コンテナハウスコラム

更新日:2025.04.29

コンテナハウスの歴史

第4回 コンテナハウスの歴史(全10回)コンテナ建築、実践のはじまり

初期のコンテナプロジェクト集①|コンテナ建築、実践のはじまり
【イントロダクション】
制度を突破したその先に
2000年代前半、建築基準法をクリアした「建築用コンテナ」が登場し、ついにコンテナ建築は合法的に都市に立ち上がる時代を迎えた。だが、現実は甘くない。
最初の一歩の時代には、想像以上の苦労と工夫、そしてチャレンジ精神が必要だった。
今回は、IMCAとそのパートナーたちが挑んだ、黎明期のリアルなプロジェクトたちを振り返る。
そこには、ただの成功物語ではない。コンテナ建築が生まれるために必要だった、汗と知恵と情熱の物語があった。

【第1章】
パルシステム館山|生協施設に挑んだコンテナ建築
当時、生協(パルシステム)は新しい拠点づくりを模索していた。仮設的なコストでありながら、しっかりとした耐久性を持つ建築物―そこにコンテナ建築のニーズが合致した。
このプロジェクトの特徴は「スピードと品質」だった。

建築用コンテナによる短工期施工、完全な構造計算による耐震性確保、施設内温度管理のため、断熱対策も強化

エピソード|現場対応の試練
搬入当日、大型クレーンの可動範囲に問題が発覚。
急遽、コンテナユニットを「一時分解」して搬入し、現場で再組立する奇策を敢行。
現場の柔軟性がなければ成立しなかった「奇跡の数日間」だった。

【第2章】
沖縄4階建てコンテナ建築|常識を破ったタワー型プロジェクト
沖縄のある企業から、4階建ての事務所兼住宅の依頼。
通常、コンテナ建築は2~3階までが主流だった。
4階建ては前例がほぼない挑戦だった。ポイントは「構造フレームの強化」と「基礎設計」だった。
通常コンテナ+外周鉄骨ラーメンフレームを組み合わせる
強風・台風リスクを考慮した高耐力設計
エピソード|沖縄の自然との闘い
建築中、台風直撃。施工中の仮組みコンテナが暴風で揺れ、急遽、夜間作業で固定対応。
「沖縄の空にコンテナが飛ばないか」――
冷や汗をかきながらの夜だった。

【第3章】ガレージハウス「TSUNIODA⭐︎BASE」|趣味と実益を兼ねた男の夢
東京近郊に建てられたこのガレージハウスは、個人の夢を形にしたプロジェクトだった。
テーマは、「愛車を眺めながら生活する」
1階:ビルトインガレージ+メカニックルーム
2階:コンパクトな住居スペース
外観はインダストリアル感たっぷりの鉄の箱
エピソード|「シャッター問題」
当初の設計では既製品シャッターの開口幅に制限があり、愛車が入りきらないことが判明。
急遽、シャッターガイドをカスタム制作。
結果、**世界で唯一の「愛車専用設計コンテナガレージ」**が完成した。


【第4章】小笠原母島の小住宅|離島輸送をクリアした奇跡のプロジェクト
小笠原諸島・母島――
東京都とはいえ、物流は一ヶ月に数回の船便のみ。
そんな離島に「小さな住宅を建てたい」という相談が舞い込んだ。
コンテナモジュール化による完全プレファブリケーション
船便に合わせた「輸送用ラッシング」設計、現地施工を最小限にする設計思想
エピソード|「港での奇跡」
母島港での荷下ろし中、ウインチ故障という緊急事態発生。
地元の島民たちが総出で手伝い、ロープとレバーで人力搬出。
「人の絆」で運ばれたコンテナハウスだった。


【第5章】
東芝・海水淡水化プラント|インフラに使われたコンテナ建築
このプロジェクトは異色だった。コンテナは単なる“建物”ではなく、インフラ装置の収納ユニットとして採用された。海水淡水化プラント機材をコンテナ内に収納、メンテナンス動線を考慮した設計。船積み、現地据付を一体化したロジスティクス設計

エピソード|「海を越える建築」。海外プラント輸出のため、ISOコンテナ仕様と建築構造の両方を満たす必要があった。「建築」と「船積み貨物」の境界線を越えた、世界初の取り組みだった。

Back Camera
Back Camera
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【第6章】アルマーニ・イクスチェンジ原宿ポップアップショップ|ファッションとコンテナの融合
最後に紹介するのは、ファッションブランドとのコラボ案件だ。
都心の一等地、原宿に突如現れた「コンテナ建築」、外装にオリジナルカラー塗装+ブランドロゴ施工
開閉式ファサードで動きのある演出

エピソード|「たった3日で組み上げろ」
出店までの準備期間がわずか2週間。
搬入、組立、内装施工までを14日で完了させる過酷なスケジュール。
まさに「機動力の勝利」だった。



【まとめ】黎明期の挑戦が、今日のコンテナ建築をつくった
どのプロジェクトも、簡単にはいかなかった。
現場対応、法規クリア、設計と施工のせめぎ合い、その全てを乗り越えて、コンテナ建築の未来は切り拓かれていった。
次回は、さらに多様化するコンテナ建築の広がりを追っていく。
コンテナ建築の第2世代へ――