建築を読む、時間を感じる。技術と詩の交差点へ
一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
技術、哲学、感性、地域——それぞれの断片を物語としてつなぎ
建築という旅のページをめくるように読める"連載アーカイブ"です
更新日:2025.07.26
14_CAFE開業コーチ
CAFE_コンテナ開業のためのコーチからの50の手紙_4/50
A-004 成長は最大の攻撃力!忘れないで
──開業は「終わり」じゃない。「始まり」なんだ。
もくじ
カフェを開くことが夢なんです
多くの方がそう語ります。それはとても素晴らしいこと。ですが──
開業はゴールではありません。むしろ、スタートライン。
ここを勘違いしたまま突っ走ると、「夢のカフェ」は意外と早く現実に飲み込まれてしまいます。
今回は、あなたがこれから経営者として生きていくうえで、とても重要なキーワード、「成長」について深く考えていきましょう。
開業は「夢のゴール」ではない
店づくりのワクワク、内装の打ち合わせ、メニュー開発にSNS発信…。
それらすべての準備を経て、いよいよオープン!
「やった、ついに店ができた!」と達成感に包まれるでしょう。
でも、ちょっと待ってください。
あなたがこれから経営者として生きるなら、その瞬間が“スタート地点”です。
例えるなら、今までの準備期間は“助走”。オープンは“スタートラインに立った瞬間”。
本当の勝負はそこから始まります。
そして勝負に勝ち続けるために、絶対に必要なことがあるんです。
それが──「成長」です。

成長とは、“生き延びる力”である
成長というと、何か特別なプロモーションを打ったり、派手に事業拡大することをイメージするかもしれません。でも、実際の成長はもっと地味で、継続的なものです。
売上を少しずつ伸ばす
商品の質を高める
接客力を上げる
コストを見直す
スタッフがスキルアップしていく
こういった「日々の積み重ね」が成長であり、最大の攻撃力なのです。
なぜ攻撃力か?
成長は、他の誰にも奪えない「前進のエネルギー」だからです。
たとえライバル店が増えても、時代が変わっても、自分たちが進化し続けていれば、必ずお客様は見てくれます。逆に、変わらない店はあっという間に忘れられます。
成長が止まった瞬間、下り坂が始まる
「別に売上が減らなきゃいいんじゃないの?現状維持でもOKじゃない?」
はい、その気持ちもわかります。でも、ここにひとつの“罠”があります。
現状維持というのは、幻想です。
現代のビジネス環境では、「止まる=後退」なんです。
なぜなら、周囲は確実に進化しているから。
あなたがじっとしていても、ライバル店は新商品を出してくるし、SNSでは常に新しいカフェが話題になります。仕入れ先も価格も、市場の動きも、止まってなどいません。
つまり、「下りのエスカレーターを上ろうとしている」ような状態です。
一生懸命登り続ければ、なんとか現状維持
ペースを上げれば、成長できる
立ち止まった瞬間、ズルズルと下っていく
この構造を理解していないと、いつの間にかお店はお客様にとって「古くて退屈な店」になってしまいます。

成長の種類と、そのエンジンたち
成長にはいろいろな“入口”があります。以下はその代表例です:
スキルの成長
・調理の効率化
・新商品の開発
・ラテアートや焙煎技術の向上
接客力の成長
・常連客への気配り
・ミスの減少
・クレーム対応スキルの成熟
コスト管理の成長
・原価の見直し
・仕入れ単価の交渉
・無駄な発注の削減
マーケティングの成長
・SNSでの認知拡大
・メニュー改訂による客単価向上
・イベントによる新規顧客の獲得
ハード面の成長
・店内レイアウトの改良
・什器や内装のブラッシュアップ
・テラス席の導入など
これらすべてが、“変化”によって生まれる「成長」です。

