コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.07.25

コンテナCAFE開業Coach50連載

CAFE_コンテナ開業のためのコーチからの50の手紙_3/50

カフェを開業するというのは、「自分の夢をカタチにする」ことです。
しかし同時にそれは、「経営という荒波に乗り出す」ことでもあります。
もしかしたら、あなたは今まで飲食店でアルバイトをしたり、社員として働いていた経験があるかもしれません。たくさんの現場を見て、ノウハウもそれなりに身につけてきた──。だから、ある程度やれる自信はある。そう思っている方も多いでしょう。
でも、ここでひとつ、はっきり言わせてください。
「経営者」としてカフェを始めるというのは、今までの延長線ではありません。まったく別物です。

経営者とは、「全部を決める人」である 

スタッフとして働いていた頃は、誰かの指示に従っていればよかった。
でも、あなたがオーナーになると、それが一変します。
最初にあなたの元に飛び込んでくるのは、意外と「つまらない問題」です。
たとえば──
「トイレットペーパーが切れました」
「レジのレシートロールがありません」
「テイクアウト容器が足りません」
そんなこと、現場で考えてなんとかしてよ……と言いたくなるかもしれません。
でも、誰もがあなたに聞いてくるのです。なぜなら、あなたが店の責任者だから。
こういった「こまごました問題」に対して、都度指示するのは時間の無駄。
だからこそ、あらかじめ“ルール”を決めておく必要があります。
「これはこういう時にこうする」
「これが足りなくなったらこうやって補充する」
「これはこのスタッフの仕事範囲」
こういった判断の枠組みを用意しておくことで、あなたは本来やるべき仕事──つまり、「創造的な戦略」に集中できるようになります。

あなたはカフェの“船長”である

経営者とは、日々のオペレーションの舵を取る「船長」であり、
明日の航路を決める「航海士」であり、
目的地を指さす「地図の持ち主」でもあります。
お店を運営するということは、
スタッフを導き
利益を確保し
商品を磨き
成長の道筋を描き
お客様に価値を提供し続ける
という、非常に多面的な仕事を日々同時進行でこなすことです。
「俺はコーヒーを淹れていたいだけなのに……」
そう言いたくなる瞬間もあるかもしれません。
でも、それだけでは店は回らないし、続かないのです。


スタッフとの“距離感”が運命を分ける
そして、もう一つ大事なポイントがあります。
それは、経営者とスタッフの「距離感」です。
スタッフに好かれたい、仲良くやりたい──その気持ちはとてもよくわかります。
でも、近づきすぎると、判断力が鈍り、決断のスピードが落ちます。
たとえば、こんな場面。
「このやり方じゃだめだ」と思っているのに、言えない。
「これは自分で判断してくれ」と思っても、相手は頼ってくる。
「ルール」を徹底したいのに、情に流されてしまう。
その結果、店の流れがグズグズになり、
最悪の場合、「あの人、ちょろいよね」とスタッフから見透かされてしまいます。
経営者は、スタッフの“味方”でありながら、同時に“管理者”でもあります。
線引きは明確に。期待すべきところ、任せるべきところを冷静に判断しながら、「人を育てる立場」に立たなければなりません。

あなたの責任で「利益」を出さなければならない

そして何よりも大事なのは、店としての「利益」を出すこと。
「利益」とは、単に自分が儲けるという意味ではありません。
スタッフにきちんと給料を払う
設備を整える
原材料を仕入れる
自分自身の生活を支える
すべての源になるのが、利益です。
しかも、それを「成長させていく」ことが求められます。
成長できなければ、スタッフの給与も増えず、あなた自身のモチベーションも落ちていく。
最悪の場合、「ただの維持運転」に陥り、カフェは縮小していきます。

経営者の仕事とは、「人の生活」を背負うこと

経営者とは、お金を稼ぐ人、店を動かす人である以前に、
「関わるすべての人の生活を背負う人」でもあります。
あなたの考えで動き、あなたの商品で利益を生み、
それによって人に給料を払い、人生を支える。
その重みを引き受けられる人だけが、「経営者」になれるのです。

今日のコーチング003

店がスタートした瞬間、あなたは「経営者」です。
あなたが舵を取る責任者であり、方向を決める船長。
日々のオペレーション、スタッフ育成、利益確保、成長戦略……
そのすべてを背負って前に進む覚悟が、これからのカフェ経営には求められます。
プレッシャーに押しつぶされそうになる時もあるでしょう。
でも、それを乗り越えられた時にしか見えない「景色」があります。
そして、それを喜びと感じられるかどうかが、経営者としての資質なのです。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。