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一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
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更新日:2025.12.30

01_はじめてのコンテナ

おしゃれなコンテナハウス

レイダウンコンテナ美容室開業

第4回:デザインの方向性の決め方。リトリート型は「センス」より「ルール」で勝つ

連載:20FEET_レイダウンコンテナ1台でビューティーサロンを開業する(実録)

この回のゴール


この回のゴールは、いすみの森林地帯に置く「都会的なサロン」のデザイン方向性を、迷いなく決め切ることです。具体的には次を確定します。
コンセプト1行(店の世界観の言語化)
外観の基本ルール(色・素材・窓・サイン)
内装の基本ルール(色数・素材数・照明・音)
撮影される前提の見せ場(SNSで強いポイント)
結論。デザインはセンスの勝負ではありません。決める順番とルールの勝負です。

今日の結論

リトリート型1席サロンのデザインは、次の「5つの固定」で勝てます。
1)色は2色まで(黒+木、もしくは黒+白)
2)素材は3つまで(例:黒金属、木、ガラス)
3)光は2層(作業照明+雰囲気照明)
4)線は水平を強く(レイダウンのプロポーションを活かす)
5)見せる物は少なく、隠す収納を多く(散らかりは価値を壊す)
この5つを守ると、狭さが「洗練」に変わります。

コンセプトを1行にする(迷いを消す最重要工程)

まず言葉を決めます。これが決まると、色も素材も家具も迷いません。
いすみリトリート×都会的 の推奨コンセプト例
「森の中に置いた、都会の小さなサロン」
「静けさに、シャープさを足す」
「余白と清潔感で整える、1席サロン」
「黒い箱の中で、髪と呼吸を整える」
この中から1つを採用し、以降の判断はすべてこの1行に照らして決めます。

デザインを決める手順(この順でやれば外さない)

デザイン迷子は、手順が逆なだけです。必ず下記の順番で決めます。
ステップ1:外観の「ベース」を決める(色と素材)
ステップ2:開口の「型」を決める(窓・ドアの配置と大きさ)
ステップ3:サインの「型」を決める(位置・サイズ・照明)
ステップ4:内装の「背景」を決める(壁・床・天井)
ステップ5:照明の「設計」を決める(作業+演出)
ステップ6:音と匂いの「ノイズ」を潰す(換気・吸音)
ステップ7:SNSの「撮影点」を2つ作る(写真が資産になる)

5. 外観デザインのルール(いすみ×都会的)

5-1. 色
推奨:黒(マット)を基本に、木はアクセントに限定。
森に黒は強いです。周囲が緑だから、黒は“締まり”として効きます。ここでグレー寄りに逃げると中途半端になりやすい。
外壁:マットブラック(主役)
木:軒天、デッキ、サイン周りに限定(温度)
金物:黒で統一(散らからない)
5-2. 素材(3つまで)
黒金属(外壁・フレーム)
木(デッキ・軒天・一部ルーバー)
ガラス(開口部)
これ以上増やすと16㎡の箱では情報量が過多になります。
5-3. 開口(窓・ドア)
リトリートは「見せすぎない」が勝ちです。
おすすめは正面に大開口を一つ作り、内部がチラッと見える程度に抑える構成。
正面:大きなスライディングドア(写真の主役)
それ以外:縦長の窓をリズムで(防犯と雰囲気の両立)
トイレ:高窓(外から見えない、でも明るい)
5-4. デッキ
デッキは“待合”ではなく“世界観の入口”です。
幅は広くしすぎない。広いと生活感が出ます。小さく上質に。
ベンチは造作で固定(雑多な椅子を置かない)
段差照明で夜の顔を作る(これがSNSで強い)
5-5. サイン
サインは大きくしない。上品に「読める」ことが正義。
位置:入口動線の正面または側面に1つ
表示:ロゴ+Salon(情報は少なく)
夜:間接照明 or 内照式で“静かに光る”

内装デザインのルール(16㎡は背景で勝つ)

