コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.07.30

コンテナは地震に強い_連載9

コンテナハウスは地震に強いのか?_6/9(連載)

第5章:中古コンテナの危険性と“新造”の意義



「コンテナハウスって、中古のコンテナをリフォームしてるんでしょ?」
──そう誤解されている方が、いまだに少なくありません。
しかし、それは致命的なミスリードです。
とりわけ「地震に強い家」を真剣に求めるのであれば、中古の輸送コンテナを使った“なんちゃって住宅”は絶対に避けなければならないと言い切れます。
この章では、中古コンテナの構造的な問題点を明らかにしながら、なぜ私たちが「建築用新造コンテナ」だけにこだわるのか、その理由を解説します。


■ 中古コンテナの正体は“輸送器具”
まず知っておくべきは、いわゆる中古コンテナ(ISO海上コンテナ)は、建築資材ではなく「貨物輸送の道具」であるという事実です。
世界の物流拠点を何十回も航行
港湾で繰り返し積み降ろし
クレーン吊りやリフト移動による衝撃
海水・塩害・紫外線・凍結などの過酷な環境
有害物質や危険物の輸送に使われるケースも
このような環境を経たコンテナが、見た目だけキレイに塗装されて住宅に転用される──それはとても“住まい”と呼べる代物ではありません。
とくに地震においては、構造体の“目に見えないダメージ”が致命傷となります。


■ 錆・歪み・金属疲労──「構造的信頼性ゼロ」の世界
中古コンテナが地震に弱い理由は、単に“古いから”ではありません。
最大の問題は、構造体の変形や強度低下が検査不能な状態であるという点にあります。
外観はきれいでも、内側の鋼板に微細な割れ
底部パネルに局部的な腐食や穴あき
コーナーポストが若干でも傾いていれば、建物全体に“ねじれ”が生じる
これらは、どれも**中古コンテナを建築に使った瞬間に“耐震設計の根拠が消える”**ということを意味します。
また、多くの中古コンテナはISO基準の鉄板厚(1.6〜2.0mm)以下の部位があり、しかも熱溶接による再加工を想定していない構造です。
つまり、「家」にするために加工するたびに、強度がどんどん失われていくのです。


■ 建築基準法を“満たせない”ことも
もうひとつの根本的な問題は、中古コンテナを使った住宅は建築基準法を満たせない可能性が極めて高いということです。
材料の規格不明(JIS規格に該当しない鋼材)
板厚不足
溶接履歴・検査履歴なし
耐火性能未確認
構造計算不可能(特に連結時)
つまり、確認申請が下りない/違法建築となる可能性が高いのです。
これが意味するのは、単に「建てられない」ではなく、“売却できない・保険に入れない・融資が受けられない・資産にならない”という負の連鎖です。


■ 対して「建築用新造コンテナ」とは?
一方、私たちが手がける「建築用新造コンテナ」は、すべて建築法規に準拠した設計と製造がなされています。
使用鋼材はJIS規格をクリア
板厚、補強材、塗装仕様すべて設計段階から規定
工場溶接+製品検査済
耐震構造の前提で構造計算が可能
設計図面・性能証明書・製造履歴あり
確認申請を前提とした正規建築資材
つまり、最初から**「住まいのために設計された箱」**であり、そこには一切の“偶然”も“流用”もありません。


■ 結論:地震に強い家は、「最初から正しく作られた家」だけ
いくら“コンテナ”という言葉が同じでも、中古コンテナと建築用新造コンテナは、構造的にはまったくの別物です。
見た目が似ていても、その中身は「戦車」と「空き缶」ほど違うといっても過言ではありません。
地震は見た目に騙されません。
構造が甘ければ、確実にそこから壊れていきます。
だからこそ、私たちは常にこう伝えています。
「コンテナハウスは、建築用新造コンテナでしか成り立たない。」
「それ以外の選択は、住まいではなく“危うい箱”を選ぶことと同じです。」
本物の強さは、いつも“正しい設計”の中にしか宿りません。
そして、それはあなたの命と暮らしを守るために、絶対に譲れないラインなのです。


次章では、少し構造から離れ、「暮らしの感覚としての“安心”とは何か?」という情緒的・人間的な側面に踏み込みます。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。