建築を読む、時間を感じる。技術と詩の交差点へ
一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
技術、哲学、感性、地域——それぞれの断片を物語としてつなぎ
建築という旅のページをめくるように読める"連載アーカイブ"です
更新日:2025.11.23
14_CAFE開業コーチ
コーチング第2章_準備編_B-002自分の技術の「客観的評価」
コンテナハウスのカフェ開業|コーチング第2章 準備編 2/10
もくじ
コンテナハウスでカフェを開業する。
それは、単に「好きなコーヒーを出す場所をつくる」という話ではなく、
あなた自身の技術で、商品とお店の運営を支え続ける仕事 です。
まず最初に確認しておきたいのは、これです。
「あなたの技術は、本当に“営業ベース”で通用するレベルにあるか?」
これは、自己否定しろという話ではありません。
逆に、過小評価も過大評価もせず、冷静に“今の立ち位置”を知ろう という提案です。
「お遊びの店」と「本気の開業」は、まったく別物
幼稚園のバザー、学園祭の模擬店、フードフェスの一日限定ショップ。
こういう場では、正直そこまで技術は問われません。
ちょっと見た目が映えて、味がそこそこなら、
「おいしいね!」「映えるね!」で一日が終わります。
安っぽい紙皿やアルミケースに生地を流して
「はい、これケーキです〜」と出しても許される世界。
新しいもの好きの一見客が、入れ替わり立ち替わりやってくる世界。
遊びでやるなら、それでもいい。
むしろそれでいい。楽しいし、経験にもなります。
でも。
本気でカフェを開業するなら、
そこから一段、いや二段くらい上の「技術の確立」が必要です。
一生「修業中」で終わってしまう人たち
ここで、ひとつの“沼”の話をしておきます。
カフェ業界にも、ベーカリー業界にも、どこにでもいるタイプです。
どれだけ勉強しても
製菓・製パン・調理学校に通っても
修業を何年続けても
「まだまだだめかも」「もっと完璧になってから…」
そう思ってしまう人。
たいていは、
気が小さくて
完璧主義で
自分を正しく評価できないタイプ
です。
そして、ずっと修業ばかりを続けているうちに、
もうそこから動けなくなる。
修業すること自体が目的になってしまい
あちこちのお店を「修業先」として渡り歩き
気がついたら、自分のやりたいことがわからなくなっている
頭の中と押し入れだけがどんどん豊かになっていく。
どこで仕入れたかわからないレシピの断片
誰かの店のコンセプトだった業態アイデア
ノートにメモだけ残された「いつかやる」はずだった企画
それが、出番のないまま積み上がっていくだけ です。
経営側から見ると、
「従順で、そこそこできる、使いやすいスタッフ」
で終わってしまう。
……ちょっと、さみしいですよね。
「完璧になったら開業する」は、永遠に来ない未来
ここで、現実的なことを言います。
「完璧に技術を習得してから開業する」この条件を本気で満たそうと思ったら、
永遠に誰も開業できません。それでも、技術は重要です。
じゃあ何が必要かというと、何年勉強したか、何年修業したか
ではなくて、
“自分の店を回していけるだけの技術”があるかどうか
ここを冷静に見る必要があります。
必要なのは「全体の流れを回せる技術」大事なのは、単品の技術ではありません。
「この料理なら一日80食出せます」
「このドリンクだけは誰より早く出せます」
「皿洗いのスピードだけはピカイチです」もちろん、それぞれ大事なスキルです。
でもカフェ経営に必要なのは、開店から仕込み、ピークタイム、片付け、閉店まで
“一連の流れ”を自分で把握し、回せるかどうか。この視点です。
何時までに何を仕込み、どんなオーダーが重なったときにどうさばき、
ドリンク・フード・会計・片付けをどんなリズムで回すか。
カフェのオペレーションを、頭の中で映画のように再生できるか?