6-1. 色は2色+1アクセント
背景:白〜薄いグレージュ(肌がきれいに見える)
締め:黒(鏡枠、金物、照明)
温度:木(カウンター、棚)
この3点で十分です。色を足すと一気に安っぽくなります。
6-2. 床は「清掃」と「音」で決める
リトリートは“音”が商品です。硬い床は反響します。
推奨:フロアタイル系(清掃性と水耐性)
反響を抑える:ラグは最小限(毛が落ちる、汚れる)
代わりに吸音は壁・天井でやる(後述)
6-3. 鏡面(セット面)は“背景”を作る
鏡に写る景色が、そのままSNSの写真になります。
鏡の背面は木か無地壁(情報量を減らす)
配線は見せない(見えた瞬間に生活感)
小物は3つまで(花・香り・手鏡程度)

照明設計(リトリートの勝敗を決める)

照明は「明るい」だけでは勝てません。
美容室は作業場であり、体験の場でもある。だから2層にします。
A:作業照明(手元と顔色のため)
セット面は顔に影が出ない配置
光色は統一(バラバラは即アウト)
B:雰囲気照明(静けさのため)
間接照明、棚下照明、デッキの足元照明
夜の外観に“静かな顔”が生まれる
ここを押さえると、同じ箱でも価値が段違いになります。

音と匂い(都会的リトリートの「見えないデザイン」)

リトリート型でクレームになるのは、だいたい音と匂いです。

反響を抑える:吸音パネルや吸音ボードを一部入れる
ドアの気密を上げる:外の音が入ると価値が落ちる
機器の音:室外機の位置と振動対策は最初に決める
匂い
換気は奥側の水回りで“吸う”
入口側から給気して、奥へ流して排気(匂いを戻さない)
香りは強くしない。強い香りは好みを割る

「撮られる設計」を2点だけ仕込む(SNS資産化)

狭い店で撮影ポイントを増やすと散ります。2点で十分です。
撮影ポイント1:入口〜デッキの正面カット
サイン、照明、植栽、黒い外観が決まる
夜に強い(リールが伸びる)
撮影ポイント2:セット面+鏡の正面カット
背景が整っていると、仕上がり写真が全部作品になる
お客様の投稿が自然に増える

いすみ×都会的:推奨デザインパッケージ(即決版)

迷う時間がもったいないので、パッケージを置きます。
外観
マットブラックの外装
木の軒天とデッキ
正面大開口(スライド)
小さめの内照サイン
内装
壁:薄いグレージュ
床:フロアタイル(木目寄り)
セット面:木+黒金物
照明:ダウンライト+棚下間接
植物:大1、小2(置きすぎない)

今日のチェックリスト(この回で決め切ること)

コンセプト1行を決めたか
色は2色までにしたか
素材は3つまでにしたか
開口の型(正面大開口+補助窓)を決めたか
サインの位置と発光方法を決めたか
照明を2層にしたか
撮影ポイントを2つに固定したか

次回予告(第5回)

第5回は広告戦略、特にSNS運用を「指導レベル」で出します。
いすみのリトリート型は、立地が多少奥でも勝てます。その代わり、プロフ導線、投稿テンプレ、撮影ルール、予約導線、口コミ依頼文まで型に落とします。運ではなく運用で勝ちます。

第5回の前に、サイン表記(店名のルール、英字・和字、フォントの方向性)だけ先に固めよう。
外観とSNSが一気に噛み合う。ここは店の格が決まる場所だから、ルールで決め切る。いすみの森林地帯に置く「都会的リトリート」前提で、サイン表記の設計をまとめる。

サイン表記設計:店名ルール/英字・和字/フォント方向性(いすみ×都会的リトリート)

1. まず結論:サインは「小さく、読めて、上品」が勝ち
森の中では、派手な看板は“浮く”。逆に小さくても、整っていれば勝手に高級に見える。
目標はこれ。
遠くからは「店だ」と分かる
近づくと「店名が読める」
写真に写ると「都会的で上品」に見える

2. 表記の基本ルール(迷いを消す)
ルールは3つだけ。
A. 情報を詰めない
サインに入れるのは最大で2行まで。電話番号やメニューは入れない。入れた瞬間にチープになる。
B. “Salon” は使う(業態を説明する)
店名だけだと初見が迷う。だから2行目に「Salon」。これは強い。
C. 記号と飾りは入れない
星や葉っぱや筆記体の装飾はほぼ事故る。都会的にするなら、線は真っ直ぐ。

