建築を読む、時間を感じる。技術と詩の交差点へ

一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
技術、哲学、感性、地域——それぞれの断片を物語としてつなぎ
建築という旅のページをめくるように読める"連載アーカイブ"です

更新日:2025.11.23

14_CAFE開業コーチ

コーチング第2章_準備編_001_開業するためには3つの要素がある

B-001 開業するためには3つの要素がある 

開業に必要な要素があります。かなり明確な要素です。起業・独立という実際の段階になればそれらを自分自身でも語れるレベルになってくる必要があるでしょう。

開業を実現させるため、それに向かっていく時、整理して考えると、大きくは3つのポイントがあることが解ります。まずはそれを頭にたたき込んでそれぞれのポイントに対する具体的プログラムを考えていく事が出来ます。3つのポイントがあるとはいえ、そのプログラムは一般的なものがあるわけではなく、個々人で違ったものになっていきます。

ポイント1:スキルの確立

ブーランジェを目指そうがパティシエを目指そうが、カフェ独立を目指そうが、そこでこなすべきスキル(技術)について、独立にたるレベルに達しているかということを自分が納得する状態にある事が必要です。
それを判断する具体的モノサシは社会的にはありません。ただ、パンや菓子、料理どれでも「美味しい」と他人が言ってくれること、それが最低のラインでしょう。あとは、どれくらいの量をこなせるか?どんな種類が出来るのか?それらの種類は自分で納得のいく状態にあるのかなど、あなた自身の判断が大切ですが、物事にはそれぞれの世界で培われた基本が確立されています。それらのチェックは当然こなしておくべき事柄でしょう。

ポイント2:理念の確立 

さて独立はお遊びや趣味ではなく、「事業」です「ビジネス」です。必ず「黒字」で回していかねばなりません。黒字経営を続けるためには事業に対する明確な視点が必要です。その事業に対してあなたは「事業理念」を確立できていますか?「あなたは何の為にパンを焼くのですか?」「あなたは何のために菓子を作るのですか?」「あなたは何のためにカフェを運営するのですか?」その答えがあなたの事業理念です。あなたの中にある理念で、戦い続ける事になる人生を生きていく覚悟が出来ていますか?
理念とは「憲法」のようなものです。すべての決断の礎となるもの、不可逆的な信念です。

1|事業理念は「憲法」、戦略は「法律」、戦術は「運用マニュアル」ということです。
まず整理します。
事業理念(PHILOSOPHY)→ 変えてはいけない「なぜやるのか」の根っこ。→ 価値観・信念・スタンス。
ビジョン(VISION)→ 理念をもとに描いた「こういう未来をつくりたい」という具体的な未来像。
戦略(STRATEGY)→ その未来を実現するための「大きな方向性・勝ち筋」。
戦術(TACTICS / OPERATION)→ メニュー構成、価格、立地、オペレーション、SNS運用などの具体的な打ち手。
カフェ開業の現場では、どうしても「立地」「客単価」「席数」「回転率」「SNS」「内装テイスト」みたいな“戦術レベル”から考えがちですが、
本来は、事業理念 → ビジョン → 戦略 → 戦術の順番で落とすべきものです。

2|CAFE開業における「事業理念」を理論的に分解するとカフェの事業理念は、理論的に分解するとこんな要素で構成されます。
存在理由:なぜ、わざわざカフェという形態を選ぶのか単に「コーヒーが好きだから」ではなく「カフェという場でしか果たせない役割」を言語化する。
価値提供の軸:何を一番大事にするカフェなのか、味なのか、空間なのか、時間なのか、人との関係なのか、挑戦の場なのか。
関わる人へのスタンス:誰に対して、どうありたいのか
お客様、スタッフ、取引先、近隣住民・地域社会、決して譲らないライン:何があってもやらないこと
価格競争だけで生き延びようとしない、スタッフを消耗品として扱わない、「安かろう・悪かろう」の世界に降りない など
時間軸:10年後も変えない前提、流行やトレンドに左右されず、「10年後もそう言い続けるか?」でフィルタリングする。

