コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.07.12
コンテナハウスを取り巻く法規制
コンテナハウスを取り巻く法規制をわかりやすく解説!第5章
第5章 コンテナハウスと税金の話—「課税されない神話」の真実—

もくじ
「コンテナは置くだけだから非課税でしょ?」という噂
よく聞くのが、こんな声です。
「コンテナは“仮設”扱いだから固定資産税はかからないんでしょ?」「家じゃないから、登記もしなくていいんでしょ?」……さぁ、そろそろこの“都市伝説”に終止符を打つ時が来ました。
結論から言いましょう。
○固定資産税、かかる場合あります。
○建築物扱いされれば、当然かかります。
では、なぜそんな誤解が広がったのでしょうか?

そもそも「固定資産税」って何?
まずは基本のおさらいです。
固定資産税とは、土地・家屋・償却資産など、一定の資産を保有している人に毎年課される地方税です。
土地 → 課税対象
建物 → 課税対象
コンテナ → 条件により“建物扱い”になる
この「建物扱い」がキーワード。
つまり、コンテナハウスが“家屋と認定された時点で課税対象になる”のです。
■家屋認定されるポイントは?【税法の視点】
では、どういう状態のコンテナが「家屋(課税対象)」になるのでしょうか?
税法上では、以下の3つの要素を満たすと“家屋とみなされる”とされています。
建築基準法上「建築物」とされるポイントとは微妙に違っていますが、概ね同じです。
要素 | 内容 |
屋根がある | 雨をしのげる構造 |
壁がある | 外気を遮断し、空間を仕切る構造 |
土地に定着している | アンカー固定・基礎・電気や水道接続など |
……お気づきでしょうか?
コンテナハウスって、だいたい全部当てはまるんです。
つまり、しっかり暮らせるように設置したコンテナは、税務上も“立派な建物”として課税対象になるのです。
別の観点では「建築物なので、建築基準法を適用される」ということになります。

「置くだけ」でもダメ?定着性の判断とは
特に重要なのが、「土地への定着性」です。
よくあるのが、以下のような誤解パターン:
誤解①:「ブロックに乗せてるだけだから、固定してない!」
→ 事実上、動かす予定がなければ定着と判断される場合があります。
誤解②:「タイヤ付きだから、車両扱いでしょ?」
→ 車検が切れている、移動用途がない場合は、自動車との判断は見送られる事があります。つまり家屋認定のリスク。
誤解③:「小さいし、税務署も見にこないでしょ?」
→ 税務課の職員は意外と“現地確認”に来ています。見逃しません。航空写真からも判断します。

非課税になるケースはあるのか?
一方で、次のような場合は課税対象外となることもあります。
条件 | 非課税になる可能性 |
工事現場の仮設事務所 | △(設置期間・移設性・用途による) |
農業用倉庫などで一時的な利用 | △(地目・期間・構造による) |
住宅地外で完全可動式 | ◯(必要に応じて車検登録など) |
ポイントは「用途の一時性と移設可能性」。
逆に、住宅として水道・電気をつなぎ、地面にしっかり固定した時点で、
「非課税の裏技」は成立しなくなります。
たまに、「固定資産税を避けるために登記しない」という手段を取る方もいますが、
これは非常にリスキーです。
不動産売買の際に発覚しトラブルに
金融機関からの融資が受けられない
建物に保険をかけられない
地方自治体の固定資産台帳で把握される可能性大
また、未登記建築物は違法建築とみなされるリスクもあります。
コンテナであっても、建築物としての要件を満たすなら、原則として登記・申請は避けられません。
建築用新造コンテナは“課税前提で設計する”
建築用新造コンテナは、最初から「家屋として認められる」前提で製作・設計されています。
つまり:
建築確認申請 → 通る
登記 → 可能
固定資産税 → 法的に正しく納付
売却や相続 → スムーズ
融資・保険 → 条件付きで可能
逆に言えば、「税金がかかる=建築物として法的に認められている」というポジティブな面もあります。

まとめ:コンテナハウスにこそ“税との対話”を
税金というのは、厄介な存在に見えて、実はあなたの建物の“法的地位”を映す鏡です。
「非課税であるべきだ」と思うなら、それ相応の設置条件が必要
「正規の住宅として扱われたい」なら、課税を受け入れる覚悟を
どちらの道を選ぶにしても、法と税のしくみを正しく理解することが、賢い選択へとつながります。
コンテナで建てるという冒険は、“節税目的”ではなく、“豊かな暮らしの手段”として選ぶべき道ですからね。
次章では、より実践的な話題に進みます。
▶「第6章:確認申請の実務と“設計者の選び方”」では、建築士との関係や、実際に申請プロセスをどう乗り越えるかを、現場目線で解説します。この章では、コンテナハウス計画を「夢」で終わらせず、現実にカタチにする最前線=設計と確認申請の実務を掘り下げていきます。そして、成功の鍵を握るのが「誰に設計を頼むか」という選択――設計者選びの極意も、実務者目線でお伝えします。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。