コンテナハウス施工事例
更新日:2025.02.02
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コンテナハウスのワイナリー
コンテナハウスでワイナリーをつくりたいと思われたのは「その防犯性能」だった。ワインは高価な商品です。盗難は許されませんよね。汗の結晶の商品ですから。
このワインを狙うような輩がいるのは情けないし、憤りを感じますが、一度その被害にあったそうなんです。
なので、「泥棒に狙われない頑強さ」をコンテナハウスに求めています。というスタートでした。
もくじ
《風と発酵のあいだに》 建築用新造コンテナと混構造でつくられた、小さなワイナリーの物語
山間の集落、風の通り道にある丘の上。 そこに、三つの鉄の箱が並んでいる。それは、一見すると無機質なコンテナだ。 けれどもその内実は、従来の輸送用コンテナではない。この建築は、「新造建築用コンテナ」で構成されている。つまり、貨物を運ぶために生まれた鉄の箱ではない。 建築として最初から意図され、設計され、製造されたコンテナである。そしてその3台は、互いに異なる構造体とのハイブリッドで建てられている。 鉄骨、木構造、RC基礎といった異素材がひとつの空間を形づくる。そう、この小さな建築群は、ただの機能装置ではない。 混構造という手法で、自然と発酵と建築を結びつける装置なのだ。
鉄でつくる、風の器

コンテナ建築には、ふたつの大きな流派がある。
ひとつは、世界中をめぐった輸送用コンテナをリユースする方法。 もうひとつが、最初から建築として設計・製造される”建築用新造コンテナ”を用いる方法だ。このワイナリーが採用しているのは後者だ。 鉄の箱は、構造計算や法的要件に則って新たに製造され、 断熱、防火、電気配線、空調など、現代建築に必要なすべての仕様をはじめから内包している。再利用ではなく、新しい建築のための鉄の器。 だからこそ、構造と設計に制約が少なく、意匠性も柔軟に展開できる。そしてこのプロジェクトでは、その箱にさらに「混構造」という考え方を重ねた。一棟一棟が、鉄と木とコンクリートを調和させながら、 それぞれに違う役割と空間的キャラクターを持っている。

3つの建築、3つの時間軸
この小さなワイナリーには、3つの建築用新造コンテナがある。 そしてそれぞれが、ワインの製造プロセスにおける異なる時間を受け持っている。
醸造棟(発酵の空間)
冷蔵棟(熟成と保管の空間)
ラウンジ棟(味わいと語りの空間)
醸造棟|果実が風になる場所
醸造棟は、最も生々しい生命の鼓動が感じられる空間だ。 果実が運び込まれ、破砕され、発酵し、香りが立ちのぼる。この棟では鉄と木が美しく交差している。 断熱性能を高めた鉄の構造体に、内装の一部に木材を使用し、温かみと通気性を両立させている。ここでは、「気流」そのものが建築の一部だ。 発酵に必要な空気の流れと、外気の調律を兼ね備えた開口部の設計。 建築がまさに、ワインをつくる「道具」となっている。
冷蔵棟|静かなる時間
次にワインが運ばれるのは、冷蔵棟。この空間は、いわば眠りの部屋である。 発酵を終えたワインが、時間のなかでゆっくりと変化していく。断熱強化された建築用コンテナは、温度制御に最適化されており、 エネルギー効率にも優れた仕様が施されている。「冷やす」というより「守る」空間。 外部環境から遮断されながら、内側では静かに時間が育っている。

ラウンジ棟|味わいと語りの風景
そして最後に迎えられるのが、ラウンジ棟。ここには、ワインを楽しむ人々の声が重なる。 大きく開かれた窓からは、ぶどう畑と海の水平線が同時に見える。鉄と木、そしてガラス。 まるで現代詩の一節のように、それぞれの素材が風景の一部となっている。この空間こそが、建築としての到達点だ。 ワインが語り、建築が語り、人が語る。 それぞれの声が、ひとつの風景をつくりだしている。

ワインは、建築のなかで熟す
このワイナリーのワインは、いくつもの賞を受賞している。 だがその背景にあるのは、職人技術だけではない。建築そのものが、発酵と熟成の装置となっているからこそ、 このワインは、風土と空間をまるごと内包している。ブドウの栽培、収穫、醸造、保管、提供── そのすべてが、この3つのコンテナの中で完結する。しかしそれは単なる省スペースではない。 **「すべてを内包する小宇宙としての建築」**という思想の体現だ。

鉄の思想と、風の詩
このワイナリーで収穫された「ぶどう」。綺麗です。宝石みたいです。

新造された建築用コンテナは、見た目こそ貨物のようでも、 その哲学は、むしろ定着と発酵の建築である。運ばれない。 ただし、その思想はどこまでも運ばれていく。風景と風土を味方にしながら、静かに土地に根を下ろし、 やがてワインというかたちで、世界の食卓に届いていく。この場所には、看板らしい看板もない。 ただ、小さく「ARCHI-BORN WINE」とだけ記されている。建築から生まれたワイン。空間から熟した味覚。それが、この小さな鉄のワイナリーの真価である。
INFORMATION(施設概要)
構成:建築用新造コンテナ3棟(混構造)
面積:約100㎡(3棟合計)
用途:ワイン製造・冷蔵・試飲スペース
特徴:断熱強化・耐火性能・換気制御・ハイブリッド構造
所在地:非公開(予約者のみに開示)
鉄でありながら、有機的なもの。 運ばれないコンテナが、土地とともに発酵する。

全ての飛田がしっかりしまって、「窓」からも進入出来ない大きさ。が基本になりました。
非常にディフェンシブですが、「ワイン工場」らしく「ワインレッド」にしました・
高原の広い敷地に赤が生えます。

コンテナとコンテナの間を「木造」で繋ぎ、その間は「天井高が高く」なっています。それは「作業上求められた天井高さ」を確保するためでした。そのためにここでは「混構造」が採用されました。ワインを醸造するという意味で「自然素材」の環境も作りたかったというのもあります。



一定の低温を確保できる「カーヴ」も作りました。コンテナ2台分の大きさがそのまま冷蔵庫になった感じです。

瓶に詰められたワインたち