3|問いベースでつくる「カフェ理念」設計シート
理論を実務に落とすために、カフェ開業者向けの 理念設計の問い を並べておきます。
あなたのカフェが、この街から消えたら、何が失われる?
「このカフェだけは残っていてほしい」と誰に思ってほしい?
その人にとって、ここはどんな“居場所”でありたい?
どんな瞬間に「やっててよかった」と感じたい?
逆に、どんな状態になったら「この店は終わりだ」と判断する?
売上が落ちても、絶対に手放さないものは何?(レシピ/空気感/接客姿勢など)
逆に、理念を守るためなら、何を捨ててもいい?
10年後も変わっていないであろう、あなたの“偏愛”は何?
お客様に、どんな一言を言われたら“最高の褒め言葉”だと感じる?
その一言を引き出すために、毎日どんな判断をしたい?
これらの答えを短い言葉でまとめていくと、事業理念の「原文」が見えてきます。

4|コンテナ×CAFE版・サンプル事業理念
コンテナカフェ/小さな独立系カフェ開業を想定した、サンプルの「理念文」をいくつか置いておきます。
必要に応じて、言い回し変えてください。
サンプル①:場の哲学を前面に出すタイプ
私たちは、「今日、ここに来てよかった」と思える 小さな避難場所 をつくる。
一杯の飲み物と、ささやかな会話と、安心してぼーっとできる時間。
忙しさと孤独が当たり前になった時代に、
人が人に戻れる“余白”を提供することを、私たちの仕事とする。

サンプル②:コンテナ×地域再生タイプ
私たちは、鉄でできたコンテナに、人の記憶と物語 を蓄積していくカフェである。
運ばれるための箱だったコンテナを、「人が集まり、語り合い、次の一歩を考える場所」へと変換し、
この街の未来に、小さくても確かな灯をともしていく。

サンプル③:挑戦する人のためのカフェタイプ
私たちは、何かを始めたい人、何かを続けたい人のための “作戦会議カフェ” でありたい。
コーヒー一杯の対価として、前に進む勇気とヒントを持ち帰ってもらう。
挑戦する人が孤立しない街をつくることを、事業の目的とする。

5|理念から「戦略・戦術」がどう生まれるか(CAFE開業への接続)
たとえば、上記③のような理念を掲げた場合、
戦略・戦術は自然とこういう方向に寄っていきます。
戦略レベル
ターゲット:フリーランス、個人事業主、クリエイター志望、地域の若い経営者
ポジショニング:ただの“おしゃれカフェ”ではなく、「作戦会議の基地」
コラボ戦略:税理士・デザイナー・行政の創業支援担当などとイベント連携
戦術レベル
電源・Wi-Fi完備はマスト
壁一面を「告知ボード」にして、挑戦している人の情報を集約
夜はトークイベント/ミニセミナー/ピッチ会などを定期開催
メニュー名にも「作戦会議ブレンド」「一歩目ラテ」みたいな遊びを仕込む
ここまで落ちて初めて、
「このカフェは何をやるべきで、何をやらないべきか」がクリアになります。


6|まとめ文
最後に、コラムに差し込めるような 締めの一段落 も置いておきます。
事業理念は、立派な額に入れて壁に飾るための文章ではありません。
迷ったときに、静かに自分を正気に戻してくれる“重り”のようなものです。
このメニューを増やすかどうか、この立地で勝負するかどうか、
スタッフをどう扱うか、値上げをするか、店を続けるか──
その一つひとつの判断の手前で、
「そもそも自分は、何のためにカフェという仕事を選んだのか?」
に立ち返らせてくれる、不可逆の信念。
それが、カフェ開業における“事業理念”というやつなのだと思います。

ポイント3:資金の調達 

ポイント1も、ポイント2もクリアできる技術と考え方があなたの中に確立されたとしましょう。では最後に残るのは「店」をつくるための、様々な事に取り組む資金です。自己資金だろうが、借り入れだろうが、親の金であろうが、あなたは「店」をつくるための資金を調達できる状態になければなりません。基本的には「自己資金」と「公的資金の借り入れ」を合わせてスタートというのが一般的です。1500万~2500万(業態で変化します・グレードで変化します。でも個人事業として事業的に安全に成り立つためには1500万~2000万程度で納めたい)の資金を集めるめどは立っているでしょうか?