成長こそが、スタッフのモチベーションをつくる
もうひとつ大切な視点があります。
それは、スタッフのモチベーションも「成長」によって生まれるということ。
毎年少しずつでも昇給がある
自分のスキルが評価される
新しい仕事を任せてもらえる
こういった変化の中に、人はやりがいを見つけます。
変わらない職場には“退屈”しか残りません。
あなた自身も同じ。毎年同じ売上、同じ収支、同じ日常──
気づかぬうちに疲れていき、「なんのためにカフェをやっているのか」が見えなくなってしまいます。
成長し続ける者だけが、生き残る
つまり──
成長し続ける人だけが、この世界で生き残っていける。
「今日はまあいいや」が続けば、やがて「店の魅力がない」と言われるようになります。
「このままでいい」と思った瞬間に、後ろから追い越されるのがこの業界です。
だからこそ、日々変化を恐れず、成長の種を見つけて、水をやっていくこと。
それが、経営者として最大の“武器”になります。
本日のコーチング004
成長は最大の攻撃力。
努力を止めた瞬間から、あなたの店は下り坂を歩き始めます。
けれど、ひとたび成長の流れに乗れば、あらゆるものが好転していきます。
成長し続ける人に、敵はいません。
開業はゴールではない。
「成長」というエンジンを積んで、今日から走り出しましょう。
Q&A 厳選10選(A-004「成長し続けること」について)
Q1.「カフェを開くこと」が夢のゴールではない、というのはどういう意味ですか?
A.多くの人は「オープンした瞬間」をゴールだと感じますが、経営者の視点から見ると、開業はスタートラインです。準備期間は助走、本当の勝負はオープンしてからの日々の運営・改善・成長の中にあります。店を続け、育て、愛される場所にしていくプロセスこそが本番であり、そのために必要なのが成長という視点です。
Q2.「成長」と聞くと大きな店舗展開を想像してしまいます。小さなカフェにも成長は必要ですか?
A.必要です。ここでの成長は、店舗数を増やすとか売上を一気に倍にするといった派手な話だけではありません。売上を少しずつ伸ばす、商品の質を安定させて高める、接客を洗練させる、コストを見直す、スタッフのスキルが上がるといった地に足のついた変化も立派な成長です。小さなカフェほど、こうした日々の成長が生き残る力になります。
Q3.「現状維持は幻想」とありますが、どうして止まるだけで後退になるのでしょうか?
A.あなたが止まっていても、周囲の環境は動いているからです。ライバル店は新メニューを出し、SNSでは新しいカフェが次々と話題になり、原材料費や人件費も変化していきます。その中で自分だけ何も変えなければ、相対的に魅力が落ちていきます。下りのエスカレーターを想像してください。立ち止まると自然に下がっていきますが、歩き続ければやっと現状維持、ペースを上げてやっと上に進める、というイメージです。
Q4.成長し続けるために、まずどんなところから手をつければいいですか?
A.入口はいくつもありますが、最初の一歩としておすすめなのは「数字」「商品」「接客」の三つを毎月一度見直すことです。売上や客数などの変化を確認し、看板商品やセットメニューの反応を振り返り、接客でうまくいったこと・うまくいかなかったことを書き出します。そこから、「来月はこれを一つ変えてみよう」という小さな改善テーマを決めるだけでも、成長のペースが生まれます。
Q5.成長のためにやることが多すぎて、何から手をつければいいのか分かりません。優先順位の決め方はありますか?
A.基本は「影響度」と「実行しやすさ」の掛け算で考えます。売上やお客様満足度への影響が大きく、かつすぐに実行できるものから手をつけましょう。例えば、原価の大きいメニューの見直しや、オペレーション上の無駄な動線の改善、よく出るメニューのブラッシュアップなどは、効果が大きく手もつけやすい領域です。一方、大規模な改装やメニュー全面リニューアルのような重いテーマは、計画を分割して段階的に進めるのが現実的です。
Q6.成長が止まると、具体的にどんなことが起こりますか?
A.最初は目に見えにくいですが、じわじわと影響が出ます。メニューが古く感じられる、店内の雰囲気が時代遅れに見える、新規客が減る、常連さんが別の店にも流れ始める、スタッフの表情から張りが消えていく、といった変化が少しずつ積み重なっていきます。数字の上では「なんとなく売上が伸びない」「気づいたら前年割れが続いている」といった形で表面化し、それを挽回するには大きなエネルギーが必要になります。
Q7.スタッフのモチベーションと成長には、どんな関係がありますか?
A.人は自分が前に進んでいる実感があるときに、やりがいを感じます。少しずつでも昇給がある、自分のスキルが評価される、新しい役割を任せてもらえる、店全体が良くなっていることを実感できる、といった経験がスタッフのモチベーションを支えます。逆に、何年経っても同じ仕事・同じ評価・同じ売上だと、やる気は確実に落ちていきます。スタッフの成長プランを描くことも、経営者の大事な仕事の一つです。
Q8.毎日忙しくて、成長どころか目の前のことで精一杯です。そんな状態でもできることはありますか?
A.あります。忙しい時期だからこそ、「小さな振り返り」と「一つだけ変える」を意識してください。閉店後や週に一度、5〜10分でいいので、「今週うまくいったこと」「改善したいこと」を箇条書きにし、その中から来週一つだけ試す改善を決めます。例えば、朝の仕込み手順を1つ入れ替える、レジ前のポップを変える、SNSの投稿頻度を週1回から週2回にする、といった小さな変化でも、積み重なれば大きな成長につながります。
Q9.成長し続けることに疲れてしまいそうで、少し怖さも感じます。どう向き合えばいいですか?
A.「常に全力疾走し続ける」という意味での成長を目指す必要はありません。大事なのは、止まらないことです。走る時期もあれば、歩く時期もあっていい。ただ、完全に立ち止まるのではなく、ペースを落としてでも一歩ずつ前に進むイメージを持つと、気持ちが楽になります。また、成長の内容も売上だけでなく、自分の働き方の改善や、店の仕組みの効率化など、オーナー自身が楽になる方向の成長も立派な前進です。
Q10.今日のコーチング004として、今すぐできる「成長アクション」を一つ教えてください。
A.今日できる一歩としておすすめなのは、「成長の種を三つ見つけて、ノートに書く」ことです。店の中をぐるっと見回して、商品・接客・コスト・SNS・レイアウトなどの中から、「ここを少し変えたら良くなりそう」というポイントを三つだけピックアップし、簡単なメモをつけておきます。その中から一つだけ、明日実行する。これを繰り返すだけで、店は確実に変化し始めます。成長は特別なイベントではなく、こうした小さな一歩の連続だと考えてください。
