コンテナハウスコラム
四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。
更新日:2025.08.12
コンテナ宿泊施設考(連載5)
「コンテナ宿泊施設構築完全ガイド|持続可能でおしゃれな宿泊体験のすべて」(連載3/5)
第3章 設計と演出──宿泊者を虜にするコンテナコテージデザイン
新造の建築用コンテナで作られるコテージは、単なる「宿泊のための建物」ではない。
それは宿泊者の五感と記憶を揺さぶる舞台であり、彼らが物語の主役になるためのセットだ。
たとえば、海辺に立つコンテナコテージのリビングから朝日が差し込む瞬間。
その光は、設計時に窓の角度まで計算して組み込まれた“演出”だ。
森の中の寝室に落ちる木漏れ日も、偶然ではなく照明計画と窓の位置が生んだ計算の美学である。
もくじ
外観デザインが「泊まりたい」気持ちをつくる
宿泊者を魅了するコンテナコテージの設計美学とは?
宿泊施設の外観は、訪問者が最初に出会う「顔」だ。
ここでの印象は、滞在全体の期待値を大きく左右する。
自然に溶け込むタイプ
森の中ではダークブラウンやモスグリーン、焼杉板の外壁
海辺では淡いブルーやホワイトで爽やかに
素材は無垢材や自然塗料で環境と調和
ランドマーク型デザイン
鮮やかなレッド、イエロー、ターコイズブルーなど視認性の高い色
外壁全面をアートペイントし、SNSで拡散される“フォトスポット”に
周囲から浮くのではなく、存在感を武器にする戦略
写真提案
森に溶け込む焼杉板外壁のコテージ(背景に紅葉)
ビビッドブルーの海辺コンテナコテージ(空と海が映り込む)

外壁素材と色彩の心理効果
外壁素材はデザイン性だけでなく、宿泊者の感情にも影響する。
木材:ぬくもり・安心感・自然との一体感
金属パネル:モダン・都会的・シャープ
塗り壁:柔らかさ・工芸的な温かみ
色彩心理を使えば、外観はさらに印象的になる。
青は安心感と静けさ、白は清潔感、黒は高級感と特別感、赤はエネルギーと非日常感をもたらす。
ある黒塗装の森のコテージは、口コミで「秘密基地みたいでワクワクする」と話題になり、予約率が20%上昇した。

内装は「もう一度来たい」を決める
宿泊中、ゲストがもっとも長く過ごすのは室内だ。
だから内装の心地よさは、リピート率に直結する。
新造コンテナの高い断熱性と防音性は、内装の自由度を最大化する。
壁や天井を無垢材で包み、鉄骨の冷たさを柔らかく中和。
床にはオークやパインの無垢材を敷き、裸足でも心地よく歩ける質感を演出する。
照明は直射ではなく間接光をベースに。
ベッド横や廊下、足元灯の配置で「安心できる夜の空気」を作る。

家具・照明・素材の選び方
家具は空間効率とデザイン性を両立する。
コンテナは寸法が決まっているため、造作家具が有効だ。
たとえば、壁一面の造作ベッドや、窓下に収まるローカウンターは、見た目も機能も優れている。
素材のおすすめ組み合わせ
床:無垢オーク材(高級感)/パイン材(柔らかい印象)
壁:木パネル+漆喰/珪藻土(調湿効果)
窓:二重ガラス+断熱サッシ(快適性と省エネ)
照明は暖色系LEDで統一し、昼は自然光、夜は柔らかな人工光で空間を包む。

季節ごとの演出でリピーターを増やす
同じ宿でも、季節ごとに違う顔を見せれば「また来たい理由」になる。
春:室内に桜の枝、デッキに花鉢、花見セット
夏:全開口窓、デッキにハンモック、屋外シャワー
秋:焚き火台、ランタン、読書コーナー
冬:薪ストーブ、雪見窓、ホットワインセット
実際に北海道のあるコテージでは、冬季限定の薪ストーブ導入後、冬の稼働率が前年比35%アップした。
写真提案
春の花とデッキチェア
雪景色と薪ストーブのリビング

写真映え=SNS拡散の設計
SNS経由での予約率は年々上昇しており、特にInstagramは旅行計画の重要な情報源となっている。
写真映えを意識するなら:
窓の外に絶景が入る位置に家具を配置
夜は室内の光が外に漏れる演出を
フォトスポットを館内に複数用意
ある宿では「#森とコンテナ」のハッシュタグを作り、利用者投稿数が月100件を超えた。

ユーモアは口コミを加速させる
笑いは感情記憶を強化する。
小さなネタは滞在後も話題にされやすく、口コミ拡散につながる。
鏡に「今日も最高のあなた」
冷蔵庫に「ビール1本=笑顔1回」
部屋番号を「海」「森」「空」に命名
SNSでシェアされたユーモア投稿は、広告以上の効果を持つことがある。

内外の動線設計
快適な滞在は、動線設計がカギを握る。
玄関→リビング→デッキの直線動線で外へのアクセスを簡単に
寝室と水回りを近接させ、夜間の移動負担を軽減
キッチンとデッキを近くにしてBBQ導線を最短に
新造建築用コンテナの自由度は、こうした動線の最適化に最適だ。

まとめ
外観は「訪れたくなる理由」を、内装は「また来たくなる理由」を作る。
新造の建築用コンテナは、その両方を自由にデザインできる器だ。

記事の監修者

大屋和彦
九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。