建築を読む、時間を感じる。技術と詩の交差点へ

一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
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更新日:2025.12.28

01_はじめてのコンテナ

おしゃれなコンテナハウス

レイダウンコンテナ美容室開業

第3回:20FEET_レイダウン約16㎡で成立させる「リトリート1席サロンの勝てるプラン」

連載:20FEET_レイダウンコンテナ1台でビューティーサロンを開業する(実録)

この回のゴール 

この回のゴールは、いすみのリトリート型に最適化した「1席サロンの標準プラン」を固定し、保健所相談と見積りに出せるレベルまで整理することです。
結論から言うと、勝てる1席サロンは「豪華に広い」ではなく「動線が迷わない」「湿気と匂いが残らない」「片付けが速い」です。ここが整うと、静けさが商品になります。

今日の結論(先に言い切る) 

勝てるプランの基本形はこれです。
1席に全振り(回転より満足度で単価を守る)
水回りを一箇所に集約(シャンプー・手洗い・トイレ・給湯・清掃)
“静けさの演出”を設計に組み込む(入口、照明、音、匂い)
清掃と補充が3分で終わる収納計画(散らからない店がいちばん強い)

LAYDOWN_container_1台で生rつさせるリトリート型ビューティサロン

前提寸法(計画の基準) 

レイダウンは外形が大きく見えても、内装・断熱・下地で有効寸法は変わります。ここでは打合せ用に次を仮定します。
有効床面積:おおむね16㎡
室内の有効寸法イメージ:長さ約5.8m × 幅約2.7m
ポイント:幅が2.7m台だと「横に広げる」のは無理です。長手方向に“流れ”を作るのが正解です。

リトリート1席のゾーニング(必勝の分け方) 

16㎡は小さいです。だからゾーニングを間違えると一気に窮屈になります。リトリート型は次の3分割が最も安定します。
A. 外部デッキ、入口・切替ゾーン(気持ちの切替)
受付、手荷物、軽い待ち
外の世界を遮断する役割(ここが弱いとリトリートにならない)
B. 施術ゾーン(1席の王座)
セット面、椅子、作業台、動線
ここは広く見せる。余計な物を置かない
C. 水回り・バックゾーン(清掃と衛生)
シャンプー、手洗い、トイレ、清掃、給湯、薬剤・タオル
水回りはまとめるほど工事費とトラブルが減ります

推奨「勝てる標準プラン」(R1)

狙い:静けさ、清掃性、保健所協議の通しやすさ、工事費の読みやすさ。
5-1. 平面の考え方(文章で分かる版)
入口は短辺側に1箇所(引戸推奨、風の巻き込みを減らす)
入口から奥へ、一直線の“流れ”を作る
室内の片側を「サービス壁」にして、水回り・収納・設備を集約
反対側は極力オープンにして、圧迫感を消す
5-2. ざっくり平面イメージ(上が室内・長手方向)
入口側 → 奥
[入口/切替]──[施術1席]────────[シャンプー]──[バック/トイレ]
約1.2m 約2.8〜3.0m 約1.2〜1.4m 約1.2〜1.6m
サービス壁(片側)にまとめるもの
受付兼収納(入口側)
セット面の裏収納(施術ゾーン)
手洗い(施術ゾーン寄りに置くと動線が良い)
シャンプー給排水・給湯(奥側)
清掃用流しまたは清掃用スペース(奥側)
トイレ(奥側、引戸推奨)
5-3. R1が「勝てる」理由
お客様の動きが迷わない(入口→席→シャンプー→席→会計→出口)
作業動線が短い(タオル・薬剤・清掃が一直線)
水回り集約で工事費が読みやすい(配管が短い)
リトリート演出が成立(入口で外界を切り、奥へ行くほど静かになる)

代替プラン(方向性で選べる2案)

R1が標準。やりたいメニューが明確なら、次のどちらかに寄せるのもアリです。
A案:ヘッドスパ特化(リトリート最強)
シャンプーゾーンを少し広げる(照明を落とす、音を吸う)
施術席はコンパクトにする代わりに“体験価値”で単価を守る
向いている人:スパ、頭皮改善、香りと静けさを売る人
B案:カラー比率が高い(匂いと換気を強化)
薬剤調合・保管を奥の水回り側に集約
排気を強め、臭気が施術ゾーンへ戻らないようにする
向いている人:カラーが強い、仕上がり写真を量産する人

