コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.07.20

コンテナ2LDK革命(8連載)

コンテナハウスで暮らす2LDKという革命_5/8

第5章:2LDKという最小単位の“家族設計学” 

──間取りと動線に宿る愛

私たちはときに、「広さ」こそが暮らしの快適さだと信じてしまいます。しかし、本当にそうでしょうか?愛が通う距離、手が届く距離、気配が漂う距離──それらがほどよく編み込まれた家こそ、人を癒し、絆を深める空間ではないでしょうか。

2LDKというコンパクトな間取りは、単なる「制約」ではありません。むしろ、それは暮らしを“凝縮”する装置であり、「家族」という小さな宇宙の最小単位なのです。

「2LDK」という間取りが持つ“親密性”

2LDKは、たいていの場合、リビング+寝室+もう一部屋という構成。そして、この「もう一部屋」にこそ、その家の“人生観”が反映されるのです。子ども部屋かもしれないし、夫婦の書斎かもしれない。時にゲストルーム、時に仕事部屋、あるいは収納も兼ねた多目的室。

2LDKは、家族の“今”と“これから”の両方を包みこむ間取りです。過不足ないサイズ感だからこそ、「何のために部屋が必要なのか?」という暮らしの本質が問い直される。だからこそ、私たちはこの2LDKという最小単位に、思想を注ぎ込み、構成を練り上げる喜びを持っています。

 動線は、関係性をデザインする

「間取りは“家族の会話量”を決める」と、ある建築家が言いました。私たちもまったくその通りだと感じています。コンテナハウスで2LDKを設計する際、私たちは動線=関係性と捉えています。リビングを中心に据えた回遊型の動線を組むことで、子どもが部屋に引きこもらず、家族の中心に立ち寄るようになります。

逆に、プライバシーを重視する家族には、視線が交差しにくいゾーニングを意識して設計します。料理中も目が届く対面キッチンにするか、あえて壁付けで集中空間にするか。トイレや洗面をどの程度「人目」から遮るか。廊下を設けるか、廊下をなくして空間効率を高めるか──。それぞれの選択には、暮らしの哲学が潜んでいます。家とは、単なる壁と屋根の集合ではなく、人と人との関係性の編集なのです。

 愛とは、「想定しておく」こと

設計とは、未来への“やさしい想定”だと思います。

「子どもが小学校に上がったら、どう使う?」
「在宅勤務が常態化したら?」
「親の介護が始まったら?」

2LDKという限られた空間の中で、どれだけ“未来の愛”を組み込んでおけるか。それが、私たちコンテナハウス専門家の腕の見せどころです。たとえば、あるお客様は子どもが独立した後、第二の人生をこの2LDKで始めたいと望みました。私たちは、寝室ともう一室を間仕切り可能な引き戸で構成し、将来的には**二部屋を一室にできる“伸縮設計”**を提案しました。

2LDKは、固定された器ではなく、時間にあわせて変容する家族のための舞台なのです。

2LDKは、「ちょうどいい」を超えて、“人間らしい”という価値を備えています。そこには、設計によって立ち現れる関係性、動線の中に交わる視線、暮らしの選択肢と変化への余白がある。そして何より、間取りに宿る愛情が、住まいを“家”たらしめるのです。

次章「第6章:価格と性能のリアル──ローコスト×高耐久の答えがここにある」をお届けします
__お楽しみに

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。