コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.08.01

コンテナCAFE開業Coach50連載

CAFE_コンテナ開業のためのコーチからの50の手紙_6/50

A-006 成長の限界、あせらずいこうぜ。
カフェ開業コーチング 第1章 基礎編|その6

■ 成長って、どこまで続くの?

カフェをはじめると、誰しも一度はこう思います。
「よし、もっと売上を伸ばそう!」
「次のフェーズへ進みたい!」
「人を雇って、2号店だって夢じゃない!」
それ自体は、とてもいいことです。
努力や情熱が、未来の成長に繋がっていく瞬間は、事業をする者にとって何よりの喜びですから。
でも──
ここでひとつ、ちょっと立ち止まって考えてほしいことがあります。
「成長」って、無限にできると思ってますか?
その問いの答えは、あなたの今後を左右します。

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■ ローマクラブが語った「成長の限界」

1972年。「ローマクラブ」という国際的な知の集団が発表した報告書が、世界に衝撃を与えました。
タイトルは、
『成長の限界(The Limits to Growth)』。
人口増加、工業生産、資源消費、食糧、環境汚染──
さまざまな項目をコンピュータでシミュレーションし、「このまま経済活動が成長し続けたら、地球はどうなるのか?」を突き詰めたのです。
その結論はこうでした。
「地球という有限な環境では、無限の成長は不可能。やがて、資源や環境の制約により崩壊するシナリオが訪れる」
…そしてそれから半世紀。
今、私たちはその“予言された未来”の真っ只中を生きているとも言えます。
気候変動、海面上昇、生物多様性の喪失、エネルギー危機…。あの本はSFでも陰謀論でもなかった。科学が警鐘を鳴らしていたんです。

■ で、あなたのカフェにも限界はやってくる

地球の話はひとまず置いておきましょう。
ここでお伝えしたいのは、「あなたのカフェにも、成長の限界はある」ということです。
成長という言葉は甘美な響きをもっています。
でもその“増加・拡大・進化”がいつまでも右肩上がりで続くかというと、現実はそう甘くない。

こんな時に「限界」を感じるはずです。
これ以上売上が伸びない
もう値上げできる余地がない
スタッフの能力が頭打ち
店の回転数に物理的制約がある
競合が近隣に現れた
常連さんが固定化し、新規客が増えない
あらゆる業種の商売に、こうした“限界の兆し”はやってきます。
そしてこれが一番怖いのですが──
限界は「やってきてから考える」では遅いのです。

■ 成長を支えるのは、バランスという思想

成長を持続させるには、バランス感覚が何より重要です。
売上を伸ばすためには、
・商品力のアップ
・スタッフの成長
・顧客満足度(CS)の向上
・街への認知度
・客単価アップ
・コストの最適化
・業務の効率化
・新ジャンルへの挑戦
……など、複数の要素が同時並行的に高まっていく必要があります。
どこか一箇所だけが突出していてもダメなんです。
たとえば「商品はすごくいい」のに「オペレーションが悪い」だけで、売上は頭打ちになります。
これは「成長=総合格闘技」だと思ってください。
そして、この全体バランスを保ちながら成長を進めていくと、やがてリソース(時間・人・場所)の限界に達します。
それが“成長の限界”です。

■ 「限界」を恐れず、むしろ迎え入れよう

多くの人は「成長が止まること」を恐れます。
でも私はこう言いたい。
「成長の限界」は、あなたの成長の“到達点”である。
たとえば、ひとつの店で売上を最大化し、利益をきちんと出し、スタッフが育ち、固定客が定着した。
それって、ある意味で「完成」してるんです。
もちろん、それ以上の成長が望めないなら、新たな挑戦を考えるべきです。
2号店を作るか、商品ジャンルを変えるか、リブランディングするか、あるいは別業種に展開するか。
でもそれは「限界を乗り越える」ためではなく、
「限界をきちんと見極めたからこそ選べる、次の道」であるべきなんです。

■ 「スタッフの成長」に限界がきたら? 

人材面での成長限界も、経営のリアルな課題です。
たとえば、がんばって育てたスタッフが、技量も上がり、給与アップを求めるようになります。
当然のことです。成長には報酬が必要ですから。
でも、売上が伸びないのに給与だけ上げ続けるのは不可能です。
このとき、経営者は2つの選択を迫られます。
規模拡大を目指し、売上を増やしてスタッフも守る
あえて“循環型経営”を選び、入れ替え前提で人件費を回す
どちらが正解とは言えません。
ただ、あなたがどちらを選んでも、「その決断を支えるだけの論理と準備」を持っておく必要があります。

■ 商売には「既得権益」は存在しない

かつて、全国には“地元の商店街”という形で人々の生活を支えていた商いがありました。
八百屋、魚屋、金物屋、おもちゃ屋──たくさんの店が並び、にぎわいがありました。
でも今、そのほとんどは姿を消しています。
なぜか?
競争に敗れたからです。
「努力した人が勝つ」
「魅力のある者が選ばれる」
これは資本主義の原理であり、変えようのないルールです。
そしてこのルールの上に、あなたのカフェも立っているということを忘れないでください。

■ リスク回避の最大手段は「卓越していること」

どんなに時代が変わっても、
「すごい店の近くには、出店したくない」というのが人情です。
つまり、圧倒的な実力を持つ店は、自然と競争から守られるということ。
そのためには──
商品開発のスピードを落とさない
常連客に飽きさせない
スタッフのモチベーションを維持する
小さな改善を繰り返す
街の変化に敏感である
こういった“小さな戦い”を日々続けること。
それが、成長の限界を迎えても生き残るための最大の武器です。

■ 今日のコーチングポイント|A-006

成長には限界がある。
だけど、それは「終わり」じゃなくて「次の始まり」。
一つの店で限界までやり切ったとき、
あなたにはもう“次の世界”が見えているはず。
焦らなくていい。
限界までしっかり育てた店は、必ずあなたに“次の景色”を見せてくれる。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。