必須設備リスト(最小構成と推奨) 

16㎡では「全部入り」は破綻します。最小構成を決め、伸ばす場所は“体験価値に直結する部分”だけ。
最小構成(まず成立させる)
セット椅子 1・シャンプーユニット 1  なのですが、セット椅子とシャンプーユニットが一体になったものがあるのです。
今回はそれを浸かってさらに空間の余裕が取れるようにいたしましょう。
————————
セット面(ミラー)1
手洗い 1(施術用とは別扱いが求められる場合があるので要確認)
給湯設備(電気 or ガス)
換気(24時間換気+局所換気の考え方)
収納(タオル・薬剤・掃除道具)
施術用ワゴン 1〜2
清掃動線(モップ、バケツ、洗剤の置き場が決まっていること)
推奨(リトリート型の満足度を上げる)
入口の切替装置(小さなベンチ、コートフック、手荷物棚)
入口に間接照明(外の光から切り替える)
音対策(吸音材、ドアの気密、床の固さ調整)
香りの設計(ディフューザーは強すぎ厳禁、換気計画とセット)

設備計画の要点(保健所で詰まらないために) 

ここは自治体差があるので断言はしません。その代わり「詰み筋」を避ける要点だけ書きます。
8-1. 給排水
シャンプー、手洗い、トイレ、給湯を近接配置(配管短縮)
浄化槽の場合は放流先の確認が最優先(計画地で要確認)
ぬかるみ地盤は配管や外部機器のトラブルが増えるので避ける
8-2. 電気容量
ドライヤー+エアコン+給湯+照明で容量が不足しやすい
余裕を見て契約容量を設計側で先に押さえる(後から増設は手間と費用が出る)
8-3. 換気(匂いを残さないのがリトリート)
24時間換気は前提(方式は計画により)
薬剤を扱うなら局所排気を“奥側”に寄せる
トイレの臭気が施術側へ戻らないように、排気の位置と給気の取り方を決める

収納計画(16㎡は収納で勝つ)

散らかった瞬間、リトリートは死にます。収納のルールを決めます。
収納の基本ルール
床に物を置かない(掃除の速度が落ちる)
“定位置”を固定する(探す時間は一番ムダ)
見せる収納は最小限(見せるのは世界観だけ)
収納ゾーンの割り当て(例)
入口:お客様の手荷物、コート、傘
施術席裏:タオル1日分、よく使う道具
奥:在庫、洗剤、予備タオル、薬剤ストック
洗濯機を室内に入れるか問題
室内に入れると確実に狭くなる
開業初期は外部洗濯(自宅等)で回し、売上が立ってから最適化するのが現実的
ここは「最初から全部入り」病を避けるポイントです。
10. お客様導線と所要時間(1席の運用を数字にする)
リトリート1席は、回転で稼がない代わりに“満足度で単価”を守ります。所要時間を先に決めると設計がブレません。
例(考え方の型)
1枠:2.0〜2.5時間(カット+ケア+スパ寄り)
1日:2〜3枠が中心(余白を残す)
余白:清掃と換気の時間を含める(これがリトリートの品質)

見積り前のチェックリスト(このまま使ってOK) 

水回りを一箇所に集約できているか
施術席まわりに900mm程度の逃げ動線が取れているか(体感でいい)
入口で外界を切れるか(音・光・視線)
トイレ臭が施術側へ戻らない換気の筋があるか
収納の定位置が決まっているか(床置きゼロにできるか)
据付と外部機器(室外機・給湯器)の置き場が決まっているか
保健所に持っていくラフ図が作れるか(次回以降でテンプレ化する)

次回予告(第4回)

第4回は「デザインの方向性の決め方」です。
リトリート型は、センスよりルールが勝ちます。色数、素材数、照明、サイン、植栽、音。これを“迷わない手順”に落として、誰がやっても上品になる型を作ります。