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一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
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更新日:2026.01.20
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20FTコンテナ1台でカフェ開業|1〜2人オペのテイクアウト設計と保健所対策
20FTコンテナ1台で開業する「テイクアウト型」と「小型客席型」の作り方|設計プロセス・保健所対策・コスト戦略まで。

記事の要点
コンテナハウスとカフェ(1〜2人オペレーションタイプ)編
20FTコンテナの小さなカフェは、デザインより先に「動線・設備・許可」を固めた人が勝ちます。テイクアウト型は速度で、小型客席型は滞在価値で勝つ。保健所対策は“清掃できる設計”が核心。コストは中古で攻めて、止まる所は新品で守る。それだけで、開業後の事故率が下がります。
なぜ「小さめのコンテナカフェ」記事にアクセスが集まるのか。コンテナハウスの記事を書くと、なぜか小さめの実施例に視線が集まる。これは偶然じゃない。小さい店には、現実の匂いがある。家賃の重圧を背負わずに始めたい。1人、せいぜい2人で回せる範囲で商売をつくりたい。自分の時間を守りながら、ちゃんと稼ぎたい。
この感覚に、今の読者は正直だ。
そしてコンテナは、小さい店と相性がいい。箱そのものが看板になる。世界観が一発で伝わる。何より「小さく始めて、増やせる」。つまり、最初の一歩が軽い。ただし。小さい箱はごまかしが効かない。オペレーションが弱いと、店の弱さがそのまま露出する。だからこの記事では、見た目の話から入らない。最初に勝ち筋を固める。
想定する2つのタイプ(20FTコンテナ1台で成立する)この記事は、20FTコンテナ1台で開業するカフェを、次の2タイプに分けて整理します。

もくじ
- 1 A.テイクアウト型(窓口中心、回転で勝つ)
- 2 B.小型客席型(数席だけ置く、滞在価値で勝つ)
- 3 20FTカフェの設計で最初に固めるべき4つの条件
- 4 ステップ1:コンセプトを1枚に落とす(設計の前の設計)。紙1枚でいい。書くのはこれだけ。
- 5 ステップ2:メニューを削る(増やす前に削る)
- 6 ステップ3:オペレーションを先に設計する(1人オペの勝ち方)
- 7 ステップ4:設備とインフラを確定させる(電力・給排水・換気)
- 8 開業コストの現実:中古で攻めて、止まる所は新品で守る
- 9 中古で十分いけるもの(コスパ枠)
- 10 新品を推奨するもの(止まったら詰む枠)
- 11 ステップ5:保健所と消防に事前相談する(ここで勝負が決まる)
- 12 保健所対策:小型カフェで詰まりやすいポイント(考え方の核心)
- 13 4. 結露は衛生問題として出る(コンテナ特有の急所)
- 14 5. ゴミ・臭い・虫は“店外の設計”
- 15 コンテナ特有の注意点(20FTで後悔しやすい所)
- 16 搬入据付は“現地が8割”
- 17 まとめ:20FTの小さな店は、意思が濃いほど強い
- 18 Q&A(5選)
A.テイクアウト型(窓口中心、回転で勝つ)
窓口で注文し、外で受け取り、外へ流れる。この型の価値は、速度と明快さです。
・迷わないメニュー
・待ちがストレスにならない導線
・受け渡しが詰まらない窓口計画
・行列が近隣トラブルにならない外構計画
テイクアウトは「速さ」が商品になる。小さい店ほど、速さは武器になる。
B.小型客席型(数席だけ置く、滞在価値で勝つ)
客席は多くなくていい。むしろ少ない方が強いことがある。この型の価値は、空気と余韻です。
・光がきれい
・風が抜ける
・音が落ち着く
・ほんの少しだけ、自分の場所になる
席を増やすほど条件が重くなるのが飲食店の現実。小型客席型は「少席で成立する価値」を設計できる人が勝つ。

20FTカフェの設計で最初に固めるべき4つの条件
小型店舗は、設計より「設計条件」が先です。ここが曖昧だと、後で全部が崩れます。
1)誰に、何を、どのスピードで出すか(回転の設計)
2)仕込みと提供の流れ(オペレーション設計)
3)使う機器と必要な電力・給排水(インフラ設計)
4)衛生(保健所)と防火(消防)(許可の設計)
この4つを固めれば、20FTは速い。固まっていないと、20FTは地獄のパズルになる。
開業プロセス:この順番でやれば、遠回りしない
ここからは実務の手順です。順番は重要。順番を守ると、開業が速くなります。