3. 店名の構造(3パターン)
店名自体がまだ確定していない前提で、勝てる構造を3つ出す。どれを選んでも品が出る型。
パターンA:英字店名+Salon(王道で強い)
表示例
OPERATION Salon
OPERATION hair salon(長いので基本は非推奨)
向いている店
都会的、ミニマル、黒外装に合う。SNSでも映える。
注意
店名が抽象すぎると検索で埋もれるので、SNS・Googleビジネスプロフィールでは「地域+美容室」をきちんと補う。
パターンB:和名+Salon(森林に馴染むが古くしない)
表示例
いすみの髪室 Salon(「髪室」は好み。読みやすい字にする)
森の美容室 Salon(説明過多にならない範囲で)
向いている店
土地の空気を取り込みたい場合。だけど都会的を保つなら、文字は細め、余白多め。
注意
丸文字、筆文字、和風すぎる書体はやめる。都会的リトリートから外れる。
パターンC:英字+和字の併記(最強の実務型)
表示例(2行構成)
OPERATION
美容室 / Salon
または
OPERATION Salon
いすみ
向いている店
初見が迷わない。地元にも伝わる。写真にも強い。いちばん事故が少ない。

4. 表記の優先順位(現場で効く)
サインは「誰に読ませるか」で優先順位が変わる。
1位:初めて来るお客様(迷わないこと)
2位:写真・動画で見る人(映えること)
3位:近隣・地域(嫌われないこと)
だから、英字が主でも「Salon」や小さな和字で業態を補うのが正解。

5. フォント方向性(都会的に見せるコツ)
フォントは、実質これで決まる。
方向性:サンセリフ(ゴシック系)一択
都会的ミニマルはサンセリフ。セリフ体や筆記体は世界観が変わる。
候補の性格(言葉で定義)
ニュートラル系:クセがなく上品(最推奨)
太ゴシック系:強いが、森では少し強圧になることがある
極細系:高級に見えるが、夜の視認性が落ちやすい
最適解
「中細〜細」くらい。細すぎない。

6. 文字の組み方(これで一気に品が出る)
デザインの勝敗は字間で決まる。ルールはこれ。
大文字(ALL CAPS)を使うなら、字間を少し広げる
例:O P E R A T I O N
小文字混在なら、字間は普通でOK
行間は広め(詰めると安っぽい)
おすすめは次の2つ。
A案(都会的・強い)
OPERATION
Salon
B案(静けさ・上品)
OPERATION
美容室 / Salon

7. サインの仕様(光らせ方・素材・サイズの目安)
いすみの森で上品に見せるなら「静かに光る」が正解。
発光方式(おすすめ順)
1)内照式(箱文字・内照サイン):夜に強い、上品
2)外照式(スポットで照らす):構成がシンプル、メンテ楽
3)文字単体で非発光:昼は良いが夜が弱い(誘導灯が別途必要)
素材の方向性
黒外装なら、文字は「白〜暖色系」が読める
金属切文字+間接照明は高級に見える
木板に文字は森に馴染むが、都会的にするなら“木を増やしすぎない”
サイズの目安(感覚でOK)
店名の文字高:80〜120mm程度で十分(デカくしない)
看板全体:横600〜900mm程度
サブ行(Salon等):店名の半分以下の文字高

8. NG集(これやると一気に安っぽい)
電話番号、営業時間、メニューをサインに入れる
フォントを2種類以上混ぜる
装飾(星、葉、過剰なアイコン)を入れる
文字をデカくして“道の駅感”にする
白抜きが弱くて読めない(夜は特に)

9. すぐ使える提案(3案、これで決めていい)
現在の方向性(黒・都会的・森)に合わせるなら、これが強い。
提案1(いちばん事故らない)
OPERATION
美容室 / Salon
提案2(都会的に振り切る)
OPERATION
Salon
提案3(場所性を足す)
OPERATION Salon
ISUMI