コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.08.08
コンテナ価格ブック(連載6)
Container House Price Book | 価格という名の旅のはじまり_002
それでは、【第1章|本体価格のリアル】の本編第一セクションとなる:建築用コンテナとは何か?「輸送用」と「建築用」はまったくの別物である。

もくじ
■「コンテナ」と一口に言っても、同じではない
コンテナハウスに興味を持つ多くの人が、最初につまずくのがこの点だ。
「コンテナって、どこで買えるんですか?」
「中古で安いのを探して、それをリフォームすればいいですよね?」
その問いの裏には、ほとんどの場合、「輸送用コンテナ」=「建築用コンテナ」という誤解が潜んでいる。
結論から言えば、この2つはまったくの別物である。

■輸送用コンテナの正体:物流のための「鉄の箱」
「輸送用コンテナ」とは、国際海運で使用されるISO規格の鋼製コンテナであり、
コンテナ船、鉄道、トレーラーなどで貨物を運ぶために作られたものだ。
代表的な仕様:輸送用コンテナは、“運ぶ”ことが目的であり、人が中で暮らすことは前提とされていない。
断熱もなければ、換気計画もない。窓が開けられる強度設計にもなっていない。

■建築用コンテナとは?──「住む」ために作られた構造体
一方、私たちが扱っている建築用コンテナは、まったく別の思想で生まれている。コンテナサイズの建築用モジュールが設計できれば、コンテナ物流のシステムが使えるようになる。コンテナ物流のロジスティクスの上にある「コンテナ建築システムになる」という新たな次元に到達したものが「建築用コンテナ」なのだ。これは「株式会社デベロップ」と「現代コンテナ建築研究所」が先駆けて作り出したものである。日本の特殊な建築基準法の事情の上に出来た建築システムだ。こちらは、建築基準法を満たし、申請可能な建築物として設計された鉄骨構造体である。

建築用コンテナの主な特徴:
項目 | 輸送用コンテナ_20FEET | 建築用コンテナ_20FEET |
用途 | 物流用 | 建築・住宅用 |
規格 | ISO(国際物流) | JIS(建築基準法)対応 |
構造 | パネル溶接・すみ肉溶接 | フルペネ溶接+構造計算 |
開口 | 加工に強度リスクあり | 開口対応設計済み |
断熱 | なし | 内断熱 or 外断熱設計可 |
材質 | 鉄板厚1.6~2.0mm | 鉄骨柱梁(重量鉄骨) |
本体価格目安 | 中古:10~50万 | 新造:200~300万円 |
■なぜ建築用コンテナは「高い」のか?
「えっ、なんでそんなに高いの?」という反応もよくある。
だがそれは、『住宅としての性能と構造を持つための“宿命的コスト”』と言ってよい。
以下のような要素がコストに組み込まれている:
これらを踏まえれば、建築用コンテナの価格帯(300〜600万円)は、むしろ適正水準であるともいえる。

■なぜ「中古コンテナで建築」はおすすめできないのか?
安く済ませる方法として、「中古コンテナを改装して家にする」という選択肢がある。
だが、以下のような構造上・法的リスクが大きすぎるのだ。
仮設の倉庫や事務所、物置程度なら成り立つかもしれない。
しかし、人が長く住む空間を“安かろう悪かろう”で作るべきではないと、私たちは考えている。
(日本の法のシステムをクリアしたものでないと日本国の庇護を受けられない)

■「建築用コンテナ」は、もはや“建築部材”である
言ってしまえば、現代の建築用コンテナは、もう「箱ですらない」。
それは、設計と施工によって生まれる、“構造ユニット”という名の建築部材なのだ。
鉄骨・屋根・床・壁・開口・防火・耐震──
すべてが計算され、設計され、施工される。
コンテナを使った建築は、単なる「ボックスの活用」ではなく、
『建築技術とデザインによって再解釈された“箱”』なのだ。
再解釈は「意識上の話」であって、事実は別の流れで作られている

■まとめ:価格の話をする前に「前提」を揃えよう
コンテナ建築は、建築物としての品格と技術を宿した、小さくて強い建築(ボックス型ラーメン構造体)である。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。