建築を読む、時間を感じる。技術と詩の交差点へ
一棟のコンテナハウスの裏には、いつも「人」と「時間」がある
技術、哲学、感性、地域——それぞれの断片を物語としてつなぎ
建築という旅のページをめくるように読める"連載アーカイブ"です
更新日:2025.07.21
13_2LDK特集
コンテナハウスで暮らす2LDKという革命_6/8
                                
                            
第6章:価格と性能のリアル
ローコスト×高耐久の答えがここにある。
家を建てるというのは、ロマンであり、決断であり、そして現実との対話でもあります。「いくらかかるのか」「その性能はどうか」「長く安心して住めるのか」。この問いに正面から向き合わずして、私たちはお客様の信頼を得ることはできません。この章では、コンテナハウス2LDKの価格感と性能面の実際、そして私たちがそれをどう実現しているのかを、包み隠さずお伝えします。

ローコストの“からくり”は、むしろ正直さにある
「コンテナハウスって安いんですよね?」
この質問、よく受けます。そして私たちは、こうお答えします。
「安かろう悪かろうなら、うちはやりません。ただ、無駄のないローコストは徹底しています」と。そもそも私たちが採用しているのは、輸送用中古コンテナではなく、建築専用の新造コンテナ。強度・断熱・防錆性能がまったく異なるため、見かけの“激安コンテナハウス”とは一線を画します。
ウワサで作られた「ローコスト」ほどのローコストではありません。それは、次のような合理的なローコスト要素を、建築としての整合性の中で丁寧に組み込んではいますが、「何かいらないものがある」わけではないので、「夢のように安くなる理由はない」のです。ローコストの要素は以下のような部分です。
・工場製作によるパネルの規格化と製造の平準化
・複雑な屋根形状や不要な外壁装飾を排したミニマルデザイン
・複数棟の製作によるスケールメリット(50棟以上など何棟も同じものを作る時)
・出来る限りの調節工事。中間マージンカット
・短工期による職人稼働コストの最適化
・仕上げ工事も同じ作業場で行う時
結果、2LDKのコンテナハウスは、仕様によっては1,000万円台後半からの価格設定も可能になります。
もちろん、内装や設備のグレードアップによって価格は上下しますが、注文住宅としての自由度を維持したままこの価格帯を実現できるのは、コンテナという躯体が持つ基本性能の高さと合理性ゆえです。
コンテナハウスは「重量鉄骨」という本格鉄骨造のジャンルです。そのグレードとしての価格帯を抜け出すことはできませんので、「木造建築」よりは少し上のコストのジャンルになり、在来工法の重量鉄骨よりは少々低価格路線でご提供できています。

高耐久の本質は、「余白と素材」にあり
ローコストと高耐久は、しばしばトレードオフと考えられます。
ですが、私たちは『“選ぶポイント”さえ間違えなければ、両立は十分可能』だと考えています。
たとえば、以下のようなアプローチです:
構造体そのものが鉄であるため、シロアリ被害はゼロ。屋根はフラットまたは緩勾配に設計し、雨漏りリスクを徹底制御。外装はガルバリウム鋼板などを使用し、錆と腐食に強く、内装は極端な湿気や日射を避ける素材で構成し、経年変化に耐える空間へ、さらに、コンテナ構造だからこそできるのが、「将来的な交換や増設が容易」であるという点。
つまり、耐久性=“壊れないこと”ではなく、“更新できること”という設計思想の転換が可能になります。これは、言い換えれば「一度建てたら終わり」ではなく、「建てたあとも付き合える家」という、まさに未来へのメンテナンス可能性をもった建築です。

コストと性能を“天秤”にかける時代の終わり
かつて、家づくりはこう考えられていました。
安い=我慢すること
高い=安心の代償
でも今の時代、テクノロジーと素材進化、そして施工技術の工夫により、その常識は崩れつつあります。
私たちは、『設計段階で最もバランスのとれた“トータル提案”』を行うことで、コストと性能の二項対立を越えます。例えるなら、「無理せず、でも妥協せず」。
そんな住まい方のちょうどいい答えが、ここにあります。

◆ タイニーハウスと2LDKの“交差点”
「タイニーハウス」という言葉が人気を集めています。それは単なる小さい家ではなく、“自分に必要なものだけで生きる”という価値観の象徴です。実は、2LDKのコンテナハウスも、この精神にとても近い。ムダを削ぎ落とし、必要な場所だけをしっかり確保する。素材と空間に愛着を持ち、長く育てる。コストと性能のバランスを突き詰める過程で、私たちが行き着いたのは、実は“豊かさの再定義”なのかもしれません。
                    