それを、実際に現場で再現できるか?ここまで見て、「まだ怪しいな」と感じるなら、
もう少しだけ“技術の筋トレ”が必要かもしれません。
「自信がなくて開業できない」あなたへ
よくいるのが、このタイプ。
「自信がないから、まだ開業できません…」
さて、ここからが本題です。このタイプの人は、本当に“技術が足りない”のでしょうか?
答えは、たいてい NO です。
危機回避能力が高く間抜けなミスをあまりせずとんでもない外し方もしない
周りからは「もう開けるレベルだよ」と言われているのに
最後の一歩だけが踏み出せない
つまり、誰かに、背中を押してほしいだけというケースが多い。
本当は、もうとっくに「開けるレベル」に来ているのに、
自分だけがそれを認めていない状態です。
もし、あなたがこのタイプなら──本当に開業したいなら、とっとと開業しましょう。
完璧じゃないスタートでも、走りながらブラッシュアップしていくこと ができるジャンルです。
ただ一つ、覚えておいてほしいのは、自信だけあって技術がスカスカ、技術だけあって自信ゼロ
どちらも危ういということ。
カフェは「食べ物+飲み物」だけではない。だけど…
カフェは、飲食店である以上、提供する飲み物・食べ物、安定したクオリティ
衛生管理、これはゼロにはできません。
とはいえ、カフェが本当におもしろくなるのは、
その先です。
コンテナハウスという器のデザイン店内の空気感や照明、音楽
スタッフのホスピタリティ、その街、その時代を映すような雰囲気
お客様が「ここ、なんかいいな」と感じる全体の魅力、こうした総合力で、
「また来よう」と思ってもらえるお店になっていきます。
でも、その前提となるのはやはり、「飲食店としての基本的な技術」と
「その技術を信じられるだけの自信」のバランス。ここが欠けていると、
そもそも出店に対する“覚悟”が固まらないのです。
AI時代でも、あなたの「手」と「舌」はごまかせない
いまは、AIやSNSで、いくらでも情報が手に入ります。
「人気カフェのレシピ」
「バズるメニューの作り方」
「AIが考えた新メニュー案」
こうしたものも山ほど出てきます。
でも、
実際にお客様の口に入るものをつくるのは、あなたの手と舌です。
AIはレシピを提案してくれても、
味見も火加減の調整もしてくれません。
AI的な時代だからこそ、人間の「手触り」と「舌」と「現場の勘」が光る のが、
コンテナカフェのような小さな店の強みです。
まとめ_本日のコーチング B-002
「技術」と「自信」のバランスを、冷静に見てみよう。
技術だけあっても、自信がまったくなければ前に進めない。
自信だけあっても、技術が伴っていなければ、お客様を裏切る。
まずは、自分の技術を「客観的」に評価してみる。
やるべき筋トレがまだあるのか、
それとも、もう十分で「ただの怖さ」だけが残っているのか。
それを見極めることが、
コンテナハウスでカフェを開業するための リアルな一歩目 です。
今回のテーマ Q&A|「自分の技術の客観的評価」編
Q1. どのレベルまで技術があれば、カフェ開業してもいいのでしょうか?
A. 「完璧」になる必要はありません。
目安としては、一日の営業の流れを一人で回せるイメージが持てるかどうか。
仕込み〜ピーク〜片付けまでを、自分の技術と段取りでなんとかできそうなら、
スタートラインには立てています。
Q2. 自分の技術を客観的に評価する具体的な方法はありますか?
A. おすすめは、次の3つです。
信頼できるプロに食べてもらい、率直なフィードバックをもらう
一日限定のポップアップやイベント出店をして、売れ方とお客様の反応を記録する
「開店〜閉店」までのシミュレーションを紙に書き出し、抜けている作業・時間を洗い出す
主観だけでなく、第三者の感想+数値(売れ方・回転) をセットで見るのがポイントです。
Q3. レシピは得意でもスピードが遅いです。これでも開業していいですか?