夢を語る話ですが、実際に動き出すと「夢」のような話ではなく、現実にこなしていくタイトな話ばかりになります。それはそうですね。店を作ることはあなたの「夢」のスタートポイントをつくるだけの話で、それから先の運営の中で「夢」を実現させていくのですから。上記の3つのポイントを頭に入れて「今いけるのか?」自分に問いかけてみてください。

本日のコーチ B-001

ポイント1:スキルの確立
ポイント2:理念の確立
ポイント3:資金の調達
最も大事なポイントです。どれかが欠けているなら、今開業の時期ではありません。

「開業するためには3つの要素がある」のQ&A_10項目を発表

Q1. カフェ開業に「事業理念」って本当に必要ですか?
A. 必要です。
立地や内装、メニューは数年で変わりますが、「何のためにこの店をやるのか」という軸は、一度決めたら長く効き続ける“重り”になります。
値上げするか、営業時間を変えるか、スタッフを増やすか──迷ったときの「最後の判断材料」になるのが事業理念です。

Q2. 事業理念とコンセプトはどう違うのですか?
A. ざっくり言うと、
事業理念:店をやる“理由・信念”
コンセプト:お客様にどう見せるかという“表現・パッケージ”
です。理念が「心臓」なら、コンセプトは「服装」。
服はトレンドに合わせて着替えていいですが、心臓まで入れ替えたら別の店になってしまいます。

Q3. 事業理念はどのくらいの長さで書けばいいですか?
A. まずは 一文〜三文程度で十分です。
大事なのは「長さ」ではなく、「自分で読んで、腹の底から『そうだよな』と言えるかどうか」。
あとからパンフレット用・WEB用に、少し長いバージョンを派生させればOKです。

Q4. お金のことも事業理念に入れていいのでしょうか?
A. 入れていいし、むしろ正直に入れた方が健全です。
「安売りはしない」「スタッフにもちゃんと還元できる利益構造をつくる」など、お金に対する姿勢も店の価値観です。
キレイごとだけの理念は、現場でまず自分が守れなくなります。

Q5. まだ自分の“やりたいこと”がぼんやりしています。そんな状態でも理念はつくれますか?
A. つくれます。
その場合は、「やりたいこと」ではなく、まず “絶対にやりたくないこと・譲れないこと” から書き出すのがおすすめです。
NGラインをはっきりさせると、自分の中の“芯の部分”が見えやすくなります。

Q6. 事業理念は途中で変えてもいいのでしょうか?
A. 基本スタンスは「滅多なことでは変えない」です。
ただし、経験を重ねる中で「最初の言葉は甘かったな」「本当はこういうことがやりたかったんだ」と気づくこともあります。
そのときは“逃げの改訂”ではなく、より本音に近づけるための改訂ならアリです。

Q7. スタッフにも事業理念を共有した方がいいですか?
A. 絶対に共有した方がいいです。
理念を知らないスタッフは、「なんとなく怒られないライン」を探しながら働くしかありません。
「この店は、こういう時にこういう判断を大事にしているんだよ」と伝えておくと、オーナー不在のときこそ理念が力を発揮します。

Q8. カフェの立地や商圏と、事業理念にはどんな関係がありますか?
A. 事業理念は、「どんな人にとって、どんな店でありたいか」を決める土台です。
その理念に合わない立地を選ぶと、最初から“逆風ハンデ戦”になります。
逆に、理念がハッキリしていると、「この理念なら、この街のこの通りだな」と立地選びの基準もブレません。

Q9. コンテナを使った小さなカフェにも、立派な理念なんて必要でしょうか?
A. 店のサイズは関係ありません。
むしろ 小さい店ほど、オーナーの理念=店の空気 になります。
コンテナ1台のミニマムなカフェだからこそ、「なぜここに、なぜこの形で存在しているのか」を言葉にしておくと、ファンの付き方が全然違ってきます。

Q10. 事業理念をつくるとき、一番大事なチェックポイントは何ですか?
A. シンプルに、これです。
「この文章を10年後の自分が読んでも、まだ“そうだ”と言えるか?」
カッコつけた言葉や流行りのフレーズではなく、
10年後の自分にも胸を張って見せられる“本音”になっているか。
そこをクリアしたら、その理念はかなり強いです。