建築を読む、時間を感じる。技術と詩の交差点へ
一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
技術、哲学、感性、地域——それぞれの断片を物語としてつなぎ
建築という旅のページをめくるように読める"連載アーカイブ"です
更新日:2025.07.24
14_CAFE開業コーチ
CAFE_コンテナ開業のためのコーチからの50の手紙_2/50
第1章_基礎編 A-002_技術力がベースであることを忘れるな
──カフェという「夢」に、リアリティというスパイスをひとさじ。
カフェをやりたい。そう思った瞬間から、あなたの頭の中にはきっといくつもの景色が流れ出したことでしょう。木漏れ日がさす窓際席で本を読むお客さん。ラテアートに驚いて笑うカップル。ゆったりとジャズが流れるカウンターで、一人だけど心地よく過ごす人の姿……
うん、素晴らしい。どれもカフェという空間が持つ魅力です。でもね。その美しい夢を「現実」に変えるために、まず、ひとつだけ確認しておきたいことがあります。技術力は、ベースです。いや、これはほんとに。
もくじ
カフェは「商品提供だけ」では成立しない、でも…
まず大前提として、カフェというのは「モノ」だけで完結する世界ではありません。
空間、接客、演出、音楽、香り、時間帯、そしてストーリー性──
それら全体が織りなす“体験のパッケージ”が、お客様の満足を生み出します。
しかし、いくら雰囲気が良くても、
「パンケーキがパサパサだった」とか
「ラテがぬるくて牛乳臭い」とか、
「サンドイッチの具がスカスカ」なんてことになったら……?
一発アウトです。
カフェは飲食業である以上、まず「提供するモノ=商品」に対して、一定以上のクオリティが求められます。
この“当たり前”を、どうか忘れないでください。
どんなに素敵な夢があっても、その土台は「技術力」に支えられているのです。
そのスキル、もう持ってますか? それとも、これからですか?
さて、あなたにはいま、どんなスキルがありますか?
コーヒー豆を焙煎できますか?
美しいラテアート、描けますか?
焼き菓子、パン、軽食──自信を持って提供できますか?
ここで、怖がらないでください。
「ありません!」でも、ぜんぜん大丈夫です。
というのも、今この段階で重要なのは「技術力が足りないこと」ではなく、
「自分に何が足りていないかを正直に把握しているかどうか」なのです。
技術の入り口は、いつでもどこにでもある。
今までの経験は人それぞれ。
専門学校に通った。
人気カフェで長くアルバイトした。
趣味で始めたお菓子作りがプロ顔負けの域に達した。
独学でひたすら本を読み、動画を観て研究した。
どれも立派な「入り口」です。
重要なのは、「いまのあなたが提供したい商品」に対して、どれだけ自信を持てているかです。
なにを看板商品にするつもりなのか?
コーヒー? フード? スイーツ? 空間と音楽?
そして、その提供物に必要なスキルは、今、どれくらいありますか?
冷静に、自分自身を評価してみてください。
オーナーシェフじゃなくても「目」は必要
「いや、自分は調理をやるつもりはないんです。オーナーですから」
はい、それも大正解です。
経営に集中し、技術は人に任せる。それもひとつの立派な選択です。
でも、ここでまた大事なポイントがあります。
技術が無いなら、技術を持つ人を「正しく見抜く目」を持たなければいけません。
つまり、スキルを評価できる最低限のリテラシーは必要なのです。
「すごそうな人だったから…」でスタッフを選んでしまい、
フタを開けたら「ただの自己流」だった、なんて話はよく聞きます。
外注するにせよ、採用するにせよ、オーナーには技術を“判断する眼”が求められます。
責任は、最終的にはあなたに返ってきますからね。
技術の不安があるなら、「磨けばいい」
じゃあ、今スキルが足りないなら、どうするか?
