コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.07.18
コンテナ2LDK革命(8連載)
コンテナハウスで暮らす2LDKという革命_3/8
──ちょうどいい家族のための“箱の建築”完全ガイド
コンテナ建築を語る上で最も大切なこと、それは「どんなコンテナを使っているのか?」という一点です。
中古か? 新造か? ISOか? 建築用か?その違いをわかりやすく、かつ思想的な響きを添えて書き進めます。
もくじ
◾️第2章:建築用新造コンテナとは何か──輸送コンテナとは違う“住宅のための箱”
家は、「中身」だけで語れません。どんなに素敵な間取りやデザインでも、「外殻」がダメなら、すべてが水の泡です。それはちょうど、人間が「皮膚」で守られているように、建築も「構造体」でそのすべてが支えられている。だから、コンテナハウスをつくるなら、その“箱”の正体を知ることが、いちばん大切なはじめの一歩になるのです。

「輸送用コンテナ」では、住宅はつくれない
多くの人が思い描く「コンテナハウス」は、貨物船に積まれているようなISO規格のスチールコンテナを思い浮かべるかもしれません。世界中をぐるぐる旅した、中古の海上コンテナ。確かに、見た目はロマンがあります。武骨で、インダストリアルで、ストリート感もある。けれど現実問題として、あれは“住宅用の箱”ではありません。材質は過酷な海上輸送に最適化されており、断熱性・気密性が極端に低い天井高は約2.3m前後で、居住空間としては狭すぎる。
使用済みのため、塩害・錆・化学物質の残留リスクがある。構造計算において“建築物”として扱うのが困難(日本の建築基準法の網にかからない。開口部を開けたりしなければISO基準も守っていれば事実つ用箱ではあるのですが、建築的な構造計算が事実上無理であることと、材料が日本の建築基準に合わない)つまり、「輸送用コンテナ」は“あくまで倉庫か、輸送用の箱”であって、それを「家」に改造するには、大掛かりな補強や内装工事が必要なのです。しかも、いくら補強しても、「元が建築物じゃない」というハンデはずっとついて回る。
「建築用新造コンテナ」という新しい“構造体”
そこで登場するのが、『建築専用に開発された“新造コンテナ”』です。
これは、建築基準法を前提として設計・製造された、住宅のための構造ユニット。そして輸送手段としてコンテナのロジスティクス網を使うので、コンテナとしての法規も同時に満たしているというスグレモノなのです。
ポイントは以下の通りです:
最初から「家として使う」ことを目的に製造される。JIS鋼材や国産建材を使って製造され、構造計算に対応可能。必要な断熱材、気密シーリング、換気スリーブなどが設計段階で組み込まれる。天井高は2.5m以上も確保でき、開口部も自由に設計可能。建築確認申請にも正式に対応できる。つまり、「見た目が似ているだけ」で、まったく別モノなのです。あえて極端に言えば、建築用新造コンテナは“鋼鉄でできたプレハブ住宅の最上位版”。頑丈で、制度対応もできて、そしてカッコいい。7つの海を渡ってくる憧れの「コンテナ」のシニフィエもまとった、三拍子そろった“ハコ”なのです。

デザインの自由度も、構造性能も段違い
例えば、外壁にサイディングやウッドパネルを貼ることもできます。
内装だって、漆喰や無垢材フローリング、タイル貼りの浴室もOK。
つまり、木造住宅と変わらない仕上げが可能。
それでいて、構造強度は段違い。
スチールフレームによる一体成型の構造は、震度7の揺れにも耐える設計が可能です。
火災にも強く、台風にもビクともしない。
これは、「ただの箱」ではない。
建築用新造コンテナは、“住宅の構造体”として新たに定義された、21世紀の建築部材なのです。

そしてこの“ハコ”は、未来に向かって動き出す
もうひとつ、この箱には特別な能力があります。それは、「動ける」ということ。ユニット単位で増やす・減らす・移すことができる。設計上、分割や接続が容易なので、人生に合わせて家のサイズも変えられる。この可変性と移動性こそ、“未来型の暮らし”にとって必要不可欠な要素です。まさに、黒川紀章やアーキグラムが夢見た「メタボリズム建築」の現代的解釈。しかもそれが、制度にも価格にも対応した“リアル”として存在しているのです。「この家は、壊さなくても終われる」。「この箱は、場所を変えても、生きていける」。
そんな思想が、この建築用新造コンテナには宿っている。
この“鉄の皮膚”を持つユニットが、いま、
住宅という概念そのものをアップデートし始めているのです。

次章では、この“ハコ”をどう活用して「2LDK」をつくるのか──具体的な間取りプランや、暮らしの実例をたっぷりとご紹介していきます。
記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。