ステップ1:コンセプトを1枚に落とす(設計の前の設計)。紙1枚でいい。書くのはこれだけ。
・ターゲット(誰に)
・主力商品(何を)
・客単価(いくらで)
・提供能力(ピーク時に何杯/何食出すか)
・強み(味、体験、景色、速さ、世界観)
この1枚が、そのまま設計条件になります。
ステップ2:メニューを削る(増やす前に削る)
小型店でメニューを増やすと、仕込みが増え、在庫が増え、廃棄が増え、冷蔵庫が足りず、動線が詰まり、清掃が崩れます。小型店の崩壊は派手じゃない。地味に死ぬ。これが一番痛い。
おすすめは3階層です。
・主力:これを食べに来る(1〜3品)
・季節:話題づくり(少数)
・サブ:客単価調整(少数)
メニューが削れるほど、設計は強くなります。

ステップ3:オペレーションを先に設計する(1人オペの勝ち方)
レジの位置、作る場所、渡す場所。これが店の骨格です。
テイクアウト型なら、ピークの5回転を想定して紙に書く。
注文→会計→作る→呼び出し→受け渡し
この流れが1人で破綻しないか。詰まるなら、詰まる場所を削る。
小型客席型なら、滞在と片付けが入る。
座る→提供→追加→片付け→清掃
ここで「清掃時間」を設計に入れる。清掃しにくい設計は、運営の寿命を縮めます。
清算の方法も「キャッシュレス」はもう導入必須です。

ステップ4:設備とインフラを確定させる(電力・給排水・換気)
コンテナ店の心臓です。見た目より先に、電力と水と空気を掴みます。
・使用機器(エスプレッソ、グラインダー、製氷、冷蔵冷凍、給湯、食洗、空調など)
・必要電力(合算、ピーク同時使用を想定)
・給水(上水/井戸)
・排水(下水/浄化槽)
・油脂の処理(業態による)
・換気(熱・蒸気・臭気)
これが固まると、20FTの中の配置が決まります。ここが曖昧だと、後から全部やり直しになります。