答えはシンプル。**「磨く」**んです。
方法はいくらでもあります。
専門学校の夜間クラスに通う
ワークショップに参加する
現場で働いて盗む
独学で突き詰める(最近はYouTubeも凄い)
新商品の開発トレーニングを受ける
SNSで発信しながら試作を重ねる(インスタは練習場にもなる)
実際、既にカフェを運営している多くの方々も、オープン後もずっと学び続けています。
「一生修業」とは、まさにこのこと。
飲食業の世界に「完成」はありません。
スキルは磨けば磨くほど光り、あなたのブランド価値になります。
スタートラインはみんなバラバラ
現実には、開業時点でのスキルレベルは、本当にバラバラです。
ホテルで10年修行した人
名だたる人気店を渡り歩いた人
憧れの店に入れず、悩んで独学で始めた人
フルタイム仕事をしながら夜間の学校に通った人
いろんな人がいます。いろんな道があります。
でも、共通しているのはたった一つ。
強い想いと、研究心を持っていたこと。
スタート時点のスキルが完璧でなかったとしても、開業後に爆発的に成長していく人は少なくありません。
なぜなら、自分の店を持つということは、毎日が“実践”だから。
毎日がトレーニング。
お客様の反応が、あなたへのフィードバック。
昨日より今日、今日より明日。技術は日々、育ちます。
ただし、リスクもある。
とはいえ、やはり技術が不安なまま開業するのはリスクを伴います。
商品のクオリティが安定しない
クレームが発生する
店の評判が低下する
自分自身が不安定になってしまう
特に、SNSの発信力が強い時代。
クチコミやレビューでの評価は、スタートダッシュに大きな影響を与えます。
「失敗してから磨く」では、ダメージが大きすぎることもあるのです。
結論:「納得できるスキル」を持っているか?
あなた自身が、自分の技術に納得できているか。
これは他人には決められない問いです。
自分だけが、自分のスキルに対してYesと言える瞬間があります。
これなら自信を持って出せる
自分の想いを商品に込められている
失敗しても立て直せる力がある
そう感じたら、次のステージ「独立開業」へ踏み出してもよいタイミングです。
もちろん、どれだけ準備しても不安はあるでしょう。
でも、その不安と付き合いながらでも、「行動」を起こすしかないのです。
今日のコーチング002
技術力がベースにあるのは確か。
そのスキル獲得のためのプログラムを自分で作ろう。
ある時点でそのスキルを信じて「独立開業」というモードに入るのだが、
その判断は誰でもなく、自分自身がやるしかない。
一度行動を起こしたら、自分を信じて突き進もう。
店の看板になるのは、あなた自身の「手」なのです。
Q&A 厳選10選(A-002 技術力がベースであることを忘れるな)
Q1.カフェ開業において、なぜそんなに技術力が重要なのですか?
A.カフェは空間や音楽、ストーリーなど「雰囲気」も大事ですが、土台はあくまで飲食業です。パンケーキがパサパサ、ラテがぬるい、サンドイッチの具がスカスカ、といった状態では、どれだけ内装が素敵でもお客様の評価は一瞬で落ちます。「商品クオリティが一定以上あること」は、夢を現実に変えるための最低条件だと考えてください。
Q2.今の自分には技術力が足りない気がします。それでも開業を目指していいのでしょうか?
A.目指してかまいません。重要なのは「技術が完璧かどうか」ではなく、「自分に何が足りていないかを正直に把握しているかどうか」です。コーヒー、スイーツ、軽食、それぞれについて現在地を冷静に評価し、「どの分野をどれだけ磨く必要があるか」を自覚できていれば、十分スタート地点に立っています。
Q3.技術の入り口はどこからが理想ですか? 専門学校に行かないとダメですか?
A.入り口はどこでも構いません。専門学校、人気カフェでの勤務、趣味の菓子作りからの発展、独学、動画や本での研究など、ルートは人それぞれです。大切なのは「どのルートを通ってきたか」ではなく、「今、自分が看板商品にしたいものを、自信を持って出せるレベルにあるかどうか」です。入り口は違っても、技術は後からいくらでも補強できます。
Q4.オーナーになるつもりで、キッチンには入らない想定です。それでも技術力は必要ですか?
A.自分の手で作らないとしても、「技術を見抜く目」は必須です。スキルがないなら、スキルを持つ人を正しく評価するリテラシーが必要になります。外注先やシェフ候補が本当にプロなのか、自己流なのかをある程度見分けられないと、気づいたときにはクオリティがガタガタ、ということも起こり得ます。オーナーであっても、最低限の基礎知識とチェックする視点は身につけておきましょう。
Q5.技術力に不安があります。具体的に、どんな磨き方がありますか?
A.方法はいくつもあります。夜間の専門学校に通う、ワークショップや短期講座に参加する、気になるカフェで実際に働いて現場で盗む、動画や本で独学しながら試作を繰り返す、新商品開発のトレーニングを受ける、インスタなどで発信しながら反応を見て改良するなどです。どれか一つではなく、自分の生活スタイルに合わせて複数を組み合わせると、技術の伸びが早くなります。
Q6.開業時点で技術が完璧でないと、やはり無謀でしょうか?
A.「完璧」を求める必要はありませんが、「自分で納得できるライン」は持っておいた方が良いです。ホテルや有名店での10年修行がなくても、強い研究心と試作の積み重ねがあれば、開業後にぐんぐん伸びる人も多くいます。ただし、明らかに基礎ができていない状態で見切り発車すると、クレームや悪い口コミでスタートダッシュからつまずくリスクがあるのも事実です。
Q7.技術不足のまま開業した場合、どんなリスクがありますか?
A.商品のクオリティが安定しない、味や温度のばらつきからクレームが出る、レビューや口コミでの評価が低くなる、といった直接的なリスクがあります。また、「自分でも技術に不安がある」ことは、接客や意思決定の自信のなさにもつながりやすく、結果として店全体の雰囲気にも悪影響を及ぼします。特にSNSの拡散力が強い今は、一度ついたマイナスの評判を取り返すのに、時間もコストもかかります。
Q8.開業してから技術を磨いていく、という考え方はアリですか?
A.アリですが、「最低限のラインをクリアしたうえで」という条件付きです。自分の店を持つということは、毎日が実践でありトレーニングです。お客様の反応がそのままフィードバックになりますから、開業後に技術が爆発的に伸びる人は多くいます。ただ、「最初から明らかにレベル不足」の状態で出るのは危険です。開業前にできるだけ地ならしをし、開業後は実戦の中でさらに磨く、という二段構えで考えましょう。
Q9.周りのカフェオーナー志望者と比べて、自分のスタートが遅い気がして焦ります。
A.スタートラインは本当に人それぞれです。ホテルや有名店で長く経験を積んでから独立する人もいれば、会社員を続けながら夜間学校に通う人、子育てが落ち着いてから挑戦する人もいます。大事なのは「誰より早く開業すること」ではなく、「自分が納得できるスキルと準備を整えたうえで、腹を決めてスタートを切ること」です。他人の時間軸ではなく、自分の準備と覚悟の状態を基準に判断しましょう。
Q10.今日からできる「技術力アップのためのコーチング課題」は何ですか?
A.まずは、次の二つを紙に書き出すことをおすすめします。
1)自分のカフェで「看板商品」にしたいものは何か(コーヒー、スイーツ、軽食など具体的に)
2)その商品の技術に関して、今できること・できないこと・不安なことを正直にリストアップすること
そのうえで、「できない」「不安」と書いた項目ごとに、具体的な行動(どこで学ぶか、誰に習うか、何回試作するか)を小さく決めていきます。それが、そのまま「自分で作るスキル獲得プログラム」になり、独立開業に向けた現実的な一歩になります。
