建築を読む、時間を感じる。技術と詩の交差点へ

一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
技術、哲学、感性、地域——それぞれの断片を物語としてつなぎ
建築という旅のページをめくるように読める"連載アーカイブ"です

更新日:2025.07.25

13_2LDK特集

CAFE_コンテナ開業のためのコーチからの50の手紙_3/50

カフェを開業するというのは、「自分の夢をカタチにする」ことです。
しかし同時にそれは、「経営という荒波に乗り出す」ことでもあります。
もしかしたら、あなたは今まで飲食店でアルバイトをしたり、社員として働いていた経験があるかもしれません。たくさんの現場を見て、ノウハウもそれなりに身につけてきた──。だから、ある程度やれる自信はある。そう思っている方も多いでしょう。
でも、ここでひとつ、はっきり言わせてください。
「経営者」としてカフェを始めるというのは、今までの延長線ではありません。まったく別物です。

経営者とは、「全部を決める人」である 

スタッフとして働いていた頃は、誰かの指示に従っていればよかった。
でも、あなたがオーナーになると、それが一変します。
最初にあなたの元に飛び込んでくるのは、意外と「つまらない問題」です。
たとえば──
「トイレットペーパーが切れました」
「レジのレシートロールがありません」
「テイクアウト容器が足りません」
そんなこと、現場で考えてなんとかしてよ……と言いたくなるかもしれません。
でも、誰もがあなたに聞いてくるのです。なぜなら、あなたが店の責任者だから。
こういった「こまごました問題」に対して、都度指示するのは時間の無駄。
だからこそ、あらかじめ“ルール”を決めておく必要があります。
「これはこういう時にこうする」
「これが足りなくなったらこうやって補充する」
「これはこのスタッフの仕事範囲」
こういった判断の枠組みを用意しておくことで、あなたは本来やるべき仕事──つまり、「創造的な戦略」に集中できるようになります。

あなたはカフェの“船長”である

経営者とは、日々のオペレーションの舵を取る「船長」であり、
明日の航路を決める「航海士」であり、
目的地を指さす「地図の持ち主」でもあります。
お店を運営するということは、
スタッフを導き
利益を確保し
商品を磨き
成長の道筋を描き
お客様に価値を提供し続ける
という、非常に多面的な仕事を日々同時進行でこなすことです。
「俺はコーヒーを淹れていたいだけなのに……」
そう言いたくなる瞬間もあるかもしれません。
でも、それだけでは店は回らないし、続かないのです。


スタッフとの“距離感”が運命を分ける
そして、もう一つ大事なポイントがあります。
それは、経営者とスタッフの「距離感」です。
スタッフに好かれたい、仲良くやりたい──その気持ちはとてもよくわかります。
でも、近づきすぎると、判断力が鈍り、決断のスピードが落ちます。
たとえば、こんな場面。
「このやり方じゃだめだ」と思っているのに、言えない。
「これは自分で判断してくれ」と思っても、相手は頼ってくる。
「ルール」を徹底したいのに、情に流されてしまう。
その結果、店の流れがグズグズになり、
最悪の場合、「あの人、ちょろいよね」とスタッフから見透かされてしまいます。
経営者は、スタッフの“味方”でありながら、同時に“管理者”でもあります。
線引きは明確に。期待すべきところ、任せるべきところを冷静に判断しながら、「人を育てる立場」に立たなければなりません。

あなたの責任で「利益」を出さなければならない

そして何よりも大事なのは、店としての「利益」を出すこと。
「利益」とは、単に自分が儲けるという意味ではありません。
スタッフにきちんと給料を払う
設備を整える
原材料を仕入れる
自分自身の生活を支える
すべての源になるのが、利益です。
しかも、それを「成長させていく」ことが求められます。
成長できなければ、スタッフの給与も増えず、あなた自身のモチベーションも落ちていく。
最悪の場合、「ただの維持運転」に陥り、カフェは縮小していきます。

経営者の仕事とは、「人の生活」を背負うこと

経営者とは、お金を稼ぐ人、店を動かす人である以前に、
「関わるすべての人の生活を背負う人」でもあります。
あなたの考えで動き、あなたの商品で利益を生み、
それによって人に給料を払い、人生を支える。
その重みを引き受けられる人だけが、「経営者」になれるのです。

今日のコーチング003

店がスタートした瞬間、あなたは「経営者」です。
あなたが舵を取る責任者であり、方向を決める船長。
日々のオペレーション、スタッフ育成、利益確保、成長戦略……
そのすべてを背負って前に進む覚悟が、これからのカフェ経営には求められます。
プレッシャーに押しつぶされそうになる時もあるでしょう。
でも、それを乗り越えられた時にしか見えない「景色」があります。
そして、それを喜びと感じられるかどうかが、経営者としての資質なのです。