コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.07.13

コンテナの法規制(10連載)

コンテナハウスを取り巻く法規制をわかりやすく解説!第8章

第8章 設置後の維持管理・リフォーム・法的更新
「建てたあと」が、本当のスタート

■鉄は永遠ではない。けれど、味わいを増していく

建築用新造コンテナは、高耐久の鉄骨構造としっかりとした防錆処理によって、30年以上の耐用年数を前提に製作されます。しかし、それでもメンテナンスフリーというわけではありません。「鉄でできてるから丈夫でしょ?」という認識は、間違いではないけれど、*油断してはいけない神話*でもあります。

■【維持管理編】定期点検と予防メンテが肝

1年ごとのセルフチェックを習慣に
特に以下のポイントは年に1度はチェックしましょう:

チェック項目チェック方法
外壁のサビ・塗膜の剥がれ目視/触診で確認
屋根の防水シートの劣化雨漏り跡・剥離有無を確認
開口部(サッシまわり)のシーリング割れ・隙間の有無
床下換気の通風状態通気口の詰まり・湿気臭
内壁の結露やカビクロスの浮き・シミに注意

→ 「異常が出てから」ではなく、「異常が出ないように」維持するのが鉄則です。


✅ 塗装メンテナンスは“美観”以上の意味を持つ
鉄にとって塗装は「服」であり「鎧」です。
3年〜5年ごとに外壁チェック
チョーキング(白い粉)が出始めたら再塗装のサイン
屋根・庇まわりは紫外線劣化が早いので重点的に
こまめな塗装こそ、寿命をのばす最良のメンテナンスです。

■【リフォーム編】“鉄の箱”は意外と自由自在 

「コンテナって硬いし、リフォームしにくそう…」と思われがちですが、
実は、構造をしっかり理解していれば非常に拡張性の高い素材です。
✅ よくあるリフォームニーズ:
天井断熱の強化(断熱材のグレードUP)
サッシの入れ替え(断熱・防音性の向上)
内装の模様替え(クロス・床材の張替)
外装のデザイン変更(塗装 or サイディング)
コンテナの追加(別ユニットの増設)
→ 特に「外部の階段をつけて2階建てにする」などの構造追加は、建築確認申請が必要になることもあるため注意!
✅ リフォームには「設計図の保管」が重要
建てたときの構造図・設備図・申請図面は、必ず手元に保管しておきましょう。
構造体を切る場合、補強計算が必要になる
隠蔽された配線・配管を確認できる
将来的な“売却時”にも図面があると安心
未来の自分のために、図面は宝物。

■【法的更新編】知らないと困る“書類と制度”の話


✅ 表題登記・所有権登記はお済みですか?
完成後、「建物登記(表題登記+所有権保存登記)」をしておくと、以下のメリットがあります:
不動産として資産計上できる
火災保険・地震保険に加入できる
相続・売却がスムーズに行える
課税評価額の透明化(税務トラブル回避)
→ 未登記のままだと、資産と認められずリスクも大きいため、建築確認が済んだ建物は、登記するのが基本です。


✅ 用途変更や増改築は「再申請」が必要な場合も
次のような場合には、建築確認の“再取得”が必要になる可能性があります:

ケース要申請?
店舗→住宅への用途変更◯(用途変更申請)
コンテナを2基追加◯(増築申請)
開口部を大きくする△(構造に影響がある場合)
内装のみの模様替え×(軽微変更扱い)

→ 計画前に「建築士または自治体窓口」に相談するのが確実です。

■“法”はあなたの敵ではない


「せっかく建てたのにリフォームの自由がないの?」「登記したら税金増えるだけじゃない?」そんな声もあるかもしれません。けれど、ルールに乗ってこそ、安心して“好きなカタチ”を育てていけるのが建築の良さ。鉄でできた家は、紙のようにもろい“仮設”ではない。未来にわたって、増改築・更新・譲渡ができる“資産”です。

■まとめ:「建てる」より「育てる」感覚でつき合おう

建築用新造コンテナで作った建物は、構造的にも、法的にも、住宅と同等に扱えるしっかりした存在です。
でもそれは、「建てたら終わり」ではなく、「建てた瞬間からはじまる新しい時間」のスタートです。
雨を弾く塗装を見守る
中で暮らす声に耳を澄ます
数年後に模様替えを楽しむ
子どもの成長に合わせてリフォームする
そんな“小さな変化を重ねていくこと”が、コンテナハウスと生きるということなのです。


次はいよいよ最終章!
▶「第9章:これからのコンテナ建築と法制度のゆくえ」では、コンテナ建築がどこへ向かうのか、そしてこれから私たちがどんな選択をしていけるのか、未来を語ります。ここまで、法、制度、現場、設計、税金、維持管理と、**コンテナ建築の「いま」**を丁寧に見てきました。では、これからはどうなるのか?この章では、「未来の地平に立って」コンテナ建築という新しい建築文化が、今後どのような法制度や価値観と共鳴していくのかを見通してみましょう。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。