開業コストの現実:中古で攻めて、止まる所は新品で守る
新規開業は、いつだってコストとの戦いだ。理想の店を描くほど、見積りはふくらむ。だからこそ、資金配分のセンスが店の寿命を決める。有効な手段のひとつが、厨房機器に中古を使うこと。ただし中古は玉石混交。安いから買うと、開業後に止まる。止まった瞬間、店の信用は音もなく削れていく。だから最初に線引きをしておく。
中古で十分いけるもの(コスパ枠)
・板金もの(ステンレス作業台、棚、平置き台、ラック類)
構造が単純で、壊れる要素が少ない。凹みやサビが致命傷でなければ中古で十分。現場の道具は、ピカピカより「使えること」が正義。
・機構がシンプルな加熱機器(ガスコンロ、シンプルなオーブン、グリドル等)
加熱系は比較的読みやすい。もちろん実働チェックは必須だが、構造が素直なものは中古でも戦える。火が安定しているか、点火が素直か、異常な焦げ臭がないか。この3点でまずふるいにかける。
新品を推奨するもの(止まったら詰む枠)
・コンプレッサー内蔵もの(冷蔵庫、冷凍庫、製氷機、冷蔵ショーケース)
ここは新品が強い。理由は単純で「いつクラッシュするかわからない」から。冷えない、凍らない、氷が出ない。これが営業中に起きたら、売上だけじゃなく信頼も落ちる。新品保証は、保険料として安い。
中古を買うなら、最低限ここだけは見る(地雷回避)
・現地で通電、点火、動作確認(できれば30分以上)
・異音、漏れ、ガス臭、焦げ臭の有無
・扉の閉まり、パッキンの状態、火の安定
・年式と使用環境(酷使個体か、軽使用か)
・販売店の保証があるか(短くても「ゼロ」より強い)
中古は、板金もので確実に下げる。冷凍冷蔵系は新品で守る。この二段構えだけで、開業後の事故率はぐっと下がる。そして浮いた予算は、見えないが致命的な部分に回すといい。換気、給排水、手洗い、結露対策。ここをケチると、店の空気が死ぬ。保健所対策も運営も、最後はここに回収される。
ステップ5:保健所と消防に事前相談する(ここで勝負が決まる)
事前相談は怖くない。むしろ、早く行った人が勝つ。完璧な図面は不要。必要なのは「運用の想定」です。
持っていくもの(最小セット)
・平面図ラフ(手描きでもOK)
・機器リスト
・メニュー概要
・給排水の考え方
・換気の考え方
ここで必要条件を確定させてから、設計と見積を詰める。順番が逆だと、あとで全てが高くつきます。
保健所対策:小型カフェで詰まりやすいポイント(考え方の核心)
運用は自治体・地域・業態で差があります。ここでは「通る設計の発想」を押さえます。
1. 手洗いは“ある”だけでは弱い。“使える位置”が条件
遠い手洗いは、現場で使われなくなる。使われない設備は無いのと同じ。
・作業中に最短で到達できるか
・手洗い後に再汚染しない流れか
・人の動きが詰まらないか
小型店ほど、手洗い位置が勝敗を分けます。
2. シンクは用途の想定が先(相談を前に進める鍵)
洗う対象(器具、食材、手洗い)と、作業台との関係、流れ。
この想定があると、事前相談が一気に進みます。
3. 床・壁・天井は“掃除で勝つ”素材が正義
小型店は劣化が目立ちやすい。つまりブランドが崩れやすい。
・拭ける
・角に汚れが溜まりにくい
・水が回っても傷みにくい
この条件が、運営の寿命を伸ばします。
4. 結露は衛生問題として出る(コンテナ特有の急所)
コンテナは外気の影響を受けやすい。厨房は熱と蒸気が出る。結露は起きやすい。放置するとカビ・臭い・汚れになる。衛生の話になる。断熱・防露・換気を、運営のためにやります。
5. ゴミ・臭い・虫は“店外の設計”
小型店はバックヤードが薄い。だから外構が勝負になる。
・ゴミの一時保管
・臭い対策
・動物対策
・回収日の運用
建物の中だけで完結しない。ここが飲食店のリアルです。
コンテナ特有の注意点(20FTで後悔しやすい所)
開口を増やすほど、構造とコストが増える
窓を増やすと気持ちいい。でもコンテナは構造体。開口は補強が必要。窓の数と位置を、最初から補強込みで考えると、見積が安定します。
空調は“厨房の熱負荷込み”で考える
20FTはすぐ暑くなるし、冬も冷える。厨房機器の熱は容赦ない。空調は「部屋」ではなく「厨房込み」で設計します。
搬入据付は“現地が8割”
進入路、クレーン位置、地耐力、レベル。ここが曖昧だと工事が止まる。コンテナは物流建築。物流が勝つと建築が勝つ。
まとめ:20FTの小さな店は、意思が濃いほど強い
20FTコンテナのカフェは、小さいからこそ設計が商売に直結する。
条件を固め、動線を固め、衛生を固め、許可を固める。そこからデザインを乗せる。順番を守れば、20FTは速い。
小さい店は、弱いんじゃない。
小さい店は、削れる。
削ったぶんだけ、強くなる。
そして最後に一つだけ。小さな箱で世界を作るのが、コンテナカフェのロケンロールだ。
無料PDFチェックリスト(記事の付録)
開業前に確認しておくべき項目を、現場用に3枚で整理しました。
無料配布PDF:コンテナカフェ開業チェックリスト(20FT/1-2人オペ)
ダウンロードして使ってください
・コンテナ店舗の費用と注意点(親ページ)
・コンテナ建築の断熱・結露・換気
・用途地域・建築確認・消防の全体像
・施工事例:小型・一台・商業
画像ALT例
・20FTコンテナ1台のテイクアウト型カフェ外観
・コンテナカフェの厨房動線と窓口レイアウト
・小型客席型コンテナカフェの内装と採光計画
Q&A(5選)
Q1. 20FTコンテナ1台で、本当に1人オペのカフェは回せますか?
A. 回せます。条件は、メニューを削る、提供動線を単純化する、ピーク時の詰まりを潰すこと。1人オペは気合ではなく設計で成立します。
Q2. テイクアウト型と小型客席型、どちらが開業しやすい?
A. 立ち上げはテイクアウト型が低難易度になりやすいです。客席が増えるほど運用・清掃・許可条件が重くなるケースがあるため、最初はテイクアウト寄りが堅い選択です。
Q3. 保健所で一番詰まるのはどこですか?
A. 小型店では、手洗い設備の位置、シンクの考え方、清掃しやすい仕上げ、結露対策、排水・臭気が詰まりやすいです。自治体運用があるので事前相談で確定が最短です。
Q4. 中古厨房機器はどこまで使っていい?
A. 板金もの(作業台・棚)は中古で十分。コンロやシンプルなオーブンも実働チェック前提で中古可。一方、冷蔵庫・冷凍庫・製氷機などコンプレッサー内蔵品は新品保証を推奨します。
Q5. 事前相談には何を持っていけばいい?
A. 平面図ラフ(手描き可)、機器リスト、メニュー概要、給排水と換気の考え方。完璧な図面より運用の想定が大事です。