A. スピードは大事ですが、トレーニングでかなり改善できます。
問題は、
「スピードを上げる工夫を本気でやっているかどうか」。
仕込みでどこまで前倒しできるか
動線や道具の置き場所を最適化できるか
メニュー構成自体を“出しやすいもの”に調整できるか
これらを見直した上で、まだどうしても厳しいなら、
スタッフを少し入れる、メニューを絞る、予約主体にするなど、
運営側の設計でカバーする方法 もあります。
Q4. 完璧主義で、どうしても「まだ足りない」と思ってしまいます…
A. その気持ちはよくわかりますが、
完璧主義者の多くは 「足りない」ではなく「怖い」 だけだったりします。
まず、信頼できる人に「もう開業していいレベルか」聞いてみる
自分が“最低限クリアすべき基準”を書き出し、チェックしてみる
クリアしているなら、「あとは現場で育てる」と腹をくくる
このプロセスを経てもなお「全然足りていない」なら、
もう少し準備が必要かもしれません。
でも、周囲が口を揃えて「もうやりなよ」と言っているなら、たぶんもう大丈夫です。
Q5. 修業をどこまで続けたら独立していいのかわかりません。
A. 期間ではなく、状態で判断 しましょう。
「今いる店で学べることは、ほぼ取り切った」と感じる
「自分だったら、こういうふうに店をやりたい」というイメージが見えてきた
「このままここにいたら、いつか後悔しそうだ」とうっすら感じている
この3つがそろってきたら、
修業フェーズから「独立準備フェーズ」に移るタイミングです。
Q6. 技術に自信がある一方で、接客やコミュニケーションが苦手です…。
A. カフェは「技術だけの世界」ではありませんが、
技術がしっかりしている人はそれだけで大きな武器 を持っています。
接客が得意なスタッフを一人入れる
自分はキッチン中心、カウンター越しの短いコミュニケーションから慣れていく
予約制・カウンター少なめのスタイルで、お客様との距離を調整する
といったやり方もあります。
技術はすでに十分あるなら、
コミュニケーションは 「慣れ」と「設計」でカバー」 できます。
Q7. コンテナハウスのカフェだからこそ、必要な技術ってありますか?
A. あります。一般的な店舗に加えて、例えばこんなポイント。
コンテナ特有のスペースの狭さを前提にしたオペレーション(動線設計)
電気・水・排水などインフラ容量と、調理機器のバランスを読む力
小さなキッチンでも回るようにメニューを絞り込む技術
「狭さ」と「機動力」は、コンテナカフェの魅力でもあります。
そのぶん、ムダのない技術と段取り が求められる、というわけです。
Q8. 技術に自信はあるのですが、「自分の味」があるか不安です。
A. 「自分の味」は、
開業してから“育っていくもの” だと思ってください。
お客様の反応を見ながら微調整を重ね
通ってくれる常連さんの声を聞き
季節ごとに少しずつ変化させていく
このプロセスを3年、5年と続けるうちに、
自然と「あの店の味」が立ち上がってきます。
最初から“完成されたオリジナリティ”を求め過ぎなくて大丈夫です。
Q9. 技術チェックに「AI」を使うことはできますか?
A. AIに味見はできませんが、
レシピの整理・原価計算・手順の論理チェック にはかなり使えます。
自分のレシピと手順を書き出して、AIに「手順の抜け」や「無駄な工程」がないか聞く
原材料と分量を入力して、原価の目安を試算する
メニュー構成をAIに見せて、「オペレーション上の危険ポイント」を洗い出してもらう
こうした使い方をすると、
主観だけでは気づけなかった改善点が見えてきます。
Q10. 最終的に「開業していいかどうか」を決める一言の基準は?
A. シンプルに、これでOKです。
「今の自分の技術と段取りで、
初日から3日間、何があっても店を回し切れるイメージが持てるか?」
もちろん、トラブルは起きます。
予想外のことも起きます。
それでも、
大事故にはならない
お客様に「もう来ない」と思われるレベルの失敗にはならない
何かあっても、ただでは転ばず、次に活かせる
──ここまでイメージできるなら、
もう「開業してはいけない理由」は、あまり残っていません。
