_99という名の建築的行為なのだ。

九十九の波が打ち寄せる、最後の岸辺にて。コンテナは、風景のなかにそっと沈み込み、私たちの時間を、静かに包みはじめる.

BACKSHORE_99に一度おいでなさいませ。別の世界の「コンテナハウス」をご覧いただけます。