コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.08.10

コンテナCAFE開業Coach50連載

CAFE_コンテナ開業のためのコーチからの50の手紙_9/50

A-009 日本の社会人として「標準」はクリアせよ!

社長業は孤独な登山

これからカフェを開業しようとするあなたは、もう「経営者予備軍」です。
その瞬間から、社会人としての基本的な能力や常識は、最低限クリアしておく必要があります。なぜなら——この先、あなたを助けてくれる「上司」や「先輩」はいません。頼る人はゼロ。頼られる人は増えるばかり。それが社長業という孤独な山登りです。
この山は、気合いだけでは登れません。途中で足を取られたり、崖から落ちたりする人のほとんどは、「基本」をなめてかかった人です。

「普通の社会人」って、どこにいる?

さて、「普通の社会人」とはなんでしょうか。
これが意外に難しい。40代の感覚と20代の感覚では雲泥の差があり、ましてや10代の「普通」なんて、正直言って恐ろしくなることもあります。
ここでいう「普通」とは、「あいつスゴい!」と絶賛されるわけでも、「あいつダメだな…」と呆れられるわけでもない、ちょうど真ん中。社会の中で浮かず沈まず、安定して存在できるラインです。
もしあなたが今、この文章を読んでいるなら、すでに第一段階はクリアです。
なぜなら、この「コーチ100」に申し込む時点で、「普通の社会人」以下の多くの人が脱落しているからです。

驚くほど多い、「標準以下」の人々

現代、メールひとつを取っても、社会人としての差ははっきり出ます。
例えば、こんなメールが届くことがあります。
件名:質問なんですがー
本文:はじめましてもなく、名乗りもなく、突然質問だけ。
…はい、削除です。
「拝啓…」とまでかしこまる必要はありませんが、せめて名乗るのは最低限のマナー。これができない人が開業に乗り出すと、高確率で後々トラブルを招きます。

社会人としての基本動作チェックリスト 

あなたは次のことが、無意識にでもできていますか?
約束の時間は必ず守る。
自分の発言に責任を持つ。
間違ったら言い訳せず、まず謝って対応する。
筋道を立てて話す。
相手の話を聞くことに重点を置く。
焦らず落ち着いて考える。
先を見越して行動する。
電話をかけたら、まず相手の都合を尋ねる。
これらはすべて、「箸の上げ下ろしを教えるような」ことです。
しかし、この基本すらできずに開業する人が少なくないのが現実です。

5. 常識が欠けると、現場は地獄になる

例えば、設計施工の打ち合わせ。
何度も話し合いを重ねてようやく形になってきたのに、壁が立ち、ドアが付き、床のタイルが貼られた段階で


「やっぱり窯をガスから電気に変えたいな〜」
…こういうことを言い出す人がいます。常識不足の典型例です。
工期も費用も無駄に膨らみます。
また、「〇日までに書類を」と何度も念押しされても用意できない。
保健所の検査で不適切な発言をしてしまう。
これらもすべて、常識が足りないがゆえの失敗です。

6. 開業後の“孤立”と信用低下

常識不足のまま開業すると、店は街で浮いた存在になります。
ご近所から苦情が出る。客が来ない。噂が広まる。「あそこのパン屋ね…」と含み笑いされる。
匂いのせいにされることもありますが、本当は「あなた自身」が煙たがられているのです。
業者は距離を置き、銀行は口うるさくなり、大家から文句が出る——こうなると軌道修正は困難です。

7. 信用は“お金”より重要

社会人としての信用は、お金の流れに直結します。
「国民生活金融公庫」や銀行から融資を受けようとする場合、国民健康保険・国民年金・税金をきちんと払っているかは必ずチェックされます。
退職して開業準備に入るなら、その瞬間に国民健康保険に切り替えておく必要があります。ルーズにしていると、借入の段階でつまずきます。
さらに、安易なローンや引き落とし不可は厳禁。
「今月ちょっと苦しくて引き落とせなかったけど、すぐ補填した」という事態が2〜3回重なると、カード会社の内部チェックに引っかかり、セミブラックリスト入り
信用は雪のように静かに、しかし確実に溶けていきます。

8. 「真っ当な社会人」であることが条件


最終的に、開業して成功する人は「真っ当な社会人」です。
これは融資条件であるだけでなく、街に受け入れられるための最低条件でもあります。
あなたの行動、態度、言葉遣い、支払いの習慣、すべてが信用を形作ります。
そして信用は、お金や商品よりも、あなたの商売を長く支える力を持っています。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。