コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.06.02
コンテナハウスの事業企画
MOVABLE MARKET LONDON_CONTAINER
■ 基本構成:• 全体は商業施設として機能。• 正面6台のユニットはトレーラー式:イベントや展示、物販のためにキャラバンとして出動可能。• 敷地にいるときは一体化し、最大限の規模で施設として展開。• ロンドンという食文化とストリート文化の交差点にふさわしい、動的かつ柔軟な構成。
■ 建築的特徴:• 秩序だったモジュール配置と、波打つような屋根の造形が象徴的。• 軽快な素材感、そして全体のリズム感のある影と光の取り込み方が秀逸。• 可動式ユニットと固定ユニットの階層的なハイブリッド性。
■ 建築思想:• 「建築が移動する」という思想を突き詰めた、自己拡張型建築。• コンテナ+トレーラー=流通と空間の融合。• 一部が分離し、「宣伝する」「働きに出る」というアイデアは、まさに建築の人格化。
■ ロンドンでの展開意図:• 世界中の食が集まる都市ロンドンにて、日本のローカル食やストリートカルチャーを発信。• 駐在と移動の両方を許容するこの仕組みは、まさにロンドンの**マーケット文化(例:Borough Market、Camden Town)**にフィット。
■ コンセプトキャッチ案:• 「建築は、旅をしながら語る」
• 「出かける建築。帰ってくる施設」
• 「今日はマーケット、明日はロンドンのどこかの公園」
• 「日本の味が、ロンドンを走る」

■ この計画を再起動するとしたら?
もしこの「アンビルドの名作」を、今再び動かすとしたら、以下の展開も視野に入るでしょう:
• ローカル自治体と連携し、移動型マーケットの合法性や営業許可制度を柔軟に運用。
• サステナビリティを意識した脱炭素型トレーラーシステムの導入(EV牽引など)。
• 移動先のSNS投稿が本体施設の広告として機能する、デジタル連動システム。
• 現地クリエイターとの期間限定コラボイベントによるネットワーク形成。

■ 提案書構成案|MOVABLE MARKET LONDON「復活計画」
1. 提案タイトル. MOVABLE MARKET LONDON 2025|「動く日本、動く市場」計画再始動提案書
2. 背景と趣旨 都市における市場は、かつて「広場」と「仮設性」によって成立していた。その柔軟性と流動性が、いま改めて求められている。
本企画《MOVABLE MARKET LONDON》は、日本の食文化と空間文化を、「移動と定着のあいだ」に置く建築装置として提案する。その中心にあるのは、「動けるコンテナユニット」を核とする商業施設群。この計画は一度、実現を逃れたアンビルドの建築として眠っていた。しかし、ロンドンの都市環境の変化、食文化への関心の深化、そして日本発の空間デザインの再評価により、いまこそその潜在力を再始動させる好機である。

3. 計画概要
■ 名称(仮):MOVABLE MARKET LONDON 2025|Mobile Japanese Food & Culture Platform
■ 主目的:
• 日本の飲食・食品系ブランドの「短期出店・巡回営業」のための発信・販売拠点をロンドンに創出。
• 日常は定着型マーケット、イベント時は可動ユニットがキャラバンとして都市を走る。

■ 特徴:
• 全体は1つのマーケット(敷地内常設ユニット)
• 前面6台はトレーラー式で可動(独立営業可能)
• トレーラーは日本の食品ブランド/飲食店が交代で運用可能(週単位・月単位など)
• 敷地内に戻ると「施設の一部」として機能する構造(屋根下へスライドイン)
• トレーラー部はロンドン市内や近郊都市への巡回出店・コラボイベント用として出動可能

■ 想定ロケーション(候補):
• キングス・クロス再開発エリア(文化系複合施設が集積)
• ハックニー・ウィック周辺(インディペンデント系アーティストとの親和性)
• サザークまたはテムズ南岸(観光導線に面したエリア)

4. プログラム構成
エリア名 | 内容 | 可動性 | 備考 |
メインマーケット棟 | 飲食店舗・物販・ラウンジスペース | 固定 | 日本企業の常設出店枠 |
トレーラーユニット(6台) | 屋台、移動販売、イベントスペース | 可動 | 週替り・月替りでローテーション運用 |
イベントパティオ | ワークショップ、試食会、上映会など | 半可動 | トレーラー撤収時は多目的空間に |
カルチャールーム | 展示・シンポジウム・調理教室 | 固定 | 地元大学・日系団体と連携企画 |
裏動線(サービス動線) | 物流・電源・給排水ライン等 | 固定 | トレーラーにも接続可能設計 |

5. パートナー候補と協力体制(抜粋)
分野 | パートナー候補(例) |
設計監修 | 日本の建築家+UK登録建築事務所の共同体制(建築確認のため) |
運営企画 | 在英日系団体、日本政府観光局(JNTO)、JETRO |
出店者 | 日本の飲食企業(例:地方都市のクラフトメーカーや発酵系ブランド) |
キャラバン運営 | 現地イベントプロデュース会社/ケータリング連携業者 |
メディア戦略 | 日本のカルチャー誌、ロンドンのデザインメディア(It’s Nice That など) |

6. 建築と文化の意義
• 「可動建築」と「食文化」の結合:移動屋台の進化系として、都市と文化を結ぶ旅する装置となる。
• コンテナ建築 × 仮設性 × 定着性:ただの展示やイベントではない、「帰ってくる場所」=施設としての人格を持つ空間。
• 日本文化の発信と現地コミュニティの交差: 飲食・発酵・器・音楽・建築を横断する、複合的な日本の再文脈化拠点。
7. 予算・スケジュール(概算)
項目 | 概算金額(£) | 備考 |
設計・建築費 | £800,000~1,200,000 | トレーラー6台含む、現地建築確認対応費込 |
土地取得/賃貸費 | 要交渉 | 候補地による変動大 |
トレーラー製作・牽引車 | £200,000 | 内装・給排水・EV対応含む |
プロモーション費 | £100,000 | オープニング~SNS戦略含む |
初期出店者支援費 | £150,000 | 商品運搬・許認可取得支援等 |
→ 初年度合計予算:概算£1.5M〜2M(3億円〜4億円規模)
8. まとめ
この施設は、単なる「食の出店拠点」でも「おしゃれなコンテナ施設」でもありません。それは、「建築そのものが物語を語る」ということを、最も具体的に体現した動く建築=語る空間=旅する日本の分身です。アンビルドで終わらせておくには、あまりに未来的な構想です。いまこのタイミングだからこそ、「再始動の物語」を描く価値があります。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。