コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.07.30

コンテナは地震に強い_連載9

コンテナハウスは地震に強いのか?_7/9(連載)

第6章:暮らしに息づく“安心”という感覚──「強さ」は心を支える構造になる


地震に強い家とは、構造的に「壊れにくい家」である。
それは間違いありません。
しかし、“暮らす”という行為は、数字だけでは測れないものです。
どれだけ構造的に頑強でも、心が落ち着かなければ「安心」ではない。
逆に、数値で語れない感覚的な「守られている」という感情があることで、人はようやく“住まう”ことができるのです。
この章では、構造計算を超えたところにある、「安心」という感覚の正体を掘り下げてみたいと思います。

■ 揺れても、壊れないという“予感”がある家

人間の体は、過去の経験や情報から無意識に危険を察知する能力を持っています。
・「この家、音がミシミシ鳴る」
・「風で揺れてる気がする」
・「なんかこの壁、薄くない?」
こうした“身体感覚”は、実は心理的な安心と直結しています。
そしてそれは、いざという時の冷静さ・判断力・行動力にも影響を与えるのです。
コンテナハウスの堅牢な感触は、そうした感覚レベルでの安心を提供します。
「この壁、厚いな」
「ドアがしっかり閉まるな」
「揺れてもまったく軋まないな」
それらの小さな体感が積み重なって、“壊れない予感”が生まれる。
それは、数値以上の安心材料です。

■ 構造が不安な家は、暮らしまで緊張する

構造が不明瞭な中古住宅や簡易プレハブでは、どうしても「大丈夫かな?」という無意識の緊張が生まれます。
それは暮らしのリズムを乱し、眠りを浅くし、天気予報を見るたびに気持ちがざわつく原因になります。
台風が来る
大雨が降る
地震速報が流れる
そのたびに、「うち、大丈夫かな?」と心配する。
それは、“暮らしの緊張”というストレス状態に他なりません。
これに対して、コンテナハウスが与えるのは「沈黙」です。
何が起きても、“揺らがない”という感覚そのもの。
それが精神を安定させ、暮らしを穏やかに整えていきます。

■ 「災害の不安」がない空間は、子どもにとっても最高の環境

親が不安を感じている家では、子どももまた敏感に反応します。
大きな音で目を覚ます
夜中に怖がって泣き出す
小さな揺れに過敏になる
これは、家の構造や音、揺れ方などの“環境情報”が、子どもの心の安全基地を揺らがせている証拠です。
逆に、コンテナハウスのような重厚で無音な空間は、「安心の巣」そのもの。
構造的な強さは、そのまま子どもたちの心の落ち着きに直結します。
安心して眠れる。
安心して遊べる。
不安がない家族空間は、それだけで立派な“災害対策”なのです。

■ “シェルター”ではなく、“暮らしの器”としての強さ

もちろん、コンテナハウスは災害時のシェルターとしても機能します。
事実、震災直後の仮設住宅として使われた事例や、自治体の防災備蓄庫として採用されたケースも少なくありません。
しかし、私たちが目指しているのは、「防災のために住む家」ではなく、
“防災性能を備えた、日常の美しい暮らし”
です。
つまり、安心とは逃げ込む先ではなく、いつもの場所の延長線上にあることが大切なのです。
揺れても、本棚が倒れない
地震があっても、停電しても、普通にごはんが食べられる
親子で過ごす時間が、いつもと変わらない
そんな“いつも通り”が守られることこそ、本当の意味での安心の本質だと、私たちは考えます。

■ 結論:強い家は、人の心を静かに支える

人は、目に見えない力を感じとります。
そして、暮らしのすみずみに「安心」が漂っているとき、人はようやく本当の意味で“くつろぐ”ことができます。
地震に強い構造。
重厚で変形しないシェル。
剛接合と一体化構造。
それらは、単なる「建物の強さ」ではありません。
それは、**人間の心にまで届く“構造としての安心”**なのです。
コンテナハウスは、決して無機質な鉄の箱ではありません。
それは、あなたの暮らしを守るために最適化された、静かな守護者なのです。


次章では、最後の総まとめとして「非常時にこそ威力を発揮する“可変建築”としてのポテンシャル」を取り上げます。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。