コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
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リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.07.12
コンテナハウスを取り巻く法規制
コンテナハウスを取り巻く法規制をわかりやすく解説!第2章
第2章_建築確認申請とコンテナ建築
もくじ
「確認申請? それって、なに?」から始めよう
「建築確認申請」と聞いて、最初に思い浮かぶのは―「えっ、そんなの本当に必要なの?」「ハンコもらうだけでしょ?」という感覚かもしれません。しかし、コンテナを『建築物として建てる」場合、確認申請はまさに“通行手形”』のような存在。これがなければ、コンテナハウスは完成しても、「法律上は存在しない建築物=違法建築」になってしまいます。下手をすると、『役所から「是正命令」→「撤去命令」』なんてことも。(せっかくの夢が……まるでレゴブロックのように崩されます)だからこそ、確認申請は、最初にして最大の山場なのです。

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建築確認申請って、具体的に何をするの?
建築確認申請とは、簡単にいえば、「この建物をこのような設計で建てていいですか?」と行政に許可を取ること。
そのためには、以下のような書類一式を提出します。
必要な書類(例):
配置図(敷地にどのように建てるか)
平面図・立面図・断面図
構造計算書(強度の裏付け)_小規模物件では省かれることもあります
各種仕様書(断熱材、設備など)
建築士の設計図書一式
申請は、地域の指定確認検査機関または所轄の自治体に提出します。
そして、提出された図面や書類が法令に適合しているかどうかを審査されるのです。
なぜコンテナ建築では難しくなるのか?
通常の木造や鉄骨の建物と違い、コンテナは“箱”であるがゆえに特殊な構造です。
こんな点で審査が厳しくなる:
通常とは異なる構造形式 → 通常の構造計算が通用しない
断熱材の施工方法が独特
防火・準防火地域では鉄製の壁が不適合になることもあります。(鉄は熱で強度が落ちることが問題)
天井高や採光・換気の基準に適合しているか
つまり、「コンテナ=建築物」と認めてもらうためには、きちんと建築用に設計・製作された新造品であることが求められます。
ここで、いわゆる『中古輸送コンテナのDIY』が通らない最大の理由(材料の問題が最も大きい)が見えてきます。

構造計算がすべてを決める
鉄の箱――それは一見頑丈に見えますが、建築の世界では「感覚」ではなく「計算」が支配します。
特に日本では、耐震性・積雪荷重・風圧力など、自然との戦いに耐えることが求められます。
そこで登場するのが、「構造計算書」。
この書類は、「このコンテナは建物として、地震や風に耐えられますよ」という数値的な証明書のようなもの。
建築用新造コンテナであれば:
設計段階で構造計算が前提
鋼材の厚みや溶接方法が建築基準法に準拠出来る
梁や柱の構成を建築士が監修、決定できる。
一方、中古コンテナの場合は――そもそもどこの誰が溶接したのかもわからない、図面がない、劣化状況も不明、材料のトレーサビリティもない……と申請に必要な情報がほぼ皆無。
当然、確認申請は「門前払い」です。

「確認申請が通るコンテナ」とは?
では、どんなコンテナなら確認申請が通るのか?答えは一つ「建築用新造コンテナ」です。これは、以下のような特徴を持ちます:
要素 | 内容 |
設計 | 建築士が建築基準法に基づき設計 |
製造 | 国内工場、あるいは認定工場で、建築用に新造される |
材質 | 厚鋼板・耐候性鋼・型鋼材などJIS鋼材使用 |
防火 | 地域条件に応じた防火設計が可能 |
認証 | 建築確認用の図面一式を整えられる |

つまり、建築確認申請とは、「建物の中身(構造)と建てる場所(敷地)」の両方が法律に適合しているかを審査するプロセス。そしてその申請をパスするためには、“建築物としての素性”がしっかりしている必要があるのです。これは「イジメ」ではなく「安心安全」の担保のための手続きで、あなた自身の財産のためなのです。
確認申請のスムーズな流れ【実務フロー】
建築士に相談・敷地調査
→ 用途地域や法規条件をチェック
基本設計・構造設計
→ 建築用新造コンテナの仕様に合わせて設計
確認申請書の作成・提出
→ 指定確認検査機関へ
審査期間(約4週間~)
→ 追加資料の指摘や修正が入ることも
確認済証の交付 → 着工OK!(建築ギョーカイでは「スミショー」と呼びます。

まとめ:確認申請は「自由」を守るための儀式である
建築確認申請と聞くと、面倒で堅苦しい印象を受けがちです。
しかし、それは実は――『安心して建てるための入口』にすぎません。
構造が安全であること
火災や地震に強いこと
周辺環境と調和していること
これらをクリアしてこそ、“堂々と”建てられるコンテナハウスが実現するのです。夢をかなえるには、まず法の土台を築く。確認申請とは、まさにその第一の礎石(いしずえ)。

この後は、いよいよコンテナ建築の“法の三重苦”とも言える、都市計画法・建築基準法・消防法という三大規制の壁に挑みます。この章では、土地選びや用途、建て方に大きく関わるこれらのルールを、「現場目線」かつ「わかりやすく」解説します。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。