コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.07.12

コンテナハウスを取り巻く法規制

コンテナハウスを取り巻く法規制をわかりやすく解説!第4章

第4章 中古コンテナを使うと違法になる?

「中古コンテナをDIYすれば安く済む」という幻想

ネットを検索すれば、「輸送用コンテナを安く手に入れて、DIYで家を作ろう!」という記事が山ほど出てきます。確かに、中古の輸送用コンテナは10〜30万円前後で手に入り、ぱっと見は頑丈そう。「これを庭に置いてカフェにすれば…めちゃくちゃクールじゃん!」と、誰もが一度は夢を見ます。ところが、その夢―建築基準法に照らせば、かなり危うい橋を渡っているのです。

中古輸送コンテナとは何か?

まず知っておきたいのは、「中古コンテナ」の正体です。彼らは、もともと海上輸送用として世界中を駆け巡っていた貨物用の鉄の箱です。
鋼材の厚みや品質にバラつきあり
コンテナごとに製造国や年式が異なる
サビ、凹み、腐食などの劣化が進行
補修歴が不明、溶接の強度保証なし
基準はISO(国際輸送規格)であり、建築基準法とは無関係。ものを何トンも入れて運べるのですから強度は強いのですが、「鉄板の壁構造」ですから、居住用に使って「窓を開けたり、ドアの開口を開けたりすると、とたんに強度は落ちていきます」理由はそればかりではありませんが、「モノを運ぶことには使えたが、人が安全に住めるかどうかは誰も責任を持たない」存在なのです。
建築の構造部材やその他建材は「トレーサビリティ」と申しまして、どこで誰がどうやって作った建材なのかを追いかける事ができます。そうやってあらゆる部材に「責任」を持って建築物は作られているのです。どこで誰がどうやって作り、どんなものを運ぶためにどこで使われていたかもわからないものに、建築士が、あるいはそれを売ったどなたかが何か材料について情報を伝えてくれるでしょうか。

なぜ中古コンテナは“建築物”として使えないのか? 

理由は明快です。建築基準法に適合していないから。建築確認申請のためには、以下の情報が必須です:

必要な項目中古コンテナでは
正確な構造図不明/入手不可
材料の材質証明不明(劣化もあり)基本海外製なのでJIS鋼材ではない
耐火・断熱性能の証明基準外、不可
建築士による設計監理不可能(元が建築物ではない)
工場製作時の品質管理記録存在しない

そのため、申請に必要な構造計算が行えず、審査に通らないのです。どれだけ改造しても、どれだけおしゃれにしても、『建築基準法に適合していない素材を使ってはいけない』という大原則には逆らえません。
構造材をコンテナではない部分で作りその構造体は建築基準法に合ったものにして、中にISOコンテナを使うのなら「建築の構造材」にはならないので、可能性があるかもしれません。

違法建築になると、どうなるの?

行政が違反を確認した場合、**是正命令(≒改善せよ)→ 撤去命令(≒壊せ)**という流れになります。
📍違反事例:
中古コンテナを使った住居が近隣から通報 → 現地調査 → 建築物扱い → 確認申請未取得 → 是正命令
火災が発生 → 防火認定なしの内装材使用 → 消防法違反 → 営業停止命令
固定資産税逃れのため“仮設扱い”を主張 → 実際は定着・常設 → 登記命令&課税対象化
違反建築が発覚すれば、数百万円単位の損失に発展することも珍しくありません。

「でも、使ってる人、けっこう見かけるけど…?」

確かに、地方の空き地や郊外では、「これ、たぶん中古コンテナだな…」という建物を見かけることがあります。
でも、それらの多くは…
農業用倉庫など“申請不要な条件下”で使われている
無申請で設置 → 行政の目が届いていない
違法状態のまま“運良く”稼働している
という、いわばグレー〜ブラックな存在。
問題が表面化していないだけで、いつ行政指導が入ってもおかしくない爆弾なのです。

建築用新造コンテナとの決定的な違い

一方で、建築用新造コンテナは、以下のような違いがあります:

項目中古輸送用建築用新造
法的用途輸送のみ建築専用
設計者不明建築士が設計
製作海外製・不明工場日本国内工場
耐火/断熱基準外建築基準法準拠
構造計算不可可能(構造図あり)
建築確認申請不可

つまり、新造コンテナは最初から建築用として作られている=合法建築物として育てられる子。
中古輸送コンテナは輸送に疲れ果てた“野良”(すまん、輸送の世界ではスーパースターだ)のような存在です。

まとめ:「安さ」より「確実性」を選ぶべき理由

確かに中古コンテナは安く、手軽に見えます。
しかし、その「安さ」の裏には、法的な不確実性とリスクが潜んでいます。
「バレなきゃいい」は通用しない
「どうせ趣味だから」は理由にならない
「ネットで真似た」は通用しない
夢を“積み木”にしないために――
きちんと法に則った新造コンテナを使うことが、実は最も自由で、安心で、美しい選択なのです。

次章では、また少し視点を変え、「コンテナハウスと税金の関係」――特に固定資産税の発生条件や誤解されやすい“非課税神話”にメスを入れていきます。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。