コンテナハウスコラム

四半世紀以上にわたり現場に立ち
研究し続けてきた私たちだから語れる
リアルな“コンテナハウスの深堀り話”です。

更新日:2025.07.12

コンテナハウスを取り巻く法規制

コンテナハウスを取り巻く法規制をわかりやすく解説!第3章

第3章 都市計画法・建築基準法・消防法の壁

「法律さえ通ればOK」と思ったら、まだ“関門”がある

前章で「建築確認申請が通れば夢が叶う!」とお話ししましたが、実は――まだまだ終わりではありません。確認申請は「通行手形」。
しかしその道中(建築確認申請)には、まだいくつもの検問所があります。
その検問とは、次の3つの法律:
都市計画法
建築基準法
消防法
この三兄弟はそれぞれの役割を持ちつつ、絶妙に連携しています。コンテナであれ木造であれ、「建築」である以上、避けて通れないルートなのです。

まず最初の関門は都市計画法

この法律は、ざっくり言えば、「どの土地に何を建てられるか?」を決めている法律です。
○用途地域ってなに?
日本の土地は、「用途地域」と呼ばれるエリアに分類されています。ざっと以下の13種類(表は代表格の4つを掲載)があります:

用途地域建てられるもの(例)
第一種低層住居専用地域一戸建て住宅など(コンビニ×)
準住居地域住宅+店舗・事務所など
商業地域商業施設・店舗・住宅なんでも可
工業専用地域工場のみ(住宅×)


つまり、どんなにオシャレなカフェ型コンテナハウスでも、住宅専用地域に勝手に建てることはできないのです。「せっかくお洒落な店舗を作ったのに、営業許可が下りない」なんてトラブルも、ここが原因で起きます(建築確認申請時に分かりますけどね、空き家改装などで起こります)

建築基準法:建物の“身体検査”を行う法律

次なる関門は、建築界の“医者”とも言える建築基準法。
この法律は、建物そのものに対する構造・安全・衛生・景観などの基準を細かく規定しています。
○主なチェックポイント
接道義務(建築基準法42条)
 → 幅4m以上の公道に2m以上接していなければ建築不可
 → コンテナは「建てないからOKでしょ?」は通用しません
建ぺい率・容積率
 → その土地に建てられる最大の面積が決まっている
 → 敷地ギリギリに“箱”を並べたら、アウト!
高さ制限・斜線制限
 → コンテナ2段積みや3段積みすると日影規制、斜線規制に引っかかるケースもあります
採光・換気・通風
 → 室内に必要な窓面積がなければ、住居用途にNG、事務所等でも「必要換気面積」などがあります。
こういった項目をすべて満たしていないと、「建築物として不合格」となります。
特に“コンテナ特有の箱型形状”は、通風や採光の面で不利になりがちなので注意が必要です。
また、昨今は「省エネルギー」の観点から「断熱性能」なども問われます。

消防法:いざというとき命を守る“最終防衛ライン”

最後に控えるのが、火災から命を守るための消防法。
実はこの法律、軽視されがちですが、用途や面積によっては非常に厳しくなります。
「地震・雷・火事・オヤジ」ということでとても恐れられている「火事」です。火事からあなたを守るための消防法です。ありがたい法律ではないですか。
○ 特に注意すべきケース:
飲食店や宿泊施設として使用する場合
床面積が一定以上(150㎡)を超える場合
不特定多数が出入りする空間(カフェ・店舗・福祉施設など)
これらの場合、以下のような設備が必要になります:

設備名条件備考
消火器原則設置義務ありコンパクト施設でも必要
自動火災報知器特定用途で一定面積以上コンテナでも対象になります
誘導灯複数区画や夜間営業時電気工事と連動
排煙設備換気計画で不足する場合特に密閉空間型の箱では重要

排煙設備は「建築確認審査」の方でもチェックがあります。
そして、地域の消防署との事前協議が強く推奨されます。消防署が設計段階で修正指示を出すこともあります。

「トラブル事例」から学ぶリアルな注意点

事例①:「防火地域にコンテナカフェを設置したが、不燃外装で再施工を指示された」
→ 鉄の箱でも、窓枠・内装材が不燃でないとNGに。また延べ床面積でも規制が変わりますので、建築士にしっかり見てもらいましょう。建築確認申請の時に指摘されるべきだが、建築確認申請の時に見逃してしまっても、必要なものは完了検査の時に指摘されることもあります。

事例②:「住宅地に無許可でコンテナを2段積みにして、行政から是正命令」
→ 高さ制限・接道義務違反が原因
無許可はそもそもあきまへん。

事例③:「消防設備が不備のままオープン → 指導後に営業停止」
→ 自動火災報知器と避難経路の設計ミス。
消防の検査もあります。検査をクリアしないと営業できません。

三法を読み解く力=未来を創る力

都市計画法、建築基準法、消防法――
この三つの法律は、決して“夢を邪魔する敵”ではありません。
むしろ彼らは、「安全で合法なコンテナ建築のための共演者」と考えるべきなのです。
土地のポテンシャルを読み解き
建物の性能を数値で証明し
火災時にも守れる構造と設備を備える
そのうえで、堂々と“好きな場所に、好きなカタチの暮らし”を実現できる。
それこそが、現代における“法と夢の両立”の姿なのです。法を味方にする気持ちで取り入れましょう。

次章では、問題の核心に切り込みます。
▶「第4章:中古コンテナを使うと違法になる?」では、多くの人が誤解しがちな「中古輸送コンテナの建築利用」について、バッサリ斬り込んでいきます。ここからは、コンテナ建築の世界で最も誤解されやすく、そしてトラブルの多い問題―『中古コンテナ、使っていいの?』に切り込みます。あえてここは、少し切れ味鋭く、でも愛を持って、『“違法のリスク”と“なぜ建築用新造コンテナが必要か”』をわかりやすくお伝えします。

記事の監修者

大屋和彦

大屋和彦

九州大学 芸術工学部卒 芸術工学士
早稲田大学芸術学校 建築都市設計科中退。
建築コンサルタント、アートディレクター、アーティスト、デザイナー。

1995年よりコンテナハウスの研究を開始。以後30年間にわたり、住宅、商業施設、ホテル、福祉施設など300件以上のプロジェクトに携わる。特にホテルをはじめとする宿泊施設型コンテナハウスの設計・施工に圧倒的な実績を誇る。商業施設、住宅分野にも多数の実績があり、コンテナハウス建築業界で幅広く活